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ctrl + B(僕が何をしたって言うんだ!)

 俺の名は川島棉。真面目な男子高校生だ。二年生だ。授業中の今、ソニーのワイヤレスイヤホンを長い髪で隠している。ちょうどbasketcaseの入った洋楽プレイリストが終わったから気まぐれにヒトリエを聞いている。

 今日も今日とて数学の教師は禿げだし、前の席の滝冷夏はガリ勉だし、隣の席の悪魔クソっ子はクソだ。


 「おい。悪魔。さっきからうるさい。授業に集中しろ。お前の囁きのせいで音楽が聴こえない」

 「うん。そうだよ。でもさ、ショーンだって授業受けなよ」

 「受けぬ(断定)」

 「じゃなにさ。僕だけ静かにしろってこと?」

 「そうだ。じゃないと教会で磔にしてやる」

 「偶像崇拝とか悪魔的~!」

 「悪魔だろ」

 「うん」


 『でね。皆過去に戻りたがるわけじゃん?』


 「授業中だと言っているだろ。静かにしろ。この悪魔」

 『そんなこと言っていいのかなぁ~?』


 ωではない。γだ。γな笑みを浮かべている悪魔子。一体何を企んでいるのか。

 気持ちエクソシストでその幼げな瞳を覗けばよく光っていた。

 

 「禿じゃねえか」

 「だれが禿だ。おい。川村君」

 「川越です」

 「川島だろ。思わずツッコんでしまった」

 「小峠みたいでしたよ」

 「だれが禿だ。さっきから授業を聞いていないみたいだが?」

 「聞いていますよ」

 「そうか。じゃあ黒板の問題ももうとっくに解けているんだな?」


 トコトコと黒板まで行って問題文


 ∫x^3+2x / √x^2 + 1 dx 


 「なるほど。簡単じゃないか」

 『ほんとかな……滝ちゃん頭抱えてるけど』

 「わっがんな゛い! クソ!」

 「ナルホド。カンタンジャマイカ」


 コトコト。真面目な俺だから一瞬でわかった。朧気にふわっと湧いてきたんですよね(not 小泉 but ラマヌジャン)。

 解答。


 ……

 ……

 1/3(x^2 -2)√x^2 +1


 満を持して。俺は席へ戻った。数学禿は口を覆って驚いた。おい、もっと強い問題出せよ~と煽ってやりたいが、日本では無口に座るだけ。(すごーいって言って。言って!)


 「すごーい」悪魔っ子。

 「それほどでもない。こんなの誰でもできる(キリッ)」

 「わーい」クラスメイトA。

 「煽ってるだろ」

 「うぇーい」クラスメイトB。

 「うぇいうぇい!」^俺(便乗)。


 「くくく……」


 禿が嗤っている? あれは空いた口が塞がらなかったんじゃない。笑みが抑えられなかったのか?


 「まさか間違っていたのか?」

 「不等式だったのかな?」悪魔子。

 「ククク……」

 「違ったよ」残念子。


 あの禿げめ。なにを嗤っているんだ!


 「何が間違っている!」

 「間違ってないさ……でもやった!! 不正解だ!!」

 「なにぃ!」

 「重要なことを忘れているぞ!!」

 「忘れている? 課題のことか!」

 「ああそういえば川島、先週の課題出してないな。あとで出せよ」

 「。」開いた口。


 問題間違ってんだから。じゃなくて×だろ。と数学がハゲっている。


 「重要なことを忘れているぞ!」

 「な、なんのことだ!?」


 数学禿は悪魔のごとく頬が引き裂けんばかりに笑いながら告げた。


 「+C(積分定数)だ」

 「う、う、うああああああああああああああああああ!!」

 「ひゃっひゃっひゃ!」禿げ。

 「ふぅ~ひゃっひゃっひゃ!」クラスメイト他。

 「細かいこと気にしてると禿げるぞ」

 「ふへっ!ひゃっひゃっひゃ!」クラスメイト他。

 「授業進めるからいいかげん座れ」

 「は、はぃ……」


 く、悔しい! 思わず何故か置いてあったパソコンのキーボードをぶち壊してしまった。淡々と。

 

