Episode:13
「あ、船〜♪」
「ほんとだ〜」
ミルとナティエスが、歓声を上げた。
つられて沖を見る。
突き刺さる陽射しの下、あたし改めて海を見た。
瞳に飛びこんでくる碧。
――広い。
それに海って、こんなに綺麗だっただろうか?
遥かな碧さ。
煌く光。
遠い彼方で空と混じって、そこで青が変わる。
立ち昇った雲が、目に痛いほど白い。
そうだ、あたしずっと憧れてた。
海の色はあたしの瞳と同じだと、ずっと聞かされていたけど。
――ほんとうだったんだ。
思い切って、一歩海の中へ入ってみる。
冷たい感覚。
波が流れていく。
無限の回数続く、潮騒の音。
きっとあたしが産まれる前……ううん、シュマーという家が生まれるずっと以前から、同じ音だったんだろう。
――この碧い海に訊いたらきっと、人が忘れてしまった昔も分かるのかな。
その時、ふわりとあたしの視界を、影がよぎった。
驚いてその影を追いかける。
視線が行きついた先には、投げられたタオルを鮮やかに受け取った、女子の先輩がいた。
まとめあげた艶やかな長い黒髪、紫水晶を思わせる瞳――この間お世話になった、シルファ先輩だ。
背が高い上にスタイルがいいから、黒のシンプルな水着がよく似合ってる。
シルファ先輩、タオルを羽織るようにしながら海から上がってきて、向こうへと歩いていく。そして投げた人――もちろんタシュア先輩――と、話し始めた。
「なに見てるの?」
不思議に思ったらしくて、ナティエスが訊いてくる。
「うん、ほら」
「あ、シルファ先輩じゃない。やっぱり素敵だなぁ……」
「あの先輩さぁ、いつ見てもカッコいいよね〜♪ スタイルもすっごいいいし〜♪♪」
ミルも隣へ来てはしゃぎ始めた。
「しかもさ、いつも美男美女で並んでるんだもん。もぉサイコー!」
「いつも?」
仲が良さそうなのは知ってたけど、そんなにだとは思わなかった。
「あれルーフェ知らないの? シルファ先輩、タシュア先輩のカノジョだよ」
「有名だよね、その話」
二人が言うところを見ると、学院内じゃよく知られてるみたいだ。