プロローグ
ママの話してくれる不思議で素敵なお話が好きだった
毎晩寝る前に少だけ聞かせてくれる冒険のお話
優しくてちょっと不思議な女の子と強くてカッコいい
一匹のオオカミさんの長い長い旅のお話
私はそれが大好きだった。憧れだった。だから…
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「んもう!だ!か!ら!私はもう15なんだから!
大人だからね!?1人で大丈夫なの!!」
そう言って大きなリュックサックを抱えながらドタドタと階段をかけ降りる少女。名前は茶鼓 結葉
皆からはよく「茶っぱ」と呼ばれている。
「くぉー!らー!お茶っぱァ!!」
そう声を荒げながら階段を飛んだのは低めの声に似つかわしくない小柄な女。彼女は空中で体勢を変えるとそのまま茶っぱを羽交い絞めにする。
「ちょ、パパァ!?ギブギブ!ギブだって!」
パパと呼ばれた彼女は紫夕 星空れっきとした♀であるが同時にパパでもある。
ママはよくパパの事をめておと呼ぶが何故かはわからない。あれ?そう言えばママは…
「年頃の娘に何してるんですか?あなた」
おーわ。すごーく怖い顔。羽交い絞めにされてるためコッチからは見えないがそれでもパパが顔を真っ青したのがわかった。ザマァミロ
「い、いや、違うんだママ。茶っぱがまた1人で森に行
こうとしてたからそれを止めただけで…」
「じゃあどさくさに紛れてさっきから胸を揉んでるの
はなんで?」
ピシッ… 一瞬にして空気が凍る
「アッ…ヤベッ」
それがパパの最後の言葉だった…アーメン
◆
「それで?なんでお茶っぱちゃんは1人で森に行こうと
したの?森は危ないってお茶っぱちゃんも知ってるで
しょう?」
「ごめんなさい…。でも俺、俺…強くなって!いつか旅
に出たいんだ!世界は広いんだろ!?俺も見たい!
誰のお話でもなく俺の、俺自身の目で確かめたいん
だ!」
パパに対してぷんすこ怒っていたママはそれを聞いて
目を開く。そして
ふ、と懐かしいものを思い出したかのように笑った
「だってさー。めてお。アナタそっくりだねこの子は」
ママの鉄拳を食らって床にめり込んでいたパパがはっとしたような顔で勢いよく顔を上げる。そのまま、ママは続けた
「稽古、つけてやってくれない?」
「「…マジ?」」