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異世界クラス転移戦記  作者: 膝栗毛


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11/11

クラスメイト3

引き継ぎお楽しみください

22

気がつくと、俺は教室にいた。

机。椅子。黒板。

蛍光灯の光。

窓の外の、校庭。

「……え?」

全てが、元通りだった。

「桐谷!」

麗華の声。

振り返ると、クラスメイト全員が、教室にいた。

全員、無事だ。

「帰って……きたのか?」

山田が、呆然と呟いた。

「本当に、帰ってきたんだ……」

佐藤が、机を叩いた。

「これ、本物だ! 夢じゃない!」

みんなが、泣き出した。

喜びと、安堵と、そして――

喪失感。

「マルクス将軍……」

俺は、窓の外を見た。

あの世界は、どうなったのか。

将軍は、生きているのか。

それとも――

「桐谷君」

田所先生が、不思議そうに俺を見た。

「どうしたの? ぼーっとして」

「え……先生?」

「授業中だよ。集中しなさい」

授業中?

時計を見ると、午前十時。

転移する直前の、時刻だった。

「まさか……」

麗華が、呟いた。

「時間が、戻ってる?」

「そんな……じゃあ、あの数ヶ月は?」

「夢だったのか?」

いや、違う。

これは夢じゃない。

俺の手には、まだ剣を握った感触が残っている。

体には、あの世界での記憶が刻まれている。

「先生、トイレに行ってきます」

俺は、許可も待たずに教室を飛び出した。

廊下を走る。

階段を駆け上がる。

屋上へ。

そして――

空を見上げた。

「……マルクス将軍」

声が、震えた。

「ありがとうございました」

涙が、溢れた。

止まらなかった。

23

放課後。

クラスメイト全員が、屋上に集まった。

「みんな、覚えてるよな?」

山田が、確認した。

「あの世界のこと」

「ああ」

「覚えてる」

「忘れるわけない」

全員が、頷いた。

「じゃあ、どういうことだ?」

佐藤が、混乱した様子で言った。

「時間が戻ってるってことは、あの世界では時間が経ってないのか? それとも――」

「分からない」

長谷川が、冷静に言った。

「でも、一つだけ確かなことがある」

「何?」

「僕たちは、確かにあの世界にいた。そして、帰ってきた」

長谷川は、みんなを見回した。

「これから、どうする? 普通に学校生活を送るのか?」

沈黙。

「……俺は」

俺が、口を開いた。

「あの世界で学んだことを、無駄にしたくない」

「どういうこと?」

「戦場で、多くの人が死んだ。俺の判断で、生き延びた人もいれば、死んだ人もいる」

俺は、拳を握りしめた。

「その重さを、忘れたくない」

「桐谷……」

「だから、俺は――」

俺は、みんなを見た。

「この世界で、ちゃんと生きる。一日一日を、大切にする」

麗華が、微笑んだ。

「それ、いいね」

「俺もそうする」

山田が、頷いた。

「あの世界で、命の大切さを学んだ。無駄にしない」

次々と、みんなが決意を語った。

クラスは――

あの世界での経験で、確実に変わっていた。

24

数日後。

俺は、図書館である本を見つけた。

『古代ローマ帝国史』

何気なく、開いた。

そこには――

驚くべき記述があった。

「マルクス・アウレリウス・グラディウス。紀元後三世紀、ウァレティウス帝国の将軍。皇帝ガイウスに対して反乱を起こし、新皇帝ルキウスを擁立。帝国の民主化を推進した改革者として知られる」

