早速、絡まれました
(緊張した〜)
やっと、入学式終わったよ。あとは、教室に移動してホームルームを受けたら終わりだよね。それにしても、さすが王立学園、想像を遥かに越えてたよ。
まず、ゴルディー公爵家の家紋が施されている馬車を降りた瞬間、一斉に、その場にいた全員が私を見たからね。
門を潜って、入学式が執り行なわれる講堂に行く間も、ずっと見られていた。私を見て、コソコソと何か囁き合ってる人も結構いる。大概が、初等部からの持ち上がりだから仕方ないよね。編入試験も、持ち上がり組からしたらクラス分け試験だし。
(それにしても、カイナル様の影響って……)
今更、嘆いても仕方ないよね。姿勢を正し、顔を上げ、胸を張って歩く。これだけで、人の印象が大きく変わるって執事さんが教えてくれた。言いたい奴には言わせておけばいい。気後れせずに、堂々としてればいいの。私に恥じる所なんてないんだから。
入学式の間も、チラリチラリと、私を盗み見ている人が多かった。針の筵の上にいるようで、居心地は最悪だったよ。中には、睨んでくる強者もいたしね。カイナル様が保護者席に座ってるから、余計に触発されたのかな。睨んでくるのは、ほぼ人族だった。亜人族は、遠巻きに様子を伺っている感じがしたよ。そもそも、カイナル様に喧嘩を売れる者はそうそういないよね。
そんな中でも、私に明らかな敵意を向けてくる、命知らずの亜人族がいたの。
ぜシール王国第一王女スノア様だった。
とことん、私が気に食わないようね。入学式終了後、早速絡まれたわ。事前に、絡まれるかもと注意を受けていたけど、早過ぎない!?
「ちょっと、待ちなさい!! そこの平民!!」
確かに、今は平民だけど、私にも親が考えて付けてくれた名前がある。かなりムカついたけど、相手は王女殿下、無視するわけにもいかずに渋々振り返った。
(絡まれる覚悟はしていたけど、場所をえらんでよ。新入生が大勢いる場でって、マジ勘弁してほしいわ)
「私のことですか?」
こういう感情的な奴には、感情を表に出さない方がいい。両方とも感情的になったら、収拾がつかなくなる。
「そうよ!! 貴女のことですわ!!」
目の前で腕組みをして憤慨しているスノア王女殿下に、私はカーテシーで答えた。
「平民である私に、声を掛けてくださるなんて、スノア王女殿下は慈悲深いお方ですね」
感情的にはならないとはいっても、苛ついているので攻撃ぐらいするわよ。
「わ、私のことを知ってますの!?」
吃驚するスノア王女殿下に、私は答えてあげた。
「我が番カイナル様から詳しく聞いております。スノア王女殿下とアジル殿下のことは」
特に、スノア王女殿下の名前を、わざと少し大きめに言ってやった。とてもいい笑顔で。
一応、絡まれた時の対処法を教えてもらってはいたけど、こうも効果があるとは思わなかったわ。一国の王女が冷や汗タラタラ流して言葉に詰まってるの。なんか、可哀想になってきた。
「そ、そう、カイナル様から聞いているの、私のことを……」
「はい、詳しく聞いております。クラスも一緒なので、これからも宜しくお願い致します」
私は再度、スノア王女殿下に頭を下げた。
カイナル様の番だからといっても、私の身分は平民。
頭を下げるのは当然で、学園内とはいえ、対等に会話するのさえ本当は不敬罪にあたる。相手が王族なら尚更。それが許されているのは、私がカイナル様の番だからだ。
だからこそ、私の行動全てが、カイナル様の信用へと直接繋がる。カイナル様は、「俺の事なんて気にするな。学生を楽しめばいい」と言ってくれたけど、気にしないわけにはいかない。スノア王女殿下に対してもそう。確かに腹は立ったけど、毅然と対応する必要があった。舐められるわけにはいかないの。
数分後、固まるスノア王女殿下を慌てて回収しに来たのは、アジル殿下。
「悪いね、ユリシア嬢。スノアの暴走を許してもらえないかな」
(双子でも、お兄ちゃんって大変だね)
「スノア王女殿下は暴走などしておりません。楽しく会話をしていただけです」
そう答えると、アジル殿下はホッと胸を撫で下ろした。王族二人に、そこまで怖がらせるカイナル様って……ちょっと引くわ。
そもそもスノア王女殿下は、憧れのカイナル様の番が、私のような平民でちんちくりんだったことに腹を立てたみたい。そんな私に、クラス分け試験で負けたのが、余程悔しかったのね。因みに、クラス分け試験のトップは、ぜシール王国第二王子アジル様だった。
私的には、陰口を叩かれるよりは、スノア王女殿下のように直接言われる方が断然マシかな。
「なら、よかった。これから教室に行くのなら、一緒に行かないか?」
(えっ!? 王族の方々と!? 平民の私が!?)
断れないよね。悪目立ちしたくはなかったけど、今更だし仕方ないわね。
「光栄ですわ。是非、御一緒させて下さい」
笑顔を張り付かせ、そう答えるしかなかった。周囲のざわめきが、より一層大きくなったのは言うまでもないよね。




