またまた、絡まれました
一話飛んでいました。
済みません。以後、気を付けます。
亜人族全てに言えることだけど、彼らは匂いに関してとても敏感だ。
なので、匂いを付けている人に対して、余程の事がない限りちょっかいを出そうとはしない。マナー違反になるからね。特に、番の色のピアスを身に着けている人には、より慎重になる。
それが、亜人族の鉄則だった。ピアスに関しては、人族にも言える。
それを破れば、決闘と称した処刑もあると言われている。中でも、竜人族と獣人族の狼獣人は、その傾向が強いって聞いてるわ。
因みに、カイナル様は白銀狼の獣人。
そう考えると、私に直接ちょっかいを掛ける、命知らずの亜人族はいないはず。スノア王女殿下は別としてね。アジル殿下が慌てるの分かるよね。
なら亜人族は、そう問題じゃないわ。
問題は人族――
番の習慣がないからね。
亜人族は一度番になれば、そうそう別れることはないけど、人族は夫婦になってからも別れることがあるわ、普通にね。このピアスのことも、婚約したくらいにしか考えていない。
なので、容易に割り込めるって考えている。相手は平民だしね。
まぁ簡単に言えば、婚姻に関して軽いの。だから、こういう事をしてくる人が出てくるの。それも、徒党を組んで。
(失敗したわ……一人にならないようにしていたのに)
忘れ物を取りに教室に行ったら捕まった。
(確か……同じクラスの子よね。名前は覚えてないけど、伯爵令嬢だったはず。金魚のフンは見覚えないけど、伯爵家に繋がる人たちかな。可哀想に、仕える相手に恵まれなかったわね)
恐れもせず、平然としている私に、伯爵令嬢が金切り声で怒鳴り付けてきた。
「貴女、少し成績が良いからって、いい気になってるんじゃないわよ!! なんで、学園に来たの!? 学院に行けばいいじゃない!! カイナル様が優しいから、我が儘言ってるんじゃないでしょうね!!」
(口悪いな……一応、伯爵令嬢だよね。数で脅せば、私が泣いて学園を去るとでも思ったのかな。ほんと、愚策だわ)
「カイナル様? さっきから気になっていたのですが、貴女はカイナル様に名前を呼ぶ許しを得たのですか? 得たとしたらいつですか? 確認しないといけませんので。あと……私とカイナル様の事に、無関係の貴女が何故口を出すのかしら?」
立て続けに質問してやった。別に、おかしな事を言ってないわ。常識の範囲内の事だけよ。
「平民の分際で、伯爵令嬢であるこの私に逆らうなんて!! カイナル様の番は私なの!! 横からしゃしゃり出て来て、許さないわ!! そういう身の程知らずには、お仕置きが必要ね」
その金切り声に反応したのは、私を取り囲むように立っていた金魚のフンたち。私の肩を乱暴に掴もうと、手を伸ばして来る。伯爵令嬢は勝ち誇った笑みを浮かべていた。
「身体に触れることは、止めといた方がいいわよ。まだ、文句だけなら許してあげる。でも、身体に触れるのは別」
一応、低い声で忠告はしてあげたわ。聞く聞かないは別だけど。
私の声に怯む、金魚のフンたち。でも、馬鹿な主はそれを許さない。
「生意気にも程があるわ!! それとも、お仕置きを望んでいるの?」
(そんなわけ、ないでしょ)
その台詞を合図に、金魚のフンたちは再度私に触れようとした。したけど、その手が私に触れることはなかった。
まるで、雷に打たれたかのように短い悲鳴を上げ、私に触れようとした金魚のフンは倒れたからね。
「だから、忠告したのに……カイナル様は狼の獣人。番である私を、なんの対策もなしに、一人学園に通わすわけないでしょ。付け加えるなら、さっきの会話と映像はこの魔法具で録画されてますよ、今も」
私の台詞に焦り出す、伯爵令嬢と雷に打たれていない金魚のフンたち。
「そ、そんな……私たちはちょっと、貴女に意見しただけですわ。それを大袈裟にして!!」
「勘違いしているようですが、私は何もしませんよ。録画を見て判断するのは、カイナル様自身です。弁明なら、カイナル様に直接して下さい、伯爵令嬢様。そこで伸びている人を連れて行ってあげたらどうですか。お仲間でしょ」
私はそう言い捨てると踵を返した。
(今から急いでも絶対間に合わないわね。でも、ズル休みは出来ないし、急がないと。後で、スノア王女殿下とアジル殿下に訊かれるわね)
明日から、クラスで伯爵令嬢の姿を見ることはないでしょう。
このピアスには、防御魔法が付与されているの。発動した時点で、彼女たちの運命は決まった。明確な悪意がある人が触れようとしたら、発動する仕組みになってるからね。他にも、色々付与しているみたいだし。全部は教えてもらってはいないけどね。教えたら引くと思ってるのかも、ほんと、超過保護だよね。
そんなカイナル様が、この件を放っておくわけないでしょ。可哀想だけど、人族の見せしめのために、何かしら厳しい処罰を下すと思う。これくらいのことでって、思うけどね。相手が悪かったとしか言えないわ。
でもせめて、退学だけは可哀想だから止めないと。少なくとも、伯爵令嬢と金魚のフンは努力して、この難関校に在学しているのだから。
罪と罰は比例しないといけないよね。バランスは大事だわ。
私はピアスに触れて魔力を流す。
「カイナル様、聞こえますか? 彼女たちを退学させないで下さい」
不服なのか、返事は返って来ないけど、ちゃんと伝わってるよね。




