表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤンデレ狼の英雄様に、無理矢理番にされました〜それでは、デスゲームを始めましょうか〜  作者: 井藤 美樹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/71

ピアス

幼児編終了。

次回から、学園編始まります。


「私が学園ですか……学院ではなくて」


 夢の話をしてから一週間後ぐらいかな、帰りの馬車の中で、カイナル様が「学園に通ったらどうか」と提案してきた。考えもしていなかった台詞に、吃驚して目を丸くする。


 てっきり、カイナル様は学院を薦めて来るだろうって思っていた。それでも、平民の私にとっては幸せなことだよ。


 なのに、まさかの学園入学。この前、私が夢の話をしたからだよね。


 ぜシール王立魔法学園は共学校で、将来領主になる人や、騎士や文官、王宮魔術師を目指す人たちが通うエリート学校。生徒の九割が貴族で、残り一割が平民なの。平民と言っても、商会や町長などの裕福層の人たちばかり。


 反対にアシール学院は、貴族様の番になった方や淑女教育、学園に落ちた人が通っているわ。ぜシール王立魔法学園よりかなりレベルは落ちるかな。でも、その分ゆったりとした校風だから、そこを目指す人も意外と多いの。ここも、共学校だよ。


「学院では、ユリシアの夢を叶えることは難しいだろ。さすがに、初等部を受験する時間はないが、中等部からなら十分時間がある。挑戦するなら、力を貸そう」


(学園か……悪い話じゃない。一級司書官を目指すなら、学園に通うべきよね。教育レベルが全く違うもの。でも……お金がない。私の家からじゃ到底通えない)


 考え込む私に、カイナル様が更に告げる。


「お金のことは心配しなくていい。家庭教師と学園の学費は、俺が払おう」


「そこまで甘えていいんですか?」


 助かるけど、さすがに図々(ずうずう)しいよね。心が痛む。いくらカイナル様でも、気が引けるよ。


「構わない。ただ……お願いがあるのだが……」


(お願い? やけに言いにくそうね。まさか、抱っことスリスリ、クンクン以上のことがしたいの!? いやいや、さすがにそれは駄目だよ!! 犯罪だと思う!! っていうか、私の心臓が保たないよ〜)


 声に出さずに叫ぶ私。かなり、パニクってるよね。


「…………お願い……ですか」


 少し声が震えてる。そんな私をよそに、カイナル様は頬を赤く染めながら軽く頷く。そして、私の左耳に優しく触れた。


「ここに、俺の色のピアスを着けてくれないか?」


 左耳にビアス――


 それは、正式に番契約を交わした証。


 番相手の瞳の色を心臓に近い耳に着けるの。白百合は番になることを許可しただけ。人族風に言えば、結婚を前提とした告白を受け入れた感じかな。ピアスは正式に婚約を交わした感じ。


「わかりました。それで、いいんですか?」


 平然と受け入れた私を見て、何故かカイナル様が慌ててるよ。


「……いいのか? ピアスを着ける意味を知らないのか……」


「それくらい知ってますよ。正式に番契約を交わすってことですよね」


「……抵抗はないのか?」


(何を今更なことを言ってるんだろ、この人は)


「抵抗して欲しいのですか? 抵抗しませんよ。外堀を完全に埋められてますし。それに、私がもし逃げ出したら、必ず捕まえに来ますよね。なら、受け入れますよ」


 あまりにも、淡々と仕方ない風に言ったから、カイナル様の表情が曇ってる。でも、ピアスを許可してくれた嬉しさも同居している感じかな。


 私はそんなカイナル様を見て、自然と口元が緩んだ。今度は驚いてる。ほんと、二人っきりになると、カイナル様ってコロコロ表情が変わるよね。なんか、安心する。


「カイナル様、私まだ子供なので、恋愛とかよく分からないんです。姉の恋愛小説を読んでも理解出来なかったし、胸が熱くなったりしませんでした。友達の中には、一目惚れしたとか言ってる子もいるのに……私は、そういう方面が人より(うと)くて未熟だと思います。そんな私でも、恋愛に興味がないと言えば嘘になります。その感情をいつ抱くのか分かりませんが、その相手はカイナル様がいいです。これから長い間、共に生活をするのだから、楽しい方がいいでしょ」


 いい機会だから、正直に胸の内を語ってみた。


(静かね、カイナル様。てっきり、飛び付いて来ると思ったけど……)


 予想外の反応なので、少し心配になって、カイナル様の顔を下から覗き込む。一瞬、息が止まったよ。


「えっ!? 何、泣いてるんですか!?」


 持っていたハンカチを、カイナル様の目元に慌てて当てた。


「…………ずっと、嫌われていると思っていた」


 私の手を掴み、小さくか細い声で、カイナル様は吐露(とろ)する。


「嫌ってましたよ、始めは」


 嫌いって言葉に、カイナル様の身体がビクッと震えた。構わず、私は続ける。


「でも……この三か月、間近でカイナル様を見て考えが変わりました。近くで見ていれば、カイナル様の人柄ぐらい分かりますよ。ただ、拉致監禁したことは一生許さないけど」


 ここまで踏み込んで、自分の気持ちを素直にさらけ出したことはなかったね。そんなことを考えていたら、馬車がタイミングよく停まった。


「それでは、明日から(あらた)めて、婚約者として宜しくお願いします」


 そう告げてから、私は馬車を降りた。降りた後振り返る。この時の私は、とても良い笑顔だったと思う。カイナル様が(ほう)けていたから。


「…………俺の番は尊すぎる」

 

 ポツリと呟やかれた台詞は、家路を急いでいた私には届かなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