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Episode:30

「もう、動かないですね」

「――あまり、動いて欲しくはないな」

 しかし……美少女がこういうものを、平気でつついているというのは、どうにも形容しがたいものがある。

 戦場育ちで見なれていると言えば、それまでなのだろうが……。


「とりあえず、戻らないか?」

「あ、はい」

 見かねて言った私の言葉に、ルーフェイアは素直に従った。

 少し溶け始めた橋を、2人で急いで歩く。


「冷たい……」

 ルーフェイアが小さくつぶやいた。

 当然だろう。彼女は素足だ。それで氷の上を歩けば、冷たいに決まっている。


「ルーフェイア?」

「あ、はい? きゃ!」

 可哀想に思って抱き上げると、少女が悲鳴を上げた。


「あ、すまない。いま降ろす」

「――いいです、このままで」


 まるで母親に抱かれた子供のように、ルーフェイアが身体を預けてくる。

 不思議な気分だった。少女が自分の妹のように錯覚する。

 無条件の、疑いをまったく挟まない信頼。それをこうも簡単に見せるとは。


――この子はよほど、周囲に愛されて育ったのだろうな。

 そうでなければ人は、疑うことばかり覚えるものだ。またそうであったからこそ、こんな優しい少女が戦場に出されて尚、真っ直ぐに成長したのだろう。

 少し羨ましい気がした。この学院で、ルーフェイア以上に愛されて育った者は、いないだろうと思う。


 意外に距離のある海面を渡りきると、タシュアともうひとり下級生――イマド、といっただろうか?――が待っていた。

「――タシュア、身体は大丈夫なのか?」

 禁呪を連続で使ったタシュアが心配で、真っ先に尋ねる。


「私の身体を心配するのでしたら、その分戦闘に気を向けなさい。

 いつも言っているはずですよ。完全に死を確認するまで気を抜くなと」

 厳しい。

 だが私を心配していればこその言葉だ。


「次は気をつける」

「言葉ではなく、態度で示して欲しいものですね。

――ところでいつから、シルファまで保護者になったのですか?」





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