【三】
砂漠の中央に存在する巨大オアシス。豊かな水源、背の高い木々が日差しを遮り、きちんと舗装された道には大勢のひとが行き交う。色とりどりの建物、露店には見たことのない品々が並び、何もかもが輝いて見えた。
「ここが、陛下の都……」
うわ言のようにつぶやき、セラは思わずマティアスのシャツにしがみつく。マティアスは得意げに笑った。
「驚くのはまだ早いぞ」
彼が指差す方を見て、いよいよ言葉をなくす。
まっすぐに伸びた街道のその先に、そびえる荘厳な城。広大な領地を全て見渡せるのではないかと思うほど。
「この城と、そして街の建物や通りの石畳、全てにおまえの谷の石材が使われている」
まさかあの薄茶けた石が磨かれ、加工され、光り輝く都を造り上げていたとは。懐かしい温もりを感じる。ふるさとの石で守られていると思うと、心強かった。
「どうだ、半日かけた距離が近くなっただろう?」
「……はい」
「知ればおまえの世界は広がる。無知は罪だ。よく学ぶといい」
「はい」
きっと、皇帝は恐ろしいだけではない。美しい街に住む人々は、みな幸せそうに笑っている。
学ばなければ。セラは覚悟した。