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ヤンデレ狼の英雄様に、無理矢理番にされました〜それでは、デスゲームを始めましょうか〜  作者: 井藤 美樹


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ユベラーヌの最後


(裁判長の台詞もだけど、完全に息の根を止めたのは、間違いなくカイナル様ね)


 精密に計算し、その通りに持っていった……よく分かったでしょ、ユベラーヌ、カイナル様は貴女が夢見た王子様ではないのよ。


「これで、シアに手を出したらどうなるか、皆もよく理解しただろう」


(期待を裏切らない台詞ね)


 他国の王女を、ここまで容赦なく、大勢の人の前で合法的に最下層まで叩き落としたのだから、余程の事がない限り、私に手を出して来る者はいないでしょう。当然、カイナル様にも。ここまで、番に手を出す恐ろしさを、まざまざと見せ付けたのだから。


 まぁそれでも、手を出して来る勇者がいるとしたら、脳内お花畑か、自分を過大評価し過ぎている者だけかな。少なくとも、今私たちの周りに、ユベラーヌ以上の人はいないから、ひとまず大丈夫でしょ。それでも、カイナル様は心配した。


「……内外に、ですね」


【公開裁判】にした背景の一部に、こうした意図があるのには気付いていた。


「ああ。それに今回も、シアが矢面に立ってくれた。立たせてしまった事が歯痒くて、まだ納得出来ていないが……とても嬉しくて、胸が温かくなる。俺は愛されているんだな」


 カイナル様は、心底幸せそうに破顔する。


 言葉にされるとすごく恥ずかしいけど、自分の大切の人が幸せそうに破顔する顔を見て、私の心はほんわかと温かくなった。その温かさを、私は護りたかったの。その笑顔を護りたかった。


 ユベラーヌの事は大嫌いだけど、同情はするわ。だって、今の貴女は完全に当て馬だよね。他者を利用し、踊らせ、とことん使ってポイ捨てしてきたのに、最後の最後、貴女はカイナル様の手で利用され、尊厳さえ踏み(にじ)られ、ゴミのように捨てられる。心底、哀れな最後ね。


(でもね、因果応報じゃない)


 散々、今まで自分がしてきた事でしょ。それが、我が身に返ってきただけ。


 人を好きになる気持ちは分かるし、その人に恋人や番がいても諦められなくて、好きな気持ちを抑えきれない事もあると思う。その事を責めたりしないわ。人を想うのは自由だから。


 ただね……やり方が、どうしても許せなかった。そして、私の大切な番を利用しようとしていた事も許せなかった。


「大切な人を護るのは、種族は関係ありませんから」


 確かに、私はユベラーヌの事が許せなかった。カイナル様を護りたいと思った。とはいえ、打算があったのも事実。私の存在を他者に明確に認識させるために利用したの。


(……副会長の言う通りね、私とユベラーヌは似ているわ)


 でもね、後悔はしていない。


 身分と種族――


 それだけで、他者は私という存在を勝手に解釈し、優劣を付けた。カイナル様やコルディー公爵家の過保護も拍車を掛けたわ。


 亜人族の根本は弱肉強食。


 今までの騒動の原因は、私を圧倒的弱者、底辺だと思われていたからだ。そんな私が、最強の男の番になった。それが認められなくて、私から奪い取ろうとした。そして、それが許されると勘違いした。


 私はずっと考えていたの。正式に婚約を発表する前に、その認識を改めさせたいって。日を追う事に、改めさす必要性を強く感じていったわ。


 カイナル様のために――


 カイナル様の運命の番、ゼシール王国王女。その装備品を脱いでも、戦えるって事を証明したかったの。ただの弱者じゃないと言わしめたかった。この場を逃したら、次はないって事ぐらい分かっていたからね。


 絶好の機会を逃せない。


 そう考え行動した私は、カイナル様と同様、ユベラーヌをとことん利用した事に変わりはないわね。


「……そうだな」


 カイナル様は、なんとも言えない顔で笑った。


(自分が護りたい気持ちと、護られて嬉しい気持ちが拮抗してるのね。ほんと、分かりやすい)


 今は、それで十分。護られて嬉しいって気持ちをカイナル様は知ってくれた。


「カイナル様、そろそろ判決が出ますよ」


 一時間も掛からない裁判。


 ユベラーヌの罪は明らかだったからね。


 一応、弁護人もいるけど、それは裁判を円滑に進めるための飾り。検事は一方的に罪状を読み上げ、証拠を提示していく。


 そもそも、使用不可の禁術を使用しただけで極刑は決まっているのだから、他の罪は添え程度よね。まぁその中に、王族の殺人未遂が含まれているけど。


「被告人ユベラーヌ、顔を上げなさい。今から刑を言い渡す。主文、被告人を犯罪奴隷とし、鉱山で三十年働かせる事とする。その後、王都を引き回しの上、極刑と処す」


 ユベラーヌは微動だにせず、ただ項垂(うなだ)れながら一点を見詰めていた。


(……簡単に死なせなかったわね)


 妥当な判決だと思う。禁術以外の刑も考慮された上の判決ね。


 裁判長が閉廷を宣言し退出する。書記官も続いて退出した。ユベラーヌは項垂れたまま、副団長たちに両脇を抱えられ、半ば引き()られるように退出する。


 この後、裁判長立ち会いのもと、別室で奴隷紋が刻まれる。


 決して消える事のない、奴隷紋。


 それは、のたうち回る程の苦痛だと聞くわ。悲鳴を上げ、気絶してしまう人もいるそうね。


 気絶しても、目を覚ませば、待っているのは鉱山での発掘作業。でもユベラーヌは女、危ない発掘作業よりも……そこまで考えて、私は考えるのを止めた。




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