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ヤンデレ狼の英雄様に、無理矢理番にされました〜それでは、デスゲームを始めましょうか〜  作者: 井藤 美樹


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いらぬお節介ほど迷惑なものはありません


 私の腹黒問題は、結局の所、有耶無耶にされてしまった。


 腹黒っていうのは、クラスの中心人物で、普段は陽気で明るい生徒なのに実は……とか、すっごく可愛い容姿の子が実は……が、鉄則なの。ほんと、重要な所を全く理解してないのよ、副会長は。


 そして、普段とは違うギャップが魅力的に映るの。


 亜人族はよく分からないけど、人族はそれで結構コロッて転ぶみたいよ。小悪魔とかっていうやつね。実際、町にも似たような子がいたし、男女問わずチヤホヤされてて、お姫様みたいだったわね。今はどうしてるか知らないけど。


 亜人族は少し違う。


 人族はチヤホヤされたいのが全面に出てるよね。演じてるに近いかな。だけど、亜人族の場合は自分の目的のための手段なの。擬態しているって感じ。そう言われても、よく分からないよね。私もここ最近気付いた事だから。確信したのは、ユベラーヌ・コーマンの行動が切っ掛けかな。


 伯爵令嬢も元侯爵令嬢も、良いように言えば一途だった。


 認めた訳じゃないし、彼女たちの行動を許した訳じゃないよ。破滅したのも自業自得だと思ってる。ただ……彼女たちの目的が、カイナル様を手に入れることだけじゃなくて、別にもあったって知ったからね。カイナル様は隠していたようだけど、人の口を完全に抑え込むのは難しい。それは噂となって、私の耳に届いた。そして時を置かずに、公表されたの。


 公表されたのは、元侯爵令嬢の一通の恋文だった。それを公表したのは、留学先の友人ユベラーヌの側近の一人。


 中身は、妄想だらけの滑稽な内容だったわ。


 でも最後に、こう書かれていたの。


〈今は愛情を得られなくてもいい。代わりに、忘れられない憎悪を愛しい貴方に贈ります。貴方の中で、私が埋め尽くされるのが、幸せでたまらない〉


 衝撃を受けたよ。


 筆跡鑑定と魔力鑑定から、書いたのは本人と認定された。私の一個上の先輩が、これを残したんだよ。あまりの衝撃に唖然(あぜん)としたよ。

 

 愛されなくていい、せめて、記憶に残りたかったって事だよね。そのために、自分の人生全てを投げ売った。現に、伯爵令嬢も元侯爵令嬢も、カイナル様の中で嫌悪の対象になっている。埋め尽くされてはいないけど、願いの一端は叶った形だよね。でもそれは、私との思い出で綺麗に消してあげるけど。


 刑を言い渡された様子は話してくれたのに、元侯爵令嬢の最後をあまり詳しく教えてくれなかったのは、北の塔に幽閉される瞬間、恍惚な表情を浮かべ幸せそうに笑ったからだ。


 私なら、夢に残る程の強烈な笑みだよ。その歳で、そこまで腹を括れる凄まじさに、私は何も言えなかった。重いなんて言葉で表現できないよ。でも、なんか納得できちゃうんだよね。


 だから、ユベラーヌの側近が、このタイミングであの手紙を公表した理由も察する事が出来た。あれは、ユベラーヌ自身のメッセージだ。


 私に対しての宣戦布告に違いない。


 私からカイナル様を奪う。身体だけでなく、愛情、憎悪、全ての感情を自分一色に染めると宣言したの。


 そして、それを裏付けるように、ユベラーヌは私に接触して来た。


(誤算だったわね)


 この学園に、両殿下以外にユベラーヌの知り合いがいるとは思わなかった。


 正直、商会は盲点だったわ。考えてみればおかしくはない。だって、拠点がゼシール王国だとしても、他国とも商売しているだろし、取引もしているだろう。顧客のつてを辿れば、一商会に行き着き動かす事もユベラーヌなら容易(たやす)いよね。


 例えば、自分の側近をお使いに出し、商会の娘と接触させ要望を通すとか――


「……クラスメートからお茶に招待されて嬉しかったのですが……このような思惑があったとは、悲しいですね」


 私は手渡された手紙を読んでなら、目の前に座っているクラスメートに、そう静かに声を掛けた。


(個室に通された時から、どこか、おかしいと思っていたのよね。知らない人もいるし)


 返ってきた返答は、「すみません、すみません」と頭を下げ泣きながら謝罪している。ある意味、彼女も巻き込まれただけの被害者よね。なので、あまりキツくは咎めないつもりだった。とはいえ、端から見たら、完全に私が泣かした構図になってるじゃない。さっき、紅茶とケーキを運んで来た店員さんにマジマジと見られたし。


「貴女がどのような思惑で、私にこれを渡してきたのか知りたくもありませんが、行動に移される前に、もっと思案なさった方が宜しいですよ」


 私はそう告げると、紅茶とケーキには手を付けずに手紙を持って立ち上がった。


 すると、クラスメートの自称友人が口を開く。おそらく、ユベラーヌの側近でしょ。


「それで、ご返事は?」


(なるほど、内容を知っているのね)


 私は冷えた目で、クラスメートと自称彼女の友だちを見下ろしながら答えた。


「私をコーマン王国に保護ね……運命の番を引き離そうと画策するなんて、いらぬお節介ほど、迷惑なものはありませんわ。一応貴族教育も専門的に受けていますし、ご心配なく。この申し出、キッパリとお断りさせて頂きます。それでも、もし、更にお節介をなさろうとするなら――」


「するなら?」


 自称クラスメートのお友だちが、私に対し侮蔑と嫌悪感アリアリの鋭い視線を向けている。


(それで、脅したつもりなの)


「最悪な結果に繋がるかも知れませんよ」


(貴方の主の人形のように)


 喉まで出掛かったけど飲み込み、胸の中で言った。腸煮えくり返っているけど、私は意識して、にっこりと微笑んで答えてやる。


 あながち嘘でも、大袈裟でもないからね。一筋縄でいかないくらい、王女様でも分かっているでしょ。




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