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くしゃみ1発

どうもーどこにでもいる通行人の田中明人(25)でーす。今日もアルバイトを終えて帰ってる最中に鼻がムズムズしてきたので



「ぶぇっくしょいっ!!」



あ、くしゃみ出る、と思ったと同時にくしゃみを盛大にかました。鼻を軽く啜りながら閉じていた目を開けたら、そこは見知らぬ風景。



(……うえ?)



見渡すと田舎ながらもアスファルトで舗装されていた道路や電柱が全く見当たらない石畳で舗装された北欧風味な街並み。


そんな街中を歩く人々はまるでコスプレ会場かと言わんばかりに色とりどりな毛髪と瞳を宿し、


止めを刺すかのように頭が蜥蜴とかげであるモンスターみたいな容姿の方と楽しそうに肩を組んで歩く男性の頭には犬耳っぽいものが2つ。



(あー……うん?)



それ等を見た私が考えに考えを重ねた結果。


そこは異世界でした。



____________________________



とまぁ、迷い込んでしまった私は現在、住み込みアルバイター兼冒険者(予定)という二足草鞋にそくわらじの生活(予定)を送っていたりする。


この世界、まるでゲームや本にある剣と魔法の中世風味な世界観だ。科学が残念な程、見当たらない。水道、電気、ガスが果てしなく恋しい。日本恋しい。


そんな科学の代わりに生活の中心を担っているのが魔道具と言った摩訶不思議道具だ。因みに魔道具を動かしたいなら魔力を注ぐことによって動くとのこと。因みに下水道設備は魔法と魔法陣と魔道具のおかげで日本より優れていると思う。環境にはとても優しい仕様ではあるが、私的には一々魔力を注がないといけないのは面倒なんだよなー。


稼働させたい→物に触れる→魔力を注ぐ(少し気合を入れる的な感じでりきむ)→魔力が満ちる→稼働!という順序だ。整備された高水準な暮らしをしてきた現代人である私からしたら充電してから動かすというが面倒でしかたない。


手動なのか自動なのか微妙なんだよ、魔道具って。魔力とか蓄える機能とか無いのかな。もしくは電池みたいな魔力を蓄える物とかさー、もっと



「お、今日は嬢ちゃんがいるのか」


「いらっしゃいませっ」


「いつもの」


「肉と野菜炒め定食ですね。分かりました」


「嬢ちゃんも大分慣れてきたなぁ」


「アハハハ、そうですかね」


「もう立派なここの看板娘だな」


「いやいやいや、私は冒険者傍らにやってるだけのなんちゃって店員ですから。それこそ、ペーペーの下っ端ですよ」


「ガハハ!そうか、ペーペーか!」


「はい、ペーペーです」



あー危ない危ない。今はまだアルバイト中だったのに全く違うこと考えていたから危うく来店してきたことに気付かずにヘマかます所だったわ。内心で冷や汗を拭いつつもやって来た常連の客と軽く会話を交わした。



「おじさん、肉と野菜炒め定食を大盛りでお願いしますっ」


「あぁ」



会話の流れからお決まりの注文を受け、それを厨房にいる雇い主である店長に伝えて食事が来るまで後は待機。


さて、今の私が何処で何をしているのか。それに至るまでの経緯を軽くに思い出してみた。


ここに来た当初は顔面蒼白になりながらも警察みたいな存在が居ないか、周辺の人に軽く聞いてみた。人間追い詰められれば、自然と行動力が出てくるものだ。


知り合いもいない。身分証明も出来ない。金もない。それでも言葉が通じただけありがたいと思った。ほんっとうにこれは助かった。


とりあえず、自身の手に負えない困った事態は警察か消防。酷く負傷したら救急車。日本で当たり前の措置だ。あと、落とし物も警察だ。というわけで警察に似たような機関がないか聞いてみたらあったので大まかな位置を聞きながら探したのだ。


んで見つかったのは【第5警備隊】という存在。【ナクラーキ】の街の治安を守るため作られた警備団体。ナクラーキの領主が作った公認武装集団だ。私が聞いた話では第1~第5までいるそうで、異世界に来たばかりの私から1番近かったのが第5警備隊だ。


第5警備隊の詰め所まで目指していた私の頭は不安で一杯だった。街への不法侵入と身元不明の不審者という、どう見ても不安材料しかない私。


途中、道を聞いてきた私の心配をしてくれた人がいた。肩まで伸びていたセミロングの髪が深い青色、瞳が水色といった優男風味のイケメンだ。夏場に見ると涼しい色合いだよねー。だが、イケメンに免役がない私としては落ち着かなかった。半径2メートルは距離を取りたい。


その後「一緒に行こうか?」と聞いてきたが、日本人お得意のポーカーフェイスと迷子に付き合わせるのも申し訳ないと思って「大丈夫ですから」と断った。それでも「仕事の都合で行くから気にしないで良いよ」と言われたのでありがたく道案内して頂いた気遣いはホント助かった。余裕が出来たら是非ともお礼をしたい。


それでどうにか詰め所到着。それからは一悶着ひともんちゃくあったが、どうにかして私はこの街【ナクラーキ】に住まって良いようになったのだ。


いやー、ホントあの時は生きた心地がしなかったね!色んな問題が、一気に溢れたよ!



