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ヤンデレ狼の英雄様に、無理矢理番にされました〜それでは、デスゲームを始めましょうか〜  作者: 井藤 美樹


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諦めたくないから、私は言葉を紡ぐ

ヤンデレ度★★★★★


 執務室に連れ込まれて、いつもの定位置に私を座らせ、後ろからギュッと無言で抱き締めてくるカイナル様。そして、スリスリと顔と頭を擦り付けてくる。


(まるで、匂い付けしているみたいね)


 いつもより、念入りだ。リアお姉様の匂いの上書きをしているんだと思う。


 元はと言えば、リアお姉様がカイナル様を可愛いからって突き過ぎたせいだよ。突きたい気持ちは分かるけどね。普段、カイナル様の表情は変化が乏しいの。だから反応も薄いんだけど、私が絡むと途端に表情が豊かになるんだよね。そこがリアお姉様は可愛くて、からかって遊んじゃうの。これも、家族ならではのほのぼのエピソードだよ、普通はね。


「シアは、危機感がなさ過ぎる!!」


 カイナル様にとっては、ほのぼのエピソードじゃないの。開口一番、怒られた。


 前から何度も言われ続けてる。既に耳タコ状態。ほんとにもう……相手、実姉じゃない。ほんと、心底呆れるよ。

 

 要は、私がリアお姉様に懐いているのが嫌なんだと思う。狼人族って、番に対しての執着が並外れて強いのは知ってるし、ある程度理解はしているつもり。だとしても、リアお姉様に対しては納得出来ない。


(納得出来ない事を受け入れるのは嫌)


「……危機感がない? それは、どういう意味ですか? 誰に対してですか?」


 出来る限り、平静を装いながら訊いた。


 無表情のカイナル様と間近で対峙するのは、とても心臓に悪いよ。でもね、はっきりとさせときたいの。せっかく仲良くなったのに、カイナル様に配慮して、リアお姉様と交流がもてなくなるのは嫌なの。


 それは、絶対、ゴルディー公爵家の皆が悲しむ事になるって分かっているから。


 番を独り占めにしたいのは理解できるよ、でもね、ものには限度があるの。それを、カイナル様には知ってほしい。


「番がいない者に近付き過ぎだ」


 この台詞も何度も聞いた。


 学園で、クラスメートと普通に話をしていても距離が近いとか言われるし、両殿下にも随分気を使わせているのも知ってる。二人は何も言わないけどね、絶対、何かしらカイナル様から注意を受けている筈。


 そして、今度ははリアお姉様に対してだよ。


 色んな事が頭を(よぎ)って、なんかムカムカしてきた。


「それは、リアお姉様の事でしょうか? もしそうだとしたら、カイザルお父様とセリーシアお母様以外の家族とは付き合うな、会うなという事ですね。ならば、私はカイナル様のお考えを真っ向から拒否致します」


 私は、今後もずっと、リアお姉様と仲良しでいたいの。少し個性的な所があるけど、とても温かくて、強くて、賢くて、優しくて、尊敬し学べる人だから。


 そして何より、カイナル様の大事な家族だもの。


「拒否するだと――」


 地を這う声がした。私を掴む手に力が入る。


(地雷を踏んだわね。まぁ、自分から踏みに行ったけどね)


「……そもそも、今回の件はカイナル様が発端でしょう。それが、私に飛び火した。カイナル様の手で鎮火出来ないから、リアお姉様に鎮火を任せ、後片付けまでしてくれたのですよ。なのに、その件に対し、労いの言葉やお礼の言葉を述べる事なく、私に近付くなですか……番に対する執着心は理解していますが、それ以前に、人としての礼儀を忘れてしまったのですか?」


 私の正論に対し何も言えなかったカイナル様は、無表情から険しい表情へと変え、私を掴む手を緩めてくれた。


(これで、取り敢えず、監禁とリアお姉様との接近禁止は回避されたわね)


 確か……この後、仕事があるって言ってたよね。この状態のままだと、周囲の人が働き辛いかな。なんせ、大陸一最強と呼ばれている英雄様が、圧を放ちながら仕事をするわけだし。カイナル様、根が真面目だから絶対さぼらないしね。 


 しょうがない。私は小さく溜め息を吐いてから、カイナル様に声を掛けた。


「ほら、時間がないですよ。一緒に行ってあげますから」


 吃驚して手を放したので、私はカイナル様の膝から下りると、右手を差し出した。


「えっ……」


 思いもしなかった私の行動に、カイナル様は凄く間抜けな顔をしていた。その顔を見れただけで、私は機嫌が良くなる。


「これから一緒に、リアお姉様の所にお茶をしに行きましょう」


 にっこりと微笑むと、カイナル様は見開き「……ああ」と小さな声で答えてから、私の手を握ってくれた。


(執着されて、閉じ込められるのは嫌)


 それは、私にとってバッドエンド。ゲームセットなのだから。


 亜人族と人族は違う。でもね、亜人族の習性を頭から否定して認めないのは愚かだと思うの。とはいえ、異種間同士の番で、相手が人族だと、亜人族から憐れみの目で見られるのは事実。


 ユベラーヌの手紙にもあったように、最初はよくても、耐え切れなくなって逃げ出そうとする人族が一定数いるのは確かだからね。そして断腸の思いで、それを受け入れる亜人族もね……


 愛の比重が、人族とはかなり掛け離れているから、受け入れられなくなって手を放し、番を壊したくなくて、自分の心を壊してでも手を放す。


 極端だと思うけど、実際、そのパターンは多いの。だから、恋愛小説の悲恋話は異種間同士の話が多いわ。


 耐え切れないから、諦める。


 諦めるから、言葉を(つむ)ぐ事をしなくなる。


 だから私はそれらを理解して、真っ向から否定してやる。


 私はね、諦めたくないの。カイナル様の番として生きて行くのを決めた時から。最初は、監禁さえ回避出来るように振る舞う事に重点を置いていた。


 今は違う。


 方向性は百八十度変わったの。話すのが得意じゃないけど、必死で言葉を探し紡ぐ。手を差し出す。そして、一緒に歩くの。


 カイナル様の番である事を、今は大事に、誇りに思っているから。ユベラーヌが言っていた悲恋には、絶対ならない。




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