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最終話 エピローグ

最終話です。

年が明けて新学期。そのタイミングでなんと閖華さんが俺たちの学校に転入と言うかたちで通うことになった。制服を着ている姿に違和感を感じた。


昼休み、売店にある自販機で飲み物を買いにきていたら、声をかけられた。

「月島くん。ありがとうな。あれから源十郎さんから閖華たちの開放が命じられたよ。ありがたいことに、俺が卒業する前に学校に通うことになって万々歳だ」

嬉しいそうに報告をしてきたのは葉月先輩だった。

「先輩、閖華さんのこと・・・」

「おいおい、いうなよ~俺は校内モテモテ男なんだぞぉ~そんなこといったら女子たちが離れていくじゃないか~」何を言ってるんだこの人は。

「卒業までもう二ヶ月なんですからそんな冗談いってないで思う存分閖華さんと学校生活を味わったらいいじゃないですか?」俺はクスクス笑いながら先輩をからかった。

「月島くん、言うようになったよね? 先輩に容赦ないよね?」

「でもホントでしょ?」先輩はふてくされた。

「はいはい~俺は俺なりに残りの学校生活味わいますよ~」

俺達はお互いに笑いあった。



飲み物を買い、教室に戻ったら柏木さんと閖華さんが口喧嘩をしていた。

「この髪型がかわいいんじゃない! どこがへんなの?」

「は? 凜華はそのままが似合うに決まってるの!」

「インパクトつけたらもっと可愛いでしょー!」

藤馬さんの頭をいじりながら二人で言い争っている。

「ふたりとも何言い合ってんの」

「月島くん! いいところに! 凜華ちゃんの髪型なんだけど~」

「貴方は何もない方がいいって思いますよね? どうなの?」

どうなのって言われれば俺的には何もない方が頭触れるからいいけど。でもそんなことをいったら柏木さんに怒られる。

「藤馬さんの意見を聞いてみたら?」

「え、あ、私は別に」主体性を持ち合わせてよ、藤馬さん!!

「これだから、凜華は。だからアタシが決めてあげてるの」

「いーや、これからは凜華ちゃんが自分で決めるべき!」ヒートアップしている。藤馬さんは俺に助けを求める目で見てくる。

いや、女の戦いに足を突っ込みたくない。

「ていうか、俺はそのままの藤馬さんが好きだけど」

女の戦いが一時停止した。え、俺まずいこといった?

「月島くんが、そういうなら仕方ないか」

「確かに、着色つけなくても凜華はかわいいもの」

何故に今の発言でふたりとも納得した?!

「あの、月島さん。えと、今日の放課後、お時間いいですか?」

「あ、うん。いいけど・・・」突然話の方向が変わった。なんだ?

柏木さんも閖華さんもクスクス笑う。

俺には分からない空気がそこに流れていた。



放課後、藤馬さんに残っていてほしいと言われて、俺は教室に残っていた。藤馬さんはどこかに言っていた。なにが有るんだろう。

「あれ? 月島、帰らないのか?」そう声をかけたのは水原先生だ。

「はい。藤馬さんに残っていてほしいと言われたので」

「ふーん。隅に置けないな~お前は」

「なんのこと?」

「でもま、そうなっても俺は監視をやめないからな。いや違う。見守るな?」

先生は俺のところに来て、肩をポンと叩く。

「ありがとうな」

何故か感謝をされた。なぜかはなんとなくだけど理由が分かる。藤馬の束縛を少しだけど開放できたことだ。といっても藤馬姉妹を外にだすということだけだけど。

それに関しては先生も願っていたのだろう。

先生は教室をでて、部屋には俺だけになった。寒い。人のいない教室は結構冷える。夕日がきれいなオレンジで空の色が少し紫がかっている。俺はこのグラデーションが好きでずっと見ていた。


何分たっただろう。オレンジ色の夕日は完全に沈み、外は薄暗くなっていた。

「お待たせしました」

藤馬さんが教室に戻ってきた。

「遅かったね」

「すみません。少し話をしていたので」だれとだろう?