 「クソ。笑われた。こんな恥をかくなら高校来なきゃよかった!」

 「悔しいねぇ~」ニタニタ悪魔子。

 「生まれて来なきゃよかった!」

 「反出生主義? 悪魔的!」キラキラ悪魔子。


 俺が断腸ならぬ切腹の思いに駆られる横で悪魔子は徐だった。徐に机に脚を乗っけて欠伸をした。数学禿を冒涜したのだ。嬉しさのあまり教卓で腰振って踊っていたドパ禿を。

 禿は激怒した。必ずかのクソガキを除かなければならぬと決意した。

 ビシバシと赤鬼のように顔真っ赤にしてこっちに来る。現代的に言えば地ならし。数学禿一人だけど。


 「さて。今、僕は大ピンチなんだけど。ショーンどうする?」

 「このままお前が駆逐されるのを眺めたい」

 「そうじゃなくて。取引しようよ。ここいらで僕の能力使ってみない? ほら~そろそろ使いたい気分でしょ?」

 「悪魔子の能力……Ctrl+z。うっ! +Cが!」

 「メンタル弱すぎだよね。もしも君がそこにあるノートパソコンのCtrl+zを押したら、ちょっとだけ過去に戻れる。君は恥をかいてしまったね。死にたいくらい。いや、メンタル弱すぎだけど。どう? ここいらで使って見ない?」


 悪魔が裂けた腹を愛撫するように笑っている。俺がこうなるのをずっと待っていたのだろう。

 許せない。


 「この悪魔め! 詐欺師め! 放課後は礼拝だ!」

 「そんなこと言っている場合かな? 早くキーを押さないと大変なことになるよ?」にやにや。

 「黙れ! どうなってもお前なんかの言うことを聞くものか!」

 「いいや。黙らないと。いいの? それで? 早く押した方がいいよ?」にやにや。

 「黙れ! にんにく投げつけるぞ! おろししかないからぶっかけるぞ!」

 「冷静になりなよ? キーを押すだけで助かるんだよ? 簡単なことじゃない?」に、ちら、ちら?

 「黙れ! どう囁かれたってお前などに従わない!」

 「ふーん? いいんだ? いいんだね? これから一生、この黒歴史を引きずるんだよ? まずは今日一日中、そして寝る前。明日の朝、ちょっと学校行きたくないって胃が重くなって朝食が通らなくなる。それで一週間後に忘れても、それからずっと、ふとしたときに思い出して胃を痛める。死ぬまで!」ざわざわ。

 「ぐぬぬ! いや、だとしても僕はやらん!」


 意地だった。

 あと何故かだんだんと焦る悪魔子が面白いから断った。これこそ正義の嘲笑。魔女狩りならぬ悪魔狩り。

 ついに超大型数学禿がやってきた。怒りの熱気が悪魔の顔面から自負を剥ぎ落した。


 「覚悟は良いのかね? 悪魔子さん??」

 「ひぇ! ほら! だから大変なことになるって言ったじゃん! 早く押せよぉ~! 押してよぉ~! 怒られちゃうよ!」泣き顔。

 「脅して無理だから泣きつくとは。悪魔め」

 「あ! そうだ!! 先生! ショーン君がパソコン学校に持ってきてまーす!」

 「なに? ほんとうだ。こいつはLenovoの画面タッチ機能付きのPCだ。しかも画面が360°回転するから絵も描けるし、安いPCによくあるバキッと逝く故障になりにくい! しかし360°がπでないことが気に食わない! 没収だ!」

 「待ってください。これはテーゼなんです。高校でもシャーペンでノートに書き写す時代は終わりです。今はPCでメモをしたり、調べながら授業を受ける時代なんです。いいえ。そういう時代であるべきです。だってこっちのほうが効率的ですから! つまり日本の教育は遅れているということです。いち早くデジタル化をしなければ、日本はこのAIの時代に置いてかれて行ってしまいます!」

 「なるほど。だがしかし360°がπでないことが気に食わない! 没収だ!」


 クソ! 悪いのは頭だけにしておけよ。矛先が俺に向いてるじゃないか。

 悪魔子が腕に抱きついたままニタニタ笑っている。小声で早く押せ~と煽ってくる。

 そうはさせるか!


