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ヤンデレ狼の英雄様に、無理矢理番にされました〜それでは、デスゲームを始めましょうか〜  作者: 井藤 美樹


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リアお姉様ご帰還です

ヤンデレ度★★★★☆


 報せ通りに、今日の夕方、リアお姉様が物凄く満面な笑みを浮かべながら帰って来た。それも、スキップしながら。大人がスキップするの始めて見たよ……今どき、子供さえしないのに。


(まぁ、それだけご機嫌って事かな)


 かなり、鬱憤(うっぷん)か溜まっていたからね。ほんと、少しは解消されて良かったよ。ここまで、リアお姉様に嫌われたのはユベラーヌの自業自得だよね。


 家族や部下を特に大切にする狼人族に対して、作戦無視したあげく、自分が席を外している間に、大切な部下を危険に晒す命令を下したユベラーヌを許せるわけないでしょ。ましてや、自国の兵にも同じ事をしていたようだし。


 当時の記録を読んだけど、到底許せるものじゃなかった。早く終わらせて、カイナル様とお茶をしたいからって、マジ馬鹿げてる。正気を疑うわ。もし、どうしてもその作戦を取らないといけないなら、他にうてる手がなくなった時だけだよ。


 いくらリアお姉様が英雄の姉であっても、武功を立てていたとしても、相手が他国の王族なら、抗議は出来ても責任を追及する事は出来ない。とても、歯痒かったと思うよ。必死で怒りを抑え込んでいたんだと思う。なのに性懲りもなく、また同じ理由で、自分が大切にしている群れに、ユベラーヌは魔の手を伸ばしてきた。


 リアお姉様の心中は、激しく荒れ狂っただろう。


 今回、ユベラーヌが墓穴を掘ってくれたから、リアお姉様は鋭い牙で敵の喉元を喰らいつく事が出来た。


(実際は、喰らいついてはいないけどね……)


 でも、政治的な意味で、致命傷一歩手前までの手傷は負わせる事が出来た。今回連れて行った部下は、皆、ユベラーヌの無茶な作戦変更で被害を受けた者ばかりだと後で聞いた。意趣返しは出来たと思う。


「リアお姉様、おかえりなさいませ」


 にっこりと微笑むながらお出迎え。背後には、不機嫌そうなカイナル様が。


(温度差あり過ぎ……)


「ただいま〜!! ユリシア、私の勇姿見てくれた〜!? 皆の仇、ちゃんと討ってきたよ。褒めて!!」


(いや、誰一人死んでないけどね)


 声に出さずに突っ込む。本当に、褒めて欲しそう。尻尾が凄い勢いで左右に振っているし、耳も真横にペタンと倒れている。これは撫でなくてはいけないよね。っていうか、撫でさせて下さい!!


「ありがとうございます、リアお姉様!!」


 本能には抗えませんでした。


 私の背後で、とんでもない圧を感じながら、モフります。頭と耳の付け根を。家族だし、群れの一員だから大丈夫だよね。リアお姉様も気持ち良さそうだし。もう少しモフろうとしたら、肩を掴まれ引き寄せられた。


「お役目ご苦労様です、姉上」


 今から、一人殺ってきます、くらいのテンションで実の姉を出迎えてるよ。


(怖っ!!)


「ただいま、カイナル。そんなに怒らないの、姉に焼き餅なんて、本当に私の弟は可愛いわ」


 この状態のカイナル様を可愛いって言えるのは、ゴルディー公爵家の皆くらいね。


(私には無理〜)


 頭ポンポンまでしてるよ。沈黙のカイナル様から殺気が……夏なのに、寒っ。


「大の大人を可愛いと言うものではありませんよ、姉上」


(敬語が続いてるよ〜これ、完全に激怒パターン)


 普段は、もっと気さくに話しているからね。


「可愛いを可愛いと称して、何が悪いの?」


(リアお姉様、強っ。完全に遊んでるよね)


「リ、リアお姉様、疲れたでしょ。身体を休めませんか? お風呂を用意していますから、足を伸ばして、ゆっくりと疲れをとって下さい」


 なんとか、口を挟めたよ。私も少し強くなったよね。


 別にカイナル様を助けたわけじゃないよ。ましてや、リアお姉様の後ろにいる騎士の皆さんを助けたわけじゃない。明らかに、ホッとした顔をしてるけどね。ただ……この圧、心臓に非常に悪いんだよ。


「ユリシアがそう言うなら、しょうがないわね。なら、一緒にお風呂に入るわよ」


 リアお姉様がさも当然のように告げたと同時に、私に手を伸ばしてきたが、いち早く、カイナル様が私を横抱きにしていた。


 反射的にカイナル様の顔を見る。途端に、ピシっと身体が固まった。歯(ぎし)りが聞こえるのに、正直は無表情。違和感あり過ぎて、別の意味で怖くなった。


(この感覚、久し振りだわ……)


 カイナル様って、怒りが沸点を越えたら無表情になってたよね。


「これ以上のお(たわむ)れは止めて頂きたい」


(もうこれ、完全に殺っちゃった後の声だわ)


「分かったわ。今回は、これで手を引いてあげる」


 さすがに、リアお姉様もカイナル様が本気で怒ってるって分かったみたい。だから、私に伸ばしていた手を引いた。


 カイナル様はキッとリアお姉様を睨み付けると、そのまま執務室に運ばれた。これが、寝室じゃないだけマシかな。


 もう少し早く引いて欲しかったよ、リアお姉様。それに、私に丸投げしないで下さい。


(魔王の相手、手に余るよ〜!!)


 

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