Episode:15
タシュア先輩があたしたちに、冷ややかな視線を向ける。
「そんなくだらないことを、わざわざ言いに来たのですか?」
「すみません……」
謝るあたしに、シルファ先輩が声をかけてくれた。
「もう、いいのか?」
「あ、はい」
言葉はそうでもないけど、優しい声だ。
「そうか。心配してたんだが……元気そうで、良かった」
「はい!」
先輩にそう言われて、なんだか嬉しくなる。
「えっと、あの、ケーキ……おいしかった、です」
あたしがそう言うと、シルファ先輩の顔が少しほころんだ。
「――ねぇ、どんなケーキだったの?」
ナティエスがそっと訊いてくる。
「えっと……?」
あの時は食べただけで名前は聞かなかったし、そもそも何が入っているのか、いまいち分からない。
「もう。ルーフェイアってばホントそういうの、覚えてないんだから」
「ごめん……」
やり取りがおかしかったみたいで、シルファ先輩が笑いながら、助け舟を出してくれた。
「オレンジのケーキだ。間に、ムースも挟んだ」
「わ、 いいなぁ〜! シルファ先輩、こんどあたしにもください〜!!」
ミルが騒ぐ。
「ミ、ミル、ちょっと……」
「なんでルーフェ、止めるの?
ねぇ先輩、ミルは先輩の手作りケーキ、食べたいですぅ〜!!」
あたしじゃミルの勢いは、止めようがなかった。
「――わかった」
「やった〜♪♪」
困惑しながらも承諾したシルファ先輩の答えが、ミルはよほど嬉しかったらしい。手を叩きながらそこら辺を飛び跳ねている。
「シルファ先輩、あの、すみません。すぐ彼女……連れていきますから」
「あ、ルーフェイアってばヒドぉい! 泳ぎ教えてあげないから!」
――あ、やだ!
この毒舌の先輩に泳げないなんて知れたら、また何か言われるに決まってる。
でもタシュア先輩が口を開くより早く、シルファ先輩が考えるようにしながら言った。
「泳げないのか? なんなら、教えてもいいが……」
びっくりして先輩を見ると、優しい笑顔だった。