「その後、北方の蛮族との戦いで戦死。享年五十三歳。帝国市民から"賢将"として慕われ、その死は多くの人々に悼まれた」

「マルクスの改革により、帝国は元老院の権限が強化され、皇帝の独裁が抑制された。また、異界者保護法が制定され、異世界から来た者たちの人権が守られるようになった」

マルクス将軍……

生きていた。

そして、帝国を変えた。

「良かった……」

涙が、溢れた。

将軍は、生き延びた。

そして、最後まで――

兵を、人々を、守り抜いた。

「桐谷?」

麗華が、心配そうに覗き込んできた。

「どうしたの? 泣いて」

「いや……」

俺は、本を見せた。

「将軍、生きてたんだ」

麗華も、記述を読んだ。

そして――

微笑んだ。

「良かったね」

「ああ」

俺は、本を閉じた。

「あの世界は、ちゃんと続いてたんだ。俺たちがいなくても」

「うん」

「将軍は、最後まで戦い抜いた」

俺は、空を見上げた。

「俺も、負けられないな」

25

それから一ヶ月が経った。

クラスメイトたちは、それぞれの道を歩み始めていた。

山田は、サッカー部で真剣に練習するようになった。

「あの世界で、仲間の大切さを学んだ」と言って。

佐藤は、以前の反抗的な態度を改め、真面目に勉強するようになった。

「鉱山で苦労したからな。勉強の大切さが分かった」と。

麗華は、生徒会に立候補し、当選した。

「みんなのために、何かしたい」と言って。

長谷川は、歴史部に入り、古代の研究を始めた。

「あの世界のことを、もっと知りたい」と。

そして、俺は――

26

ある日、担任の田所先生に呼ばれた。

「桐谷君、最近、変わったわね」

「そうですか?」

「ええ。以前は大人しかったのに、今はクラスをまとめる力がある」

田所先生は、微笑んだ。

「何かあったの?」

「……少し、成長したんだと思います」

「そう」

田所先生は、頷いた。

「これからも、その調子で頑張って」

「はい」

教室に戻ると、クラスメイトたちが騒いでいた。

「桐谷! 聞いたか!?」

山田が、興奮した様子で駆け寄ってきた。

「何?」

「修学旅行、ローマに行くことになったぞ!」

「ローマ?」

「ああ! イタリアのローマ!」

俺は、驚いた。

まさか――

「古代ローマ遺跡を見学するんだって! コロッセウムとか、フォロ・ロマーノとか!」

麗華が、目を輝かせた。

「あの世界と、似てるかな?」

「分からない。でも――」

俺は、笑った。

「楽しみだな」

27

修学旅行の日。

俺たちは、ローマの街を歩いた。

古代の遺跡。

石造りの建物。

元老院の跡地。

「……すごい」

佐藤が、呟いた。

「あの世界と、本当に似てる」

「ああ」

俺も、感動していた。

コロッセウムに立った時――

マルクスの顔が、浮かんだ。

「将軍……」

「桐谷、何か言った?」

「いや、何でもない」

俺は、空を見上げた。

青い空。

白い雲。

この世界の空も、あの世界の空も――

同じだった。

「なあ、桐谷」

山田が、俺の隣に立った。

「お前、あの世界に戻りたいと思うか?」

「……時々、思う」

「俺も」

山田は、笑った。

「でも、この世界も悪くない」

「ああ」

「だから、両方で頑張ろうぜ」

「両方?」

「この世界で、ちゃんと生きる。そして、あの世界のことも、忘れない」

山田は、拳を突き出した。

「約束な」

俺は、その拳に、自分の拳を合わせた。

「ああ、約束だ」

28

修学旅行の最終日。

俺は、一人でフォロ・ロマーノを訪れた。

かつての元老院があった場所。

観光客で賑わっている。

だが、俺の目には――

マルクスが立っている姿が見えた。

「将軍……」

幻覚だと分かっている。

でも、確かに見えた。

マルクスが、微笑んでいる。

「よくやった、桐谷」

そう言っているような気がした。

「将軍、俺……」

涙が出そうになった。

「ちゃんと、生きます。この世界で」

風が、吹いた。

優しい、暖かい風。

マルクスの幻影が、消えた。

だが――

胸の中に、確かに残っている。

あの世界での記憶。

将軍との絆。

仲間との約束。

「ありがとうございました、マルクス将軍」

