宇佐山城の戦い
今回は珍しく剣丞の出番はありません
語り手視点
ついに甲斐へとやって来た剣丞達
だが、甲斐に着いた彼らに森可成こと桐琴が殺されたという知らせが入ったのだった。
一体何が起きたのか!?
それは剣丞達が甲斐へ向かう頃まで時は戻る。
久遠のいる岐阜城
久遠「フフフッ… 」
カンカンッ!!
久遠の部屋では数日前から何かを打つような音が聞こえていた。
久遠「剣丞め、生きているなら文くらい寄越さぬか!!貴様のことだからどうせ他の女とでもイチャついているのだろう!! 」
久遠が剣丞と書かれた藁人形に釘を打っていた音だったりする。
久遠「作者め!貴様が我を本編に早く出さぬから剣丞が他の女にくっつくのだ!! 」
それは作者のせいではない
久遠「うるさい!貴様もついでに呪ってやる! 」
カンッ!!
うっ!?
久遠が多数の藁人形に釘を打っている原因はというと
壬月「おいエーリカ、お前が久遠様に変なことを教えるから久遠様がああなったのではないか責任とってやめさせろ 」
エーリカ「私だってまさかこんなことになるとは思いませんでしたので 」
エーリカが久遠に教えたのがきっかけであった。(84話参照)
もはや今の久遠は誰にも止められない
そう思われたその時だった。
麦穂「久遠様! 」
久遠「何だ麦穂 」
麦穂が勢いよく部屋に入ってくると
麦穂「近江(現在の滋賀県)の宇佐山城付近にて鬼が出現したという報せです 」
久遠「宇佐山城だと 」
宇佐山城とは日本の城で京都へ向かうには避けては通れない位置にある。
久遠「近江ということは市や眞琴達にも危害が及ぶかもしれぬな、すぐに討伐隊を向かわせろ 」
麦穂「了解しました 」
壬月「では私が… 」
壬月が鬼を討伐する名乗りをあげようとするが
桐琴「いや、ここは儂と小夜叉に任せてもらおう 」
小夜叉「オレ達に任しとけって! 」
森一家である桐琴と小夜叉が名乗り出た。
久遠「三左、小夜叉 」
桐琴こと森可成は本名が森三左衛門可成ということから久遠より三左と呼ばれていた。
桐琴「最近儂らも暇をしてましてな 」
小夜叉「また作者の奴がオレ達をなかなか出さないからだぜ 」
そう言うでない。
桐琴「それに久遠様の重臣である壬月や麦穂が向かっては万が一ということもあり得る。ここは儂らが行くのが良いであろうよ 」
確かに桐琴の言うこともあっていた。
もちろん二人の戦闘力が低いというわけではないが相手は並の相手ではない鬼
万が一、二人が亡くなってしまっては久遠を支えるものがいなくなる。
壬月「しかし… 」
桐琴「なぁに、儂らとて殺られる気はない 」
それを聞いた久遠は
久遠「わかった。三左、小夜叉よ頼むぞ 」
桐琴「承知 」
小夜叉「任せとけって! 」
だがこの時、ただ一人を除いて誰も知らなかった。
この戦いは織田軍の負け戦であり、必ず戦死者が出るということを
エーリカ「・・・ 」
そう。エーリカを除いて
それから数日後
桐琴率いる森一家は宇佐山城へと到着し、わずかな兵ではありながらも
桐琴「うらぁっ!! 」
小夜叉「おりゃぁっ!! 」
持ち前の戦闘力で鬼軍を次々と倒していた。
小夜叉「この程度で森一家を止めようったって甘いんだよ! 」
戦いはまさに織田軍優勢のまま一日を終えたのだが
化身居士「あれが森一家か、成程下級鬼や中級鬼では相手にならぬはずだな 」
この戦況を見ていた鬼軍大将である化身居士は
化身居士「だが次はこの私自らが向かう以上、鬼軍に負けは許されぬ!そのために私は御館様から休暇を得たのだからな 」
次の戦いは化身居士自らが動くようであった。
化身居士「そして森可成、貴様には史実通り死んでもらう 」
一方
足軽「さすがは森一家だ。鬼が相手だろうが必ず勝つ 」
足軽「こりゃいくら鬼が相手だろうと我が軍の勝ちは決まったも同然、鬼もさっさと降伏すればいいだぎゃ 」
足軽達がそんな会話をしていると
足軽「大変だぎゃ!?鬼軍が攻めてきただぎゃ!? 」
一人の足軽が慌てた様子で現れた。
足軽「何だって!?それで数はいくつだ? 」
攻めてきた鬼軍の数を聞いてみると
足軽「それが…たった一人なんだぎゃ 」
足軽達『はっ? 』
たった一人現れただけで何を騒いでいるんだ
足軽達はそう思っていたが
その一人こそ
ドカァッ!!
足軽「ぐふぅっ!? 」
化身居士「弱い。あまりにも弱すぎるぞ 」
鬼軍を率いていた化身居士であった。
槍を構える足軽達を蹴りだけで殺していった化身居士は
化身居士「我が名は鬼軍大将化身居士である!敵陣で一番強きものよ、出てくるがよい! 」
織田軍陣営に向かってそう叫んだのだった。
一方
桐琴「ほう、敵の大将が自ら名乗り出たか 」
各務「そのようです 」
各務元正
森一家の副長。桐琴と小夜叉の手綱を握ることのできる人物
小夜叉「母、そんな奴オレが倒してやるぜ 」
自分が行くと言う小夜叉であったが
桐琴「小夜叉、相手は一番強きものを望んでいる。ならば儂が行くのが道理であろう 」
小夜叉「ちえっ 」
桐琴「案ずるな、儂一人で相手をするから小夜叉は残っておれ 」
スッ…
そう言って立ち上がろうとする桐琴
すると
ブチンッ!
桐琴が履いている草履の鼻緒が切れてしまった。
小夜叉「どうしたんだ母? 」
桐琴「いや、何でもない。それより各務よ、少し残るがよい 」
各務「何でしょうか? 」
小夜叉を離れさせ、各務を残した桐琴は
各務「誠でございますか!? 」
桐琴「儂が冗談をいうと思うか兎に角、万が一の時は頼むぞ各務 」
各務に何かを言いつけ
桐琴「織田軍大将森三左衛門可成、参る! 」
化身居士の前に出るのだった。




