復讐
春が近づいて来てるのか、それは暖かい日の夕暮れだった。
忘れ去られた廃校の2階には少女がいた。
少女は窓の外を見ていた。
死んだ目で見ていた。いつまでも。
何を考えているのか、もしくは考えていないのか、死んだ目で見続ける。
少女はふと時計に目を向ける。
止まっているのだろう、時計は3時15分を指したまま動かない。
もう一度少女は窓の外を見る。
突然景色を塗り潰すようにポツポツと雨が降ってきた。空は一面曇りだ。長雨になるかもしれない。
少女の携帯が鳴った。メールだ。内容を確認すると『何処にいる』の一言だけだった。少女は返事を返す。『屋上』
送信が終わると少女は椅子から立ち上がる。ゆっくりと。
少女は教室を出る。教室には誰もいない。
手にはバットを持っていた。
少女は廊下を歩く。学校内に少女以外の人の気配は無い。
廃校だからだろう、所々が抜けている。
バットが擦れる音が聞こえる。キィキィと音がするが、少女は気にせず歩き続ける。
床に溜まった濁っている水たまりを踏みつけ、少女は目的地へ向かって歩き続ける。ただ、ひたすらに。
外はまだ雨が降っている。
少女は階段を昇り始める。埃まみれの階段を、一歩一歩、昇る。
所々埃が無いところがあった。きっと先客がいるのだろう。
少女は偶にため息をつき、後ろを向く。だがすぐに前を向き、昇り始める。同じ速さで、一歩づつ。
不意に携帯が再び鳴り始める。
だが少女は携帯を開かずに、下へ向かって投げ捨てた。
あちこちに携帯がぶつかる音が響き、こだまする。
壊れたのか、それとも聞こえないほど下へ行ったのか、音はもう聞こえない。
少女は再び昇り始めた。
少女は階段を昇りきり。扉に手をかける。
扉を開くと女が二人いた。どちらも傘を持ってじっ、と少女をを見ている。
少女はバットを後ろに隠しながら女に近づく。バットの他に何も持ってないため、既にびしょ濡れだ。
女達は女子高生だろうか。とても若い。
しばしの沈黙の中、女子高生の一人が少女に話しかける。
「どうして私達をこんなところに呼んだわけ?」
しかし少女はその質問に答えず、
「これは…復讐…」
と自分に言い聞かせるように話しかける。
「……!?」
何を言おうとしたのか、女が口を開きかける。
だが、何かを話す前に少女のバットが女の顔に当たる。
渾身の力を込めて女の顔を殴る。女は倒れた。でも殴る、何度も、何度も。
数分も経たないうちに、ベキッと何かが砕ける音がした。だが、少女は殴るのをやめない。何度も、何度も殴り続ける。
頭だった部分にバットがめり込んだ。
もう一方は友人が死んだショックか、自分も次に女と同じ運命を辿ると直感したのか。あるいはどちらとも、と言えるかもしれない。怖がっているのか動かなかった。床にへたり込み、小刻みに震えながら少女を見ている。目は怯えていた。
少女は女の方に向き変える。
表情は無い。
教室の時と変わらず、何も考えてない。と言うような目で女を見つめる。
「た、助けて…」
しかし、懇願は少女の耳には届かなかった。
雨はまだ降り続いている。
少女の服は結構濡れている。体温も結構下がってることが自分でもはっきりと分かった。明日は風邪を引くかもしれない。
だが、少女の心は晴れやかで、晴天だった。
少女はフェンスを開け、奥に進む、鉄柵は既に錆び付いていて、バットで殴ると案外簡単に壊れた。
少女は死体二つを運ぶ。
死体を落とすために。
少女は死体を落とす前に、下を覗いてみた。
人…だったものが散乱していた。
体はグチャグチャで原型をとどめておらず、飛び散った肉片が広範囲にわたって飛び散っていた。
「復讐……」
少女は一言そう呟いた。
「お前らも一緒にしてやるよ」
死体に話しかけるように呟いた後、少女は先程まで人であったものを下へ落とした。




