毒花よりも食虫植物らしいです
私がゼシール王国第二王女になった件は、瞬く間に学園内に広がった。
正式に公示はされてはいるけど、公の場で宣言されていないので、半信半疑の者が多い。特に、下位貴族や平民はただの噂だと認識している人が大半かな。まぁ、これが普通の反応だよね。
でも、高位貴族は違った。呼吸をするかのように受け入れられたわ。それには、私の方が吃驚したよ。呆気に取られたね。なので、副会長に訊いてみた。すると、「亜人族の本能だからしょうがない」と苦笑しながら言われたよ。
全て本能で終わらせ納得出来る事に、私の方こそ苦笑する。
三か月経った今も、学園内は変化はなかった。
この件に関して、高位貴族と下位貴族、平民の差が激しいけど、私は敢えて放置していた。その方が都合がいいからね。現に、王城に急遽、お兄様二人を除くコルディー公爵家全員が呼び出されたから。全員、理由は察しが付いていたよ。
(やっと、実を結んだようね)
放置していたのはこのためだった。
「コーマン王国第二王女殿下が、痺れを切らして表に出て来たみたいですね」
私は小声で告げる。
一応、王城内の回廊。それも、近衛騎士が先導している場所で、一国の王女を呼び捨てや腹黒女って言えないからね、配慮はするよ。
「だろうな」
「それで、どう仕掛けて来たのか……気になるわね」
心配そうな口調だけど、表情は正反対だね、リアお姉様。とても良い笑顔だよ。カイナル様はニヤリと含みがある顔だね。一見、違う笑顔だけど、同じように見える。姉弟だね、ほんとよく似てるわ。
「あの手紙の件で拒否されたにも関わらず、数度同じように、私に接触しようとしてきましたからね。その度に私は拒否し、使者と会うことさえしなかった。さぞかし、腹が煮えくり返っているでしょうね」
溺愛されてチヤホヤされる事に慣れているお姫様は、拒否される事に慣れていない。というか、拒否さえされた事さえないだろう。カイナル様と私以外には。
ましてや、公式ではなく、ユベラーヌは非公式に接触するよう命じていた。非公式なら、ゼシール王国は非難されない。そもそも、非難すべきはゼシール王国側。だってそうでしょ。一国の王女に非公式で不躾に何回も使者を送り続けているのだから。噂が真実とは知らずにね。
(思い込みと偏見って、ほんと怖いわ)
「いい気味よ。でも、これは序章よね、ユリシア」
悪戯っ子のような顔をして、リアお姉様は確認してきた。
「ええ。リアお姉様には随分待たせてしまいましたね」
おそらく、色々な理由を付けて、直接乗り込んで来る可能性が高い。そうでなければ、ゴルディー公爵家全員の登城とはならないからね。
(遂に、その顔が拝めるのね)
顔を引き締めないと、黒い笑みが出そう。
「そんな事ないわ。ありがとう、ユリシア」
「お世話になったリアお姉様に、ちょっとしたプレゼントです。喜んで貰えて嬉しいです」
物騒な会話を、近衛騎士は聞かないふりをしてくれている。以前出会った侍女とは違い、教育が行き届いてるね。
「ユリシアって、ほんと良い子」
私とリアお姉様が仲良くしてると、カイナル様は少し面白くなさそう。表情は変わらないのに、尻尾の揺れがなくなるの。その分、後でスキンシップが長くなるけどしょうがないよね。
「ありがとうございます、リアお姉様。……それにしても、性格にかなり問題を抱えていても、頭がキレて、実力が飛び抜けていれば、発言権は出てきますからね。溺愛されていれば尚更です。それに、突き抜ければ突き抜ける程、妙に人を惹きつけますからね。致死率の高い毒花程、花は綺麗といいますし」
ただ突き抜けるだけでなく、ユベラーヌの場合、彼女の後ろ盾が更に相乗効果をもたらした。
「あ〜それ、なんとなく分かるわ。でも、腹黒女は毒花じゃなくて食虫植物ね。それも、とても良い匂いを放って、懐に誘うタイプの。そして、頭からパクリ」
少しだけ、リアお姉様の表情が真面目なものになった。
(呼び捨てにしないよう配慮したけど、意味なかったわね)
だから、私もついポロリと口から出ちゃたよ。
「それで、捕食された哀れな餌は、夢心地のまま食われるのですね。捕食されるのが虫ではなく、人ですから、それはもう魔物ですね。だとしたら、私たちは魔物を討伐する冒険者と言えますね」
ちょっと言い過ぎたかな。虫から魔物にグレードアップしたからいいよね。
「なら、私の得意分野ね」
「俺もな」
確かに、この二人なら魔物討伐は難しくはない。なんとも心強い最強コンビだけど、今回も前衛にまわりたいかな。回れたらだけど。