「えと、あの、あのですね」モジモジしながら藤馬さんは言う。

なんだろう。このシチュエーション。俺までドキドキする。

藤馬さんが大きく深呼吸をした。

「えと、私、月島さんに出会って本当によかったと思います。この学校に来て良かった。本当は御爺様に言われたから来ただけで、何も期待せずに転入してきました。」

突然藤馬さんが語り始めた。俺と出会ってからの日々を思い出しながら教室のガラス窓のところまで行く。俺もガラス窓に近づく。

「私は、こんな人間だし、こんな産まれだけど、それでも月島さんは受け入れてくれた。それがとても嬉しかったしとても嫌だった。私は嫌われて当然の人間だと思った。でも」

そういって顔を赤くして俺をみる。俺の鼓動は早くなる。

「月島さんは私に好きと言ってくれた。こんな私を好きだと、思ってくれている。あの時私は好きと言われて正直自分の気持ちはどうなのかわからなかった」

分かっている。藤馬さんは今まで感じよう全てを捨てていたんだ。だから返事はわからないだろうと俺は思っていた。

「恋とか愛とか私はまだ分かりません」

藤馬さんは顔を赤くして俺の方に来る。静かな教室に鼓動の音だけが響いてるかのよう。

「わかりませんが、私は月島さんともっと一緒にいたいと思う。もっと月島さんといろんなことをしたいと、思う」

これが藤馬さんなりの俺への返事なんだと思う。

正直に言おう。返事なんてないと思っていた。藤馬さんが真剣に考えてくれたんだ。俺のことを。だから俺は動揺している。

「あの、月島さん。何か言ってください」

もじもじしながら藤馬さんは俺に言う。

「え、あ、うん。ありがとう?」

「疑問形ですか?」 

「ごめん、嬉しくてなんて言っていいのかわからなくて」

「私、月島さんのためになら笑ってもいいかもしれないって思います」

またもや思わぬ角度で動揺させる言葉が放たれた。

「う、うん」俺のほうが顔が赤くなる。

「あと、それと、お願いがあるんですが」

「ん、なに?」

「なまえで、よんでも、いいですか?」

「・・・うん」たかが名前を呼ばれるだけなのに俺は凄く照れた。藤馬さんは深呼吸をして、俺の名を呼ぼうとする。

「な、な、ななななな」

俺の名前はバナナではない。だが動揺していてうまく言えていないところが可愛い。

「な?」

「な、なつ、つつつつつつ」

「今は冬だよ?」

頬を膨らませて怒っている。可愛さが倍増している。

「な、なつき、くん」

自分が恥ずかしいことを言っているのを自覚したのか、両手で顔を隠した。

「隠さない。ほら」そういって俺は藤馬さんの両腕を握り顔から手を話す。

冬なのに藤馬さんの体温は暖かい。そして紅い頬がとてもかわいく見えた。

今すぐ抱きしめたい衝動に駆られる。ああ、これを人は「愛しい」というのだろう。

「いじわる・・・」

目をうるうるさせながら俺のことをみる。もうどうしようもない。胸がキューッとなる。

「夏貴くん」今度ははっきりと名前を呼んだ。

「ありがとう。凜華」俺は藤馬さんを抱きしめた。

愛しさが溢れてくる。これ以上ない幸せだ。ただ大切な人に名前を呼ばれるだけでこんな気持ちになるなんて。俺は泣きそうになった。

「これが好きという感情、なんでしょうかね?」

「さぁ、どうだろう。分からないなら一緒に考えていこう。一緒いる時間はたくさんある。時間をかけて知っていこう?」俺は抱きしめたまま藤馬さんの頭をなでた。




彼女とあの時出会ってなければこんな気持ちに出会うこともなかった。

ずっと悲しい気持ちを持ち続けて忘れないように生きていくんだとおもった。

だけど、それだけじゃあないって彼女に出会って知る。

これからだって嬉しいことも悲しいことも起こるだろう。

だけど俺達はそうやって生きていて笑い合う。

そしていろんなめぐり合わせがあって今がある。

それを人は運命だというのだろう。


どんな状況下でも必ず人は幸せになる。


願わくば君も同じ気持ちでありますように。





ここまで読んでいただきありがとうございました!!

二人のこれからは読者さんのご想像におまかせします。

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