Episode:21
「あれぇ、途中までいっしょだったんだよ。 おっかしいなぁ??」
「ミル、このバカッ! あんた――!!」
「やめろ、シーモア。こいつに言うだけ無駄だ。それより俺のツールキットよこせ!」
「あ、あぁ……ほらっ!」
シーモアの投げたキットが、綺麗に弧を描いて俺の手の中に収まる。
「まって、あたしも行くぅ!」
およそ緊張感とは無縁のような嬌声で、ミルも名乗りをあげた。
「あたしもって、お前が来たって……!」
迷惑、そう言いかけて俺は言葉を途中で飲みこむ。
ミルがマジだ。
いつのまにか、持ちこんでいたらしい銃を取り出してる。
「――よし、援護頼むぜ」
性格はともかく、こいつ腕だけは折り紙付きだ。
「もっちろん!」
そのまま俺ら、走り出す。
「最後にナティエス見たの、どこなんだ?」
「あっち〜」
5歳児みたいな調子でミルが答える。指差したのは岩場のほうだ。
――あれか!
確かに突端から少し沖の岩の上、人影が見える。それもなんでか2つ。
片方は間違いなく、ナティエスだろう。
けどもう片方はどうみても……。
「ルーフェイア?!」
泳げないはずのあいつが、どうしてあんな場所にいるんだか?
でも不思議に思っているヒマがない。もう海竜がルーフェイアたちの近くまで迫ってる。
もっともあいつも黙っちゃいなかった。
突然天から雷撃が海竜に降り注ぐ。あいつ得意の上級魔法だ。
そこへ更に銃声がこだました。
――この距離で全弾命中かよ。
やったのはミルだ。曲がりなりにも、Aクラスにいるだけはある。
この連続攻撃で、さすがの海竜も動きが止まった。ルーフェイアたちを襲うのやめて、咆哮をあげる。
けどなんか、海竜の様子がおかしい。
倒れるとかじゃなくて、めちゃくちゃに暴れてるような……?
「――おい、ミル! お前なんの弾撃ったんだよ!」
「え、あれ? あ、暗闇の魔法込めた弾だった〜♪」
前言撤回!
あのサイズのモンスターが闇雲に暴れまわったら、下手に狙われるより危ねぇし。