Episode:10
ルーフェイアのお袋さん、実はかなり過保護だ。最初のときはもちろん、ルーフェイアのヤツが学院来てからも、俺のほうになんやかや話回してくる。他にも、学院長辺りにもいろいろ言ってるらしいし。
ただ当のルーフェイアには分かんねぇようにするのが、ちょっと面白いとこだった。
それに俺からしても、常識がいろいろヤバいルーフェイアは、かなり見てて危なっかしい。
「つか、こいつ野放しとか、けっこう怖いですよ?」
「それは否定できませんね。
まぁ不要な傷を作らないように、彼女の背中を守ってあげるのですね」
先輩はそう言うけど、こいつの背中取れるヤツって、言ってる当人だけじゃねぇのかな、と思う。
たしか傭兵やってる親もとれないとかなんとか、俺、聞いた気がするし。
って、ルーフェイアのやつが泣いてるし。
「こんどは何だ?」
「あ、ごめん……。平気、もう、泣かない……」
「ムリすんな。しばらく泣いてろ」
なんかよく分かんねぇけど、何かに感動して泣いてるっぽいから、そのままにする。
と、今度はいきなり、嬌声ともいえる声が響いた。
「あ〜、ルーフェイアいたいた!」
シーモアたちだ。
「やっぱり、いっしょに泳ごうと思ってさ」
「さっきはごめんね? って、泣いたりして、どしたの?」
「あ、タシュア先輩こんにちは〜♪」
「こんにちは、ミルドレッド=セルシェ=マクファディ」
「タシュア先輩に泣かされたのかい?」
「うそぉ……よく、ミルのフルネーム……」
「や〜、先輩ってすごぉい♪」
一気に周囲が騒々しくなる。
「さっきは悪かったよ、置いてったりしてさ。さ、もう泣くのは止めなよ」
「あ、ちがうの。そうじゃなくて……」
「ルーフェイア、泣いてもカワイイ〜♪」
「みんなでお昼食べて、いっしょに泳ごう?」
それにしても女子ってのは、よく喋るな……。
「では迎えも来たようですし、私はこれで失礼します」
「え〜、いっちゃうんですかぁ? いっしょにお昼食べましょうよ〜♪」
おい、ミル……。普通この状況で、タシュア先輩誘うか?
「遠慮しておきます。
――あまりうかれますと、砂魚に思わぬ怪我を負わされますよ」
「あ、は〜い♪ 先輩今度、みんなでどっか行きましょ〜ね〜♪♪」
「もぉ、ミルってばやめなよ……」
もともとなんの話だったのか、わかんなくなってきた。
先輩も呆れ顔で、でも上手く逃げてってるし。