俺は、深々と頭を下げた。

そして――

前を向いて、歩き出した。

29

日本に帰国した後。

クラスメイトたちと、秘密の集まりを開いた。

「これから、どうする?」

麗華が、問いかけた。

「あの世界のことを、誰かに話す?」

「いや」

長谷川が、首を振った。

「話しても、信じてもらえない。それに――」

長谷川は、みんなを見回した。

「これは、僕たちだけの秘密にしよう」

「賛成」

「俺も」

全員が、同意した。

「じゃあ」

俺が、提案した。

「定期的に集まろう。あの世界のことを、忘れないために」

「いいね」

「月一回とか?」

「ああ」

こうして、俺たちの"秘密の会"が始まった。

毎月一回、集まって――

あの世界での出来事を語り合う。

笑い、泣き、思い出す。

マルクス将軍のこと。

ルキウスのこと。

セウェルスのこと。

帝国のこと。

戦場のこと。

そして――

あの世界で学んだ、命の大切さ。

30

三年後。

俺たちは、高校生になった。

あの日のことは、まだ鮮明に覚えている。

マルクス将軍の顔。

戦場の匂い。

仲間との絆。

「桐谷」

進路相談で、先生に言われた。

「お前、将来何になりたい?」

「……まだ、決めてません」

「そうか。でも、お前はリーダーシップがある。生徒会長もやってるし」

「それは――」

「政治家とか、向いてるんじゃないか?」

政治家。

俺は、少し考えた。

マルクスは言っていた。

「お前は、全体を見る目がある」と。

「参謀として、優れている」と。

ならば――

「先生、俺――」

俺は、決意を語った。

「国際政治を学びたいです。そして、将来は――」

「将来は?」

「世界から、無駄な戦争をなくしたい」

先生は、驚いたように目を見開いた。

「……大きな夢だな」

「はい。でも、やりたいんです」

あの世界で、俺は見た。

戦争の悲惨さを。

無駄な死を。

理不尽な犠牲を。

それを、この世界で繰り返させたくない。

「分かった」

先生は、微笑んだ。

「応援するよ、桐谷」

「ありがとうございます」

エピローグ

十年後。

俺は、国際機関で働いていた。

紛争解決の仲介役。

まさに、参謀のような仕事。

ある日、難民キャンプを訪れた。

戦争で家を失った人々。

傷ついた子供たち。

「……あの世界と、同じだ」

呟いた。

人間は、世界が変わっても――

同じ過ちを繰り返す。

「でも」

俺は、拳を握った。

「俺は、諦めない」

マルクス将軍が、最後まで戦ったように。

俺も、最後まで――

平和のために、戦い続ける。

「桐谷さん」

同僚が、声をかけてきた。

「次の会議、始まりますよ」

「ああ、今行く」

会議室に向かいながら――

空を見上げた。

青い空。

あの世界と、同じ空。

「見ていてください、マルクス将軍」

俺は、心の中で語りかけた。

「俺は、あなたの教えを忘れていません」

「兵は駒ではない。一人一人が、命を持った人間だ」

「その心を、失わずに――」

「俺は、この世界で戦い続けます」

風が、吹いた。

まるで、将軍の返事のように。

優しく、暖かい風が。


そして。

遠い異世界では――

マルクスの墓に、誰かが花を供えていた。

墓碑には、こう刻まれている。

「賢将マルクス・アウレリウス・グラディウス」

「兵を愛し、民を守り、帝国を変えた英雄」

「そして――」

「異界の少年に、未来を託した男」

墓の前で、一人の老人が呟いた。

「桐谷殿……あなたの世界で、無事でしょうか」

それは、年老いたルキウスだった。

「マルクス将軍は、いつもあなたのことを誇りに思っていました」

ルキウスは、空を見上げた。

「どうか、あなたの世界で――」

「幸せに、生きてください」

風が、吹いた。

二つの世界を繋ぐような――

優しい、暖かい風が。



これでおしまいです

主人公・桐谷蒼太は、異世界での経験を胸に、現代世界で平和のために戦い続ける。

そして、異世界では――マルクスの意志が、次世代へと受け継がれていく。

二つの世界、二つの物語は、こうして幕を閉じた。

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