Episode:14
「ケーキ、だけじゃないんだ」
「ケーキ?」
ナティエスがなんのことか分からない、という顔をした。
――そういえば例の話、イマドとロア先輩しか知らないんだっけ。
ナティエスたちには、なんだかタイミングを逃して、けっきょく言ってなかったはずだ。
「えっとね、その……前に診療所で寝てたとき、あの先輩がケーキ……持ってきてくれて」
「うそぉ、いいなぁ!」
「それ、羨ましすぎかも」
二人が声を上げる。よく分からないけど「シルファ先輩のケーキ」は、特別なものみたいだった。
でも確かに、なにが入っていたのかはいまだに分からないけれど、とてもおいしかったのは事実だ。
「あたし……ちょっと、行ってくる」
「なになに、ルーフェイアったらシルファ先輩のとこ行くの? んじゃあたしも〜♪♪」
「あ、抜け駆けとかずるい。あたしも行く」
結局3人で行くハメになった。
――あ。
少し近づいてみたらタシュア先輩、感じがいつもとぜんぜん違う。
なんと言ったらいいんだろう……そう、すごく穏やかな感じ。
シルファ先輩がタシュア先輩にとってどういう人か、やっと分かってなぜか嬉しくなって、もっとそばまで行く。
「まだ何か?」
あたしたちが行くと、タシュア先輩が少し呆れたような声をだした。
「えっとぉ、ルーフェイアが用なんで〜す♪」
第一声を発したのはミル。あたしが何か言う間もなかった。
それにしてもミルの神経、極太のザイルででもできてるんだろうか? この先輩相手に平気な顔だ。
そして彼女、今度はシルファ先輩に向き直って一言。
「――89、59、88?」
聞いた先輩たちが、怪訝な表情をする。
「ねぇ、ミル。その数字……なに?」
あたしは意味がわからなくて、ミルに訊いてみた。
「あれ、ルーフェ知らないの? えっとねぇ、だから上からなの♪」
「上から?」
「もぉルーフェイアってば! だからムネがぁ……ふみゅっ?!」
そこまでミルが言いかけたところで、ナティエスが強引に彼女の口をふさぐ。
「ミル! いくら先輩がスタイルいいからって、いきなり何言ってるのよ!
ルーフェイアも訊くんじゃないの!」
「え? そうなの?」
結局なんのことかは、分からずじまいだ。
――あとで、イマドにでも訊いてみよう。