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Episode:05

◇Rufeir

 結局泳げないあたし、シーモアたちと別行動することになった。

――ほんとはいっしょに、行ってみたかったけど。

 でもみんな泳ぎが上手みたいだから、あたしが一緒じゃ楽しめないだろう。

 ただ、イマドが教えてくれると言っててくれた。さすがに一人じゃ寂しいかな、と思ってたから、ちょっと嬉しい。


「少しは、泳げるの。でも、習ったこと、ないし……」

 なんとなく自分が泳げないのがいけないような気がして、いろいろ言い訳してみる。

 でもいつものようにイマド、あたしを責めたりしなかった。

「わかってるって」


 ほっと心が軽くなる。

 少し歩調を上げて、イマドの隣に並んだ。彼とは頭ひとつ違うから、急ぎ足にならないと並んで歩けない。


――けどこの水着、いまいち馴染まないな。

 水着なんて着たことないし、これ自体も新しいおろしたてだから、どこか着心地がよくない。戦闘服のほうがよっぽどましだ。

 と、イマドがあたしを見ているのに気づく。


「なに? あたしなにか……変?」

 こんな格好したの初めてだから、すごく気になる。

 でも、イマドの答えはぜんぜん違うものだった。


「いや、おまえってマジで、幼児体型だよな」

「――!」


 思わず体が動いて、鳩尾に蹴りを叩きこむ。

 イマドがその場にしゃがみこんで動けなくなったけど、無視した。どうせ手加減しておいたから、そのうち回復するはずだ。


「先に、行く!」

 さすがに腹が立ったから、イマドを置いて歩き出す。

――気にしてるのに!


 どうもあたし、昔から小柄だ。それになかなか身長も伸びない。

 もちろん戦闘なんかじゃすごく不利で、スピードと従属精霊とで、それをようやく補ってる。

 力に至っては、底上げしててもかなり厳しい。体質のおかげで精霊との相性が良くなかったら、とうの昔に戦場で死んでるだろう。


 まあ最近は、そういう心配もないけど……。

 そして、背筋が寒くなった。人間は、こんなに簡単に慣れてしまうのかと。

 今まで生きてきた殆どをすごしたはずの戦場が、とても遠いところに思える。


 夢は叶った。

 友達も出来た。

 けど、これでいいんだろうか……。


 あたしが手にかけてきた人たちを、裏切ってる気がする。

 そのあたりへ腰をおろして、ふと、足もとの貝殻を拾った。

 綺麗だけれど、命のないただの抜け殻。

 あたしの知ってる人もこうして抜け殻になって、二度と帰ってこなかった。


 会いたい。

 優しかったあの人たちに……。




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