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Episode:17

◇Tasha side

「じゃぁ、ちょっといってくる」

「いってらっしゃい」

 シルファが歩いていく。下級生を連れて歩く様子は、幼稚園の先生のようだった。


 タシュアからしてみれば、「甘い」としか言いようがない。なにしろあのミルドレッドがいるのだ。こうなるのは目に見えている。

 だがシルファのこういう優しさは、嫌いではなかった。何よりああやって慕ってくれる後輩が居るのは、他人が苦手なシルファにとっては、いいことだろう。


(――ミルドレッドに関しては、疑問が残りますがね)

 あれを「慕っている」とは、ふつう言わないだろう。どう贔屓目に見ても、単純に騒いでるだけにしか見えない。

 周りもよく、あの子のああいう行動を、許しておくものだと思う。もっともああいう性格では、言うだけ無駄なのかもしれない。


 もうひとつ意外だったのは、ルーフェイアだ。まさか泳げないとは思わなかった。

 ただよく考えてみれば、先日海へ落ちた際にも、泳ごうとはしなかった。かなり危険な精神状態だったとは言え、普通なら何かするだろう。

 だが泳げないのなら、あの行動も納得がいく。


(もしまた海にでも落ちたら、どうするつもりだったのやら)

 前回は運良く人目のあるところだったが、次はどうなるか分からない。

 泳げないからと、素直に教えてもらおうとする姿勢は評価出来るのだが……やはりこちらも、甘いとしか言いようがない。


(――ルーフェイア、それは「浮いている」というんです)

 後輩の泳ぐ様子を見て、つい突っ込む。だいいちあんな浅いところで、どうやったら上達するというのか。

 だが教えているシルファは、ずいぶん楽しそうだ。教えることに関して、適正があるのかもしれない。


 その様子を横目に、タシュアは荷物へ手を伸ばした。この調子ではしばらくかかるだろうから、持ってきておいた読みかけの本の続きでも、と思ったのだ。

 日陰に腰を下ろし、読み始める。

 そうやって、どのくらい経っただろう? 何かを感じた気がして顔を上げると、一行の頭数が減っていた。


 何となく視線をめぐらせて探してみると、向こうの岩場へと向かう、ナティエスとミルドレッドの姿があった。ルーフェイアの相手に飽きて、遊びに行くことにしたらしい。

 それにしても、ミルドレッドの浮かれぶりは常識はずれだ。あれで岩場へ行こうものなら、足を滑らすのは間違いない。

 そう思っている矢先、後輩が足を滑らせて尻餅をついた。


(……なんと言いますか)

 ここまで予想通りでなくてもいいだろう、そう言いたくなる。よくこれでAクラスにいられるものだ。

 ただ、これといって怪我はしなかったようだ。すぐに立ち上がって、沖へと伸びる岩場を、ナティエスとじゃれ合いながら歩いていく。


(――?)

 それを見ていたタシュアの表情が、僅かに変わる。何か影を見た気がしたのだ。

 ほんの一瞬のことで、気のせいだとも思える。だが、なぜかやけに引っかかった。

(武器だけでも、用意しておきますか)

 いつものように音も気配もさせず、タシュアは立ち上がった。




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