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ヤンデレ狼の英雄様に、無理矢理番にされました〜それでは、デスゲームを始めましょうか〜  作者: 井藤 美樹


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耳と尻尾は正直です


 見せてくれないなら、見せてくれるまでお願いすればいいと意気込んだものの、全て不発に終わってる。ついさっきも断られた。


 私、今日王城で頑張ったよね。試験も合格したし、ご褒美貰ってもいいよね。なのに、「まだ駄目だ」の決まり文句。その度に同じ理由を聞かされる。納得出来ない理由をね。


 家族以外に獣体を見せる事は、獣人族にとって裸を見られる以上に恥ずかしいとは聞いた。なので、正式に番契約、私の場合は婚姻と初夜を済ませた後じゃないと駄目らしい。


 私にしたら、それこそ今更だよね。確かに、まだ婚姻はしていないし、そういう行為はしてないよ。だからといって納得出来ない。


(そもそも、それ自体おかしくない? 囲うだけ囲って、まだ足りないって何よ?)


 がっちりと、外堀をこれでもかって程埋められたのに、逃がす気なんてないのに、決まりだからって一方的に断わられて、正直、信用されてないのかなって不安になる。それとも、人族には理解し難い、獣人族特有の考えなのかな。


「……いきなりの展開で疲れたか? だが、事を速やかに執り行いたかった」


 おずおずと、カイナル様はそんな事を言ってきた。溜め息吐きたくなる。


(そこまでして、獣体になりたくないのね)


 不機嫌な理由分かっているくせに、敢えて違う事を言ってくるカイナル様に対して、これ以上私は何も言えない。私はカイナル様から視線を外し、背を向けた。


(呑み込むしかないのね)


 なら、話を合わせるしかない。


「………………王族になった事に関しては、納得しておりますのでご安心を。事情と経緯は理解していますから、あまり気にしないで下さいませ」


 多少口調が貴族令嬢パターンになっても、声に元気がなくてもしょうがないよね。この方法でしか、この件に関して不満を表現出来ないから。


 とはいえ、ユベラーヌと張り合うには強力な手札が必要だったのは事実。私が王女になったことで、最強の手札を手に入れる事が出来た。


「どうして、そんな窮屈な話し方を……やっぱり、怒っているのか……」


 フサフサの耳がペタンと横に倒れている。尻尾も垂れたまま。表情があまり変わらないカイナル様が、唯一素直な所。


(ほんと、ズルい)


 だから、腹立たしい。


「怒ることも許してないでしょ。馬鹿じゃないんです、分かりますよ。本当は獣体を見せたくないのでしょ。私が口にしなければ、一生見せるつもりもなかったくせに。分かりました。もう口にはしません、これで宜しいですか」


「シア……」


 困惑した声で、カイナル様は私の名前を呼ぶ。


「あと、身分については、散々愚痴っていましたから。それを、どうにかしようと考えてくれた結果なので、怒りはしません。但し、これからは私にも決定権を下さい。何も知らない所で決まるのは嫌です」


 一方的にそう告げると、私は固まるカイナル様を残して部屋を出て行った。


(はぁ〜やっちゃった)


 私が逃げる場所って限られてるよね。図書室に来た私は手近にあった魔法書を手に取ると、椅子に座った。


「ユリシア、どうしたの? 集中出来てないようだけど……やっばり、精神的に辛いの」


 本に集中出来ない私に、リアお姉様が話し掛けてきた。騎士服じゃなくて、いつもの侍女姿夏バージョン。


「いえ、王族になった事に関しては大丈夫です。腹を決めてますから……」


 開いていた魔法書を閉じた。


「じゃあ、何が心配なの? お姉様に教えてくれたら嬉しいかな」


(ほんと、リアお姉様は優しいな)


 今日も、早めに仕事を切り上げて帰って来てくれたって知ってるから。


「……カイナル様が、獣体を見せてくれないのです。結婚して、夜を共にしてからじゃいけないと言われて、ずっと断わられています」


 これはボヤいているだけ。リアお姉様に言っても、カイナル様の意志は変わらないだろうし。無理矢理なのは違う気がする。強制はしたくはないの。


「あ〜それは、私にはどうにも出来ないわね。ただ……カイナルの気持ちは分かるわ。特に異種間だしね」


 異種間って言葉が私の心を(えぐ)る。


「……どういう意味ですか?」


「分かりやすく言えば、獣人族の間でも、苦手な昆虫や動物があるのよ。人族はその点が特に謙虚だからね。ユリシアにも苦手な生き物があるでしょ」


 そう言われて、苦手な生き物が頭に浮かぶ。


「蛇とかゴキが苦手です」


「さすがにゴキはいないけど、蛇の獣人は存在するわ。もし、ユリシアが蛇の獣人だったら、獣体を蛇が苦手な番に(さら)せる?」


 そう訊かれて、私は首を激しく横に振る。蛇獣人であることも知られなくない。そう考え行動するだろう。同時に、何故、カイナル様が頑なに獣体を見せてくれなかったのか、理解出来た。


(怖かったんだ……ほんと、私って馬鹿で最低だよ)


 一方的な見方しかしていなかった。想像してなかった。嫌な理由を考えようともしなかった。そんな自分に、腹が立って涙が出てくる。


「それに、通常の大きさならまだ許せても、獣人族の獣体は最低三倍の大きさだし。番に逃げられた事例もあるからね。特に異種間の場合、躊躇(ちゅうちょ)する獣人族は多いわ……獣体を晒すのは恥ずかしいけど、それ以上に勇気がいるのよ。番に怖がられたり、嫌がられたら立ち直れない。それでも離れられないから、怖がらせたくなくて近付けなくなる。そうなるくらいなら、始めから晒さないと考えるわね」


 リアお姉様はそう助言してくれた。


 私は行儀作法無視して、派手な音を立て椅子から立ち上がると、リアお姉様に「ありがとうございます」とお礼を言い、図書室を出て行った。


 カイナル様に謝るために。


 獣体を見るのは諦めてないよ。でも、それを口にはしない。追い詰めたりしない。私がカイナル様と同じように愛せるようになったら、いつか見せてくれるかもしれない。


 それを、ゆっくり待とう。


 


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