 「先生! よいしょっと。はい、悪魔子が机に脚乗っけてるます! ついでに弁当も食べようとしてました!」

 「なんだと!」

 「陰謀だよ! てか今、見てたでしょ! 頭だけじゃなくて目も悪いの!?」

 「さっきから禿禿と。悪魔子、いい加減にしろ!」

 「僕だけじゃないよ定期! うぇーん! 早く! 早く! キー押してよー!」


 真顔。関係ないフリ。

 どうせこの後、PC没収されるからそのときになったら押そう。それまでは悪魔子が数学教徒に蹂躙されるのを楽しもう。愉悦。信仰心!


 「悪魔をいじめるなぁ!」

 「あーめん」

 「アーサーも忘れないで!」

 「今年のファイナルはピストンズとロケッツかもしれないな。そしたら兄弟対決じゃん。おもしろそ」

 「って関係ないね!? 助けろぉ~! そうだ! 先生! この人、イヤホンつけてます!」

 「なんだと!」


 この悪魔め。俺のイヤホンを剥ぎ取ってきた。あれは端的に言って俺の命より重い(※物理的には軽いです)。


 「これはソニーのイヤホン。ヤマハじゃないとは許せん! 没収だ!」

 「待ってください! 一度聴いてみてください。捨てたもんじゃないですよ!」

 「ふむ。確かに低音がよく聴こえる。これならもっと教卓で踊れそうだ。しかしヤマハじゃないならダメだ! 没収はしないでやろう! 粉砕だ!」

 「そうはさせるか!! うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 Ctrl+z


 「ふむ。確かに低音がよく聴こえる。これならもっと教卓で踊れそうだ。しかしヤマハじゃないならダメだ! 没収はしないでやろう! 粉砕だ!」

 「って全然戻ってないじゃねえか!」

 「一回押したら一文しか戻らないに決まってるよ! 連打しなよ!」

 「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!」



 Ctrl+z(連打)


 ――

 ―…

 ……

 ……ωではない。γだ。γな笑みを浮かべている悪魔子。一体何を企んでいるのか。ん? 戻った?

 気持ちエクソシストでその幼げな瞳を覗けばやっぱりよく光っている。

 

 「どう足掻いても禿じゃねえか」

 「だれが禿だ。おい。河村君」

 「トリプルダブルするぞ」

 「川島だろ。思わずツッコんでしまった」

 「トムブラウンみたいでしたよ。ダメー!」

 「ふざけるな! だれが禿だ。さっきから授業を聞いていないみたいだが?」

 「聞いていますよ。しっかりと」

 「そうか。じゃあ黒板の問題ももうとっくに解けているんだな?」


 トコトコと黒板まで行って問題文


 ∫x^3+2x / √x^2 + 1 dx 


 「なるほど。簡単じゃないか」

 『ほんとかな……滝ちゃん頭抱えてるけど』

 「わっがんな゛い! クソ!」

 「ふ~ん♪ ふんふ~ん♪」


 コトコト。真面目な俺だから一瞬でわかった。朧気にふわっと湧いてきたんですよね(I am a ラマヌジャン)。

 解答。


 ……

 ……

 1/3(x^2 -2)√x^2 +1 + C


 満を持して。俺は席へ戻った。数学禿は口を覆って驚いた。ありもしない髪をかき乱している。間違いなようだ。


 「おい、もっと強い問題出せよ~」


 と煽ってやった。(すごーいって言って。言って!)


 「すごーいすごーい」悪魔っ子。

 「それほどでもない。(キリッ)」

 「わーい! 多分あってんだろぉ~!」クラスメイトA。

 「煽ってるだろ? 煽ってんだろ?」

 「うぇーい ぴゅるる~!!」クラスメイトB。

 「うぇいうぇい!」^俺(結局便乗)。


 「……えー。では授業に戻ります。このように難しい積分は置換を探してですね~」


 数学禿はアオミドロよりも青い顔色で授業を進めた。唯一のアドバンテージの知識がボロ布となってはこうも弱弱しい。

 俺は内心、嘲笑した。

 悪魔子は徐に脚を机に乗っけた。


 「どやぁ~」


 もちろん悪魔子は傍から見てただ横暴なだけなので数学禿に説教された。俺に敗北した分の不満が乗っかったのか、さっきよりも激しく怒鳴った。

 そのときも悪魔子がPCだのイヤホンだの告発したが、俺は二周目。真面目に隠した。


 「なんで僕だけぇ~!」

 「人という字は!」

 「悪魔ぁ……」

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