まず、この街に気付いたら居ました→転移魔法の誤作動か?→魔法?何それ?(笑)→魔法を知らないだと…!?


結果、魔法を知らない田舎者扱い。


次に名前は?→明人アキトです→年は10くらいみたいだか…→え?10って聞こえたんですが?(笑)→……嬢ちゃんはどう見てもそれぐらいだろ?(手鏡を渡す)→……え、これ、私ですか?(若返ってる?)→……鏡知らないんだな→…………


鏡を見て若返ってたことにショックを受ける私の反応を見た結果、田舎者から鏡を知らない無知な田舎者扱いにレベルアップした。


最後のやり取りは

何処から来たんだ?→日本、もしくはジャパンかジャポンですかね→聞いた事ないな。ここがスイダシユ国のナクラーキという街なんだが……→聞いた事ないですね→……→……


お互いが沈黙した結果、無知な田舎者は更にグレードアップし、私は誰も寄りつかないような秘境出身者という肩書きを手に入れました。



だから、魔法を知らなければ、文字も知らなくて当たり前といった扱いになり、この街に来てしまったのは何らかの事故か事件によって、転移魔法の誤作動が起きてしまい跳ばされたというわけで片づけられた。


第5警備隊から見たら、私は1人見知らぬ土地に来た可哀想な外国人的な扱いだが不審者に扱いならなかった幸運に感謝しよう。もしくは、よく漫画や小説にある泳がせとく的な感じかもしれないが、やましいところなんて何もないので気にせず動こう。


不本意ながら異世界に来た私としては原因も帰り方も解らないままなので消化不良だが、その辺は自分で調べるしかないかもしれない。それに魔法とか使えたらサイコーじゃね?


あと、見た目は確かに高校生くらいまで若返っていたが中身は25才なのだ。警備隊の人から聞いた話では18才で成人らしいが、私の見た目はどう見ても成人前だろうというわけで子供扱いされたのに関してはとても遺憾である。何で10才のガキと同じ扱いだ。そこは無理矢理15才まで引き上げたけどねー。


んでその後は第5警備隊副隊長さんの伝手つてで住み込みアルバイト先を紹介してくれたのだ。


そのアルバイト先は【ヒャクミ】という飲食店。そう、私が現在お世話になってるお店だ!



「ほい、出来上がったぞ」


「了解っ」



厨房から店長であるおじさんとは違う若い男性の声に慣れた様子で料理をお盆に乗せて歩き出す私。因みに目指す先は……住み込みアルバイト先を紹介してくれた第5警備隊副隊長のデュークさんが座ってるテーブルだ。


デュークさんは浅黒い肌に短髪の銀髪、青い瞳が似合うナイスガイだ。35才の身長180超えに鍛えてるだけあって体格も逞しいおっさんだ。しかも、顔は強面ではあるが整っている。漢くさいがそれが逆に格好いい男性というよりおとこだ。思わず、兄貴っ、付いていきやす!!と言いたくなる。



「お待たせ致しました。肉と野菜炒め定食です」


「おぅ、ありがとな!」


「いいえ、それではごゆっくり」



持って来た私にニカリ、と気持ち良く笑ってお礼言うデュークさん。素敵な笑顔、どうもありがとう!!やはり、ナイスガイの笑顔は眩しいしお礼を言われたら誰でも嬉しいものだ、と笑い返す。


接した感じでは気の良い中年みたいなものだ。田舎のおんちゃん達や同級生のおじさん達を彷彿させてくれるので緊張せずに接することが出来た。本当は偉い人なんだろうけど、かしこまる態度で接したらしなくて良いって言うし、回りも気楽に接していたので気持ち的に気楽に接することが出来る。それでも感謝の念は忘れずにいる。



「やっぱ、嬢ちゃん良いな~……成人してりゃ尚更」


「ん?何か言いましたか?」


「いんや、何でもねえよ」



声がしたのでご用かと思ったが、デュークさんは笑って手をヒラヒラさせて否定した。違ったようだったので気にせず定位置に戻った私はまた思い返し始めた。


【ヒャクミ】は店長のリヒャルト(48)、奥さんのクリス(45)、息子のミュラン(25)の3人家族で切り盛りしてる飲食店だ。因みに【ヒャクミ】という店名は一味も二味も違う、百の味わいがあるように、という意味らしい。


んで、デュークさんは丁度【ヒャクミ】が人手を募集していたのと、店長と馴染みであったのでどうにか身元不明の私が入り込めたのだ。リヒャルトさん一家は常識を知らない私に色々と教えてくれた。文字、お金といった生きるのに必要な常識を教えてくれた。ホント、リヒャルトさんにクリスさん、息子のミュランに副隊長のデュークさんには足を向けて寝れないぐらい感謝感激である。


まだ、解らない部分はあるものの追々やっていくつもりだ。そんなこんなで私は今【ヒャクミ】で住み込みアルバイトしていた。



「次、これを頼む!」


「はいっ」



人間どんな状況だろうが生きてくしかない。慣れるまでは大変だろうがここも住めば都になるはずだ。なんだかんだ【ヒャクミ】に馴染みつつある私は今日も元気よく働いていた。


 


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