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Episode:18

◇Rufeir

 ざっと水面を割って、あたし頭を出した。

「――だいぶ、上手くなったな」

「いいえ、先輩のおかげです」

 シルファ先輩、教えかたがとても上手だ。

 おかげで最初はやっと進む程度だったのに、この短時間でどうにか、途中で息を継げるようになってる。


「わたしは……アドバイスしただけだ」

「でも、先輩に、教えてもらったから……」

「……そうか」

 先輩って、すごく物静かで、ミルとは対照的だ。

 それにとっても優しい。


「早く先輩なんかといっしょに、泳げるようになるといいんですけど」

「あまり、ムリはしないほうがいい」

「――はい」

 ロア先輩も頼り甲斐があるけど、シルファ先輩はまた別の意味で、いっしょにいると落ちつく。


「そういえば……ナティエスとミル……?」

「――ああ、あの2人なら、岩場の方へ泳ぎに行った」

「あ、そうなんですか」

 確かにあの2人、意外にも泳ぎが上手だ。きっとあたしとじゃつまらなくなって、向こうへ行ってしまったんだろう。


「いったん上がるか?」

「はい」

 先輩があたしの体調を心配して、そう言ってくれたのが分かる。

――お姉さんって、こんな感じなのかな?

 あたしは一人っ子――ラヴェル兄さんは実際には従兄弟――だから、そういうのはよく知らない。けど多分、間違ってないだろう。


「……あれ?」

 2人で海からあがってくると、タシュア先輩の姿がなかった。

「手荷物はここだし……武器でも、見に行ったか? ちょっと見てくる」

「あ、はい」


 なんとなくそのまま、浜辺へ座りこんだ。

 碧玉よりまだ濃い、海の碧。

 そして真っ直ぐな、空の青。

 そこへあいかわらず、銀に見えるほど白い雲がわきあがっていた。


――まぶしい。

 圧倒されるほどに眩しかった。

 あたしがこの間までいた世界とは、あまりにも正反対だ。

 あの頃はこんな世界があるなんて、思ってもみなかった。


 同時に、とても不思議な気分になる。

 このあたしが、こんなところにいるなんて。

 もし一年前のあの日、あの町でイマドと出会わなかったら……。

 出会わなかったら、今ごろもう、死んでいたのかもしれない。


 あまり使いたくない言葉だけど、あれが運命の交差点だったんだろうか? あの時を境に、あたしの時間の行き先が変わったような気がする。

 きっとムリだと思っていた、夢の方向へ……。

 そんなことをぼんやりと考えながら待っていたけど、先輩はなかなか戻ってこなかった。気にになって、立ちあがってあたりを見回してみる。


――あ。

 ちょっと遠いけど、学院がまとめていろいろ預かってる辺りに、先輩たちの姿を見つける。

 けど。

 先輩たちが手にしてるの……武器。

 瞬間、あたしの身体にも独特の感覚がが走る。

 この感覚。戦場でいつも感じていたヤツだ。


 でも、どこから?

 気配を探って、すぐに分かった。岩場のほうだ。

 そして思い出す。あそこには確か、ナティエスとミルが……。

 とっさにあたし、走り出した。




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