Episode:35
「上手く言えねぇけどさ、けっきょく何でも、なるようにっきゃならねぇだろ。
だから何もしねぇってのはヤベぇけど、やれるだけやったら、あとはしゃーねーって」
ルーフェイアのヤツが下を向いた。
唇から言葉がこぼれる。
「けど、もし、もう少し……」
何かやれてたら、ってんだろう。俺もこれは昔やらかしたから、少し苦くなる。
けど――だから言える。
「しゃぁねぇって。俺らカミサマとか、そゆのじゃねぇから、何でもはできねぇよ」
つらい諦め。チビの頃信じてた、何でも出来るって気持ちを捨てるのは、楽しいもんじゃない。
けど、それが現実だ。
「やれるだけやっても、気がつかねぇとか足りねぇこと、あるさ」
「………」
たぶん真面目なこいつは、「どうしようもなかった」ってことを、受け入れらんなかったんだろう。
誰も悪くないってのは、ある意味で逆につらい。憎む相手がいたほうが、ずっと楽だ。だからこいつは自分を責めて、自分を納得させてたんじゃねぇだろうか。
つか、俺もそうだった。
けどどんなに責めても、過ぎたことは変わらない。だからある程度で見切りつけて、進まなきゃダメなんだと俺は思う。
「てかさ、こんなこと言ったら、怒るかもしんねぇけど。
けどおまえの兄貴、おまえのそういうの、喜ばねぇんじゃね?」
「――!」
何かに気がついた、ルーフェイアのやつがそんな顔をする。
「おまえの兄貴よく知らねぇから、あんま言えねぇけどさ。でも、そんな気がすんだよな」
「そう、かも……」
ふっとこいつが、何かを吐き出すみたいに、ため息をついた。
受け入れたくねぇけど、受け入れるしかない。そんなルーフェイアの表情。
それから、言う。
「……ごめん」
「いいって」
何が、とは聞かなかった。だいいちこいつ自身も、突っ込まれたら答えらんねぇだろう。
今までのいろんな重いものに、ある程度ケリつけてくれりゃ、俺としては十分だ。
「とりあえず、もちっといいとこ見ろよ。あんま後ろ向いてっと、よけい落ち込むぜ?」
「……そうだね」
こいつが淡く微笑む。今までと少し違う、穏やかな笑顔だった。
――やっぱ素直だよな。
人になんか言われたからって、普通はこんな簡単に、変わろうなんてできない。けどそれがやれるのが、ルーフェイアの強みだろう。




