Episode:34
◇Imad
浜辺に、ルーフェイアのヤツが立ち尽くしてる。
「だいじょぶか?」
「……うん」
だいじょぶなワケねぇのに、そんな答えが返ってきた。
隣に俺が座ると、こいつも砂浜に腰を下ろす。
昼下がりの空に、波の音が響いた。
「その、なんかワケわかんねーの、ずーっとなのか?」
俺の問いに、ルーフェイアのヤツが泣きながらうなずいた。
「んじゃ、きっついよな……」
タシュア先輩の言いたいことも、まぁ分かる。自分のことなんだから、泣いてねぇでなんとかしろ、ってんだろう。
けど俺の見るかぎり、ルーフェイアのその「なんか」は、自力でどうなるようにも思えなかった。
つか自力でどうにか出来るなら、ぜったいこいつはやってるわけで。それがただ泣いてんだから、散々試してダメだった、ってとこなんだろう。
――それをどうにかしろ、ってのもなぁ。
先輩たち知らねーからしゃぁねぇけど、ずいぶんな言い草だ。
ただ、なんか状態変えたほうがいいってのは、俺も賛成だった。このまんまの状態続けてたら、そのうちこいつ、潰れるだろう。
かといって、その「問題」は片付けようがないわけで……。
「どうして……あたし、なんだろう……」
当たり前っちゃ当たり前の疑問を、ルーフェイアのヤツが口にする。
「もっと、向いてる人……ほかに……」
どっか思いつめたふうの声に、俺は答えた。
「考えても、しゃーねぇんじゃねぇか?」
「え?」
驚いたようすで、ルーフェイアのヤツが顔を上げる。俺の言葉が、かなり意外だったらしい。
「んー、なんてのかな。今ここで考えても、ぜったい理由とかわかんねぇし。
だったら考えるだけ、無駄だろ」
「それは……そう、だけど……」
口じゃそう言いながらもこいつ、どっか納得できねぇらしい。
ただ俺的にはそろそろ、こういう表情じゃなくて、もっと楽しげにしてて欲しかった。
「俺がそーゆーの持ってるわけじゃねぇから、分かってねぇかもだけどさ。
けどおまえ、とりあえず今ふつうにやれてるし。学院に来たから、当分は前線出ねぇで済むし。
なら、今はそれでいいんじゃね?」
ルーフェイアのヤツの、呆気に取られた顔。
それからこいつが、ぽつりと言う。
「イマド……適当すぎ……」
「るっせ」
思わず言い返すと、いつも通りこいつが謝った。
「え、あ、ごめん……えっと、そういう意味じゃ、なくて」
慌てる様子が、見てて面白い。