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ヤンデレ狼の英雄様に、無理矢理番にされました〜それでは、デスゲームを始めましょうか〜  作者: 井藤 美樹


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最終決戦の始まりです


「ゼシール王国第二王女殿下ユリシア様、白狼の英雄カイナル・ゴルディー様、ご入場です」


 重厚な扉が左右に開き、高らかに宣言された私は、カイナル様にエスコートされ拍手の中入場した。


「ほぅ……」と、あちこちから感嘆の声が上がる。


(これって、間違いなく、カイナル様を見て上げている声だよね)


 カイナル様、女子の私から見ても、かなり麗しいからね。最強の武人なのに、所作は完璧。優雅で流れる動きは、男女問わず惹き付ける。五年しか貴族教育を受けていない私のような、付け焼き刃とはまるで違うからね。


 ましてや、超美形だし、筋肉モリモリじゃない。着痩せするタイプね。常に、色気マシマシ状態。人の目を惹き付け、釘付けにするのは当然だよ。(むし)ろ、ならない方がおかしい。


(最低限、カイナル様とゼシール王国に泥を塗らないようにしないと)


 そのために、一杯勉強したからね。


 その決意が緊張になったのかな、身体を少し強張らせた私の耳元に、カイナル様が唇を寄せる。


 それだけで、またしても上がる感嘆と溜め息。今度は、それプラス小さな悲鳴も上がったよ。


「緊張しているシアも、可愛いな。このまま連れ帰って、()でたい」


(愛でたいって……)


 あまりにも直情的で、顔が赤くなる。亜人族は特にその傾向が強いから、人族の私は毎度反応に困る。そろそろ慣れてもいいのに、何年経っても慣れやしない。せめて、顔に出ないぐらいには鍛えたいと思っているけど、前途多難かな。


「それは駄目ですよ、カイナル様。このパーティーの主役は、私たちなのですから」


 微笑みながら、そう答えた時だった。


「認めませんわ!! 平民が!!」


 ヒステリックな叫び声と同時に、人(だか)りの一部が左右に移動し、声の主が姿を現す。


 私が着ているドレスの劣化版を着ている女は、髪の一部を青色に染めていた、貴賓室で見た時は、綺麗にセットされていた髪は乱れ、化粧もかなり崩れている。同行者もいない。


 私とユベラーヌのドレスを見比べ(さと)った者たちは、瞬時に、冷ややかでゴミを見るような目になっていた。


「……コーマン王女殿下、貴女は我が国と戦がしたいのかしら?」


 私は冷静に、感情を抑えて、事実だけを告げた。興奮した方が負けだって、以前、セリーシアお母様に教えてもらったから。


「戦!? 何、ふざけた事を!! 平民上がりの小娘が!!」


(この期に及んで、その言葉を言う!?)


 ユベラーヌの口から何度も出てくる、平民という言葉に、いい加減うんざりしてきた。同時に、少し違和感があった。


 その違和感をかき消すかのように、カイナル様が必死で抑えている殺気を、隣からヒシヒシと感じる。私が相手をするって断言していなかったなら、今頃、ユベラーヌは首チョンパされてるわね。


(……取り敢えず、このまま続けた方がいいわね)


「確かに、私は元平民ですわ。それを、隠したりはしていません。そもそも、ゼシール王国国王陛下、王族の方々、重鎮たち、そして議会において、認められ公表されています。つまり、貴女の発言は、我がゼシール王国を侮辱している事と同義です。おわかりですか? ましてや、永久に入国拒否をされているにも関わらず、北の塔を抜け出して、そのような格好までして、私たちの前に現れるとは……余程、開戦をお望みだと思いましたわ」


 私の発言にざわつく外野。大半は、私に対し賛同する声だった。ユベラーヌを「恥知らず」だと罵る者もいた。私は注意深く周囲に意識を向ける。


(やっぱり、何かおかしい)


「私は何も間違った事はしていませんわ!! 間違いを正しに来たのです!!」


 更に自分を追い込む発言に、私は眉を潜めそうになった。


 ユベラーヌはかなりの危険人物で恋愛脳ではあるけど、脳内花畑じゃない。彼女の今までの行動は、計算されたものだった。でも、今回は全くそんな気配がしない。恋に溺れて自分を見失ったと反論されれば、返せる言葉はないけど、でも……私の中の何かがそれを否定する。思い返してみれば、国境での件もそうだ。


(……まさか!!)


 私の脳裏にとんでもない考えが浮かんだ。でも、スッポリ()まってしまって否定出来ない。それが、狙いであり答えだと思う。


(もし、それを狙っていたとしたら、ほんと、恐ろしい人だわ……)


 私は気を引き締め、ユベラーヌに視線を合わせる。


「間違い? まさかと思いますが、カイナル様を自分の番だと、本気で思っていらっしゃるのですか!? コーマン王女殿下、貴女はとても勇ましい方ですね。ゼシール王国に戦を持ち掛け、愛の女神レシーナ様の神託に異議を申し出るなんて……私には怖くて、到底出来ませんわ」


 私がそう告げると、横に立っているカイナル様が、自分の色に染まった髪を手に取ると、愛おしそうに唇を落とした。


 外野から、再び感嘆と溜め息が。今回は、それプラス冷笑のオマケも付いていた。


 完全に、その場の流れは私に分があった。というか、ユベラーヌが私の前に姿を現した時点で、こうなる事は目に見えていた。


 だから、おかしいと気付けた。


 最初は感じなかった違和感。


 でも今は、これさえ、ユベラーヌの作戦だと気付けた。そう……ユベラーヌも私と同様に餌を撒いていたのよ。


(なら、絶対仕掛けてくる)


 そっち系の秘策を用意しているかもと思い、念のために対策を取っていてよかった。なるほど、だから、この場でも強気でいられたのね。


 外野は完全に私の味方。


(そろそろ、出す頃合いかな。でも分かってる? それを出した瞬間、貴女は終わるの)


 コーマン王国諸共にね――

 


 

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