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ヤンデレ狼の英雄様に、無理矢理番にされました〜それでは、デスゲームを始めましょうか〜  作者: 井藤 美樹


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リアお姉様にご提案です


「シア、お帰り」


「ユリシア、お帰り!!」


 エントランスで出迎えてくれたのは、すっごく不機嫌そうなカイナル様と、侍女の格好をしたテンション高めのリアお姉様。


(そう、そのまさかだよね〜)


 てっきり、義両親の専属侍女だって思っていたのに、全てが終わって蓋を開けてみれば、リアはカイナル様の実姉で魔術師師団長だった。一応魔術師だけど、剣のレベルも体術も達人レベル、そりゃあ、強いはずだよ。因みに、侍女服はリアお姉様の趣味。ゴルディー公爵家の侍女服と私の私服のデザインは、全部リアお姉様が手掛けてるんだって。お揃いの侍女服もクローゼットに入ってる。


(カイナル様の事、平気で馬鹿って言ってもお咎めない筈だよ)


 本人曰く、可愛いのに飢えていたんだって。超美人で背が高くスタイルが良かったら、可愛い服は一着もなかったらしいよ。大きくなって、師団長にまで出世したら、尚更可愛い物好きを公表出来なくなって拗らせた結果、屋敷で侍女服を着たり、縫いぐるみなどの可愛い物専用コレクション部屋を作ったらしい。


 そんなリアお姉様にとって、人族の小さな女の子は庇護欲からか、可愛くてしょうがないみたい。隙あらば、私に構おうとしてくるから、カイナル様の不機嫌さは増していく。エントランスでのお迎えも、五回に一回くらい一緒なのが嫌で仕方ないみたいね。口にはしないけど、別にそれくらいはいいと思うけどね。


「シアの顔を見たのだから、もう消えろ」


(実の姉に向かって消えろって……)


 言われたリアお姉様は全然気にしてない。番を持つ亜人族は皆、似た反応をするらしいから。


「心配だったんだから、邪険にしないでよ。自分が世界の中心だって勘違いしている腹黒女から、接触があったって聞いたら心配するわよ」


(情報早っ!!)


 盗聴用の魔法具を忍ばせているカイナル様なら、まだ分かるけど、リアお姉様が知っているなんて驚いたよ。


 もしかして、今回はリアお姉様の配下の人が警備担当してくれたのかな? 王都に遊びに行く時は、必ず警護が付くからね。今までは、カイナル様の配下の人だったけど。


「リアお姉様は、コーマン王女殿下の事を知っているのですか!?」


 リアお姉様はユベラーヌの名前は口に出していないけど、誰を指してるか誰でも分かるよ。


(立場上、面識があってもおかしくはないわね)


 カイナル様に抱っこされて運ばれている途中だから、リアお姉様より少し目線が上。よく頭を撫でてくれるのだけど、カイナル様が一緒だからお預けみたい。ちょっと寂しいかな。でも今は、ユベラーヌの事をより詳しく知るのが先。


「知ってるわよ!! あ〜マジで、今思い出しても腹が立つ!!」


 グルルとリアお姉様は唸りだす。


(殺気がダダ漏れだよ、リアお姉様……一応、公爵令嬢だよね)


「……シア、済まない。こいつ、一度、作戦無視された挙げ句、自分の団員を囮にされた事があってな。幸い死亡者はいなかったが、怪我人が多数出た」


 カイナル様が険しい表情をしながら教えてくれた。その横で、リアお姉様は憤慨している。


「問い詰めたら、あの腹黒女、なんて言ったと思う!? 『結果良ければ、全て良しではありませんか。別に、貴女様に怪我一つないのですから。団員の一人や二人失っても、直ぐに補充出来ますでしょ』って言ったのよ!! 私の団員は、取り換えのきく駒じゃないのよ!!」


(それは……さすがに酷い)


 言葉が浮かばないわ。


 もし思ったとしても、普通口にはしない。少なくとも、手に入れたい男の姉に向かって言う台詞じゃない。なのに、その台詞を平然と吐けた。


 ということは、罪悪感の一欠片もないって事よ。あまりにも命を軽視している。屑以下だわ。


「シアに聞かせる話ではないな」


 カイナル様は、私に仕事の話をしたがらない。血なまぐさい話を聞かせて、耳を汚したくはないからだって。私は別に構わないんだけどね。今回は、偶々成り行きで聞いただけ。


 言葉を失っている私を見て、これ幸いとカイナル様は話を打ち切ろうとしてきた。


 だけど、私はそれを許さなかった。口を開くとカイナル様の足が止まる。


「…………戦場の事は、ズブの素人だから分かりませんが、囮にするのなら、自国の兵士がするべきではありませんか? そもそも、作戦無視ってあり得ませんわ。それに、人の命を駒と称する事自体、不愉快極まりないです。まぁそんな考えの持ち主だから、人の人生を簡単に狂わす事が平気で出来るのでしょう。リアお姉様の話を聞いて、改めて、コーマン王女殿下は屑だと理解しました」


 リアお姉様は、怒りを表に出すタイプ。でも、私は表には出さない。代わりに出すのは、凍えるような低い声。


(決断し、実行したのは、元侯爵夫人と元令嬢。だとしても、それが、そう狂うように誘導されていた結果だとしたら、それは)


 奥歯を強く噛み締める。私の怒りを目の当たりにしたカイナル様とリアお姉様は、唖然とした表情で私を見ていた。


「……リアお姉様、ここに一通の挑戦状があります。一矢(いっし)(むく)いる気はありませんか?」


 一時間程前に受け取ったばかりの手紙をチラつかせながら、私はニヤリと笑う。そして、私はリアお姉様に提案した。


(味方は多い方がいい。巻き込む人数も。その分、多くのカードがきれる)


 それに、リアお姉様に見せてあげたいの。ユベラーヌが煮え湯を飲まされる顔をね。



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