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ヤンデレ狼の英雄様に、無理矢理番にされました〜それでは、デスゲームを始めましょうか〜  作者: 井藤 美樹


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37/71

その名前だけは、しっかりと胸に刻んでおくわ

ヤンデレ度★☆☆☆☆


 ――お花畑のお花は全て枯れ果てた。


 あの異質な隠し部屋で言い放った言葉通りの決着だったと、カイナル様は私に教えてくれた。ベッドの上で。


 横抱きにされて直ぐ、気が抜けちゃって寝てしまったの。緊張でろくに寝てなかったからね。それから、半監禁状態だよ。心配させたから仕方ないって納得はしてるから、甘んじて受け入れている。でもね、中間テスト近いし、いつまでもこの状態でいるわけにはいかないんだよね。


 話を戻すけど、現国王陛下の実妹であるラメール侯爵夫人と令嬢は、私に対しての拉致監禁と私とラメール侯爵様に対しての殺人未遂、黒魔法の乱用、諸々(もろもろ)の罪が加算されて、北の塔への永久投獄が決まった。


 罪罰が国王陛下自ら言い渡した瞬間、妄想お花畑親子は泣き叫び減刑を嘆願したそうだ。ラメール侯爵様にも縋ろうとしたみたいだけど、侯爵様はまだ眠ったままだしね。国王陛下の足にも(すが)り付いたそうよ。それでも、減刑されない事を知ると、放心したように座り込んで動かなくなったんだって。カイナル様が、それはもう上機嫌で教えてくれた。その姿見たかったよ、残念。


 貴族牢での毒杯ではなく、厳しい修道院でもなく、国外追放でもない。


 王宮の外れにある北の塔の幽閉――


 死を(たまわ)らなかった判決に、甘いと異議を唱える者はいなかったでしょうね。


 反対に、その場に同席していた者は青ざめ震えていたと思う。コルディー公爵家もカイナル様も、その刑罰で良しとしたのだから、死よりも辛いものだと容易に想像出来るよね。実際、ゴルディー公爵家に来る前から噂で聞いていたよ。一度入ったら出られない恐ろしい場所だってね。


 王宮内の外れにあるその塔の高さは、他の塔より少し高いくらい。見た目も他の塔とは変わらない、普通の塔。


 でも、そこに投獄された者は生きては出られない。いや、死んでも出獄は許されない。刑期が終わるまでね。


 灯りなど一切なく、窓とは呼べない小さな鉄格子が()まった空気穴。一年中薄暗く、当然風呂もない。トイレは小さな桶。そして、死なない程度の粗末な食べ物。身体と精神を病まないよう、塔自体に魔法を(ほどこ)している。脱獄なんて不可能。


 そんな環境下で、今まで何不自由する事なく、些細な事まで侍女や執事に任せっきりだった甘ったれた人が、耐えれるわけない。その上、何もかも忘れる事も、現実逃避することさえも許されない。当然、自死も許されない。ただ痛いだけ。  


 常に正気で、病気に(かか)る事もなく、怪我一つない身体。傷が原因で病気になる事もあるからね。


 それが、病まないって事だよ。


 死よりも苦痛で、残酷で、無慈悲な刑罰――  


 そんな北の塔に、あの妄想お花畑親子は収監される。そして、残りの人生をあの塔の中で過ごし、死後も出ることが出来ない。


(北の塔ね……カイナル様自身の手で投獄したわね。それも、満面な笑みを浮かべながら)


 自然に、その様子が目に浮かぶわ。


「……減刑を願った方がよかったか?」


(今更、何を言ってるの? この人は)


 私が硬い表情で、黙って聞いていたから心配になったみたい。


「いいえ。刑については、国王陛下ご自身がお決めになられた事、私が異議を唱えることは出来ません。ただ、私が言えることは、あの二人は、人が越えてはならない線を越えてしまった。それだけです」


 狂気に似た恋心がそうさせた。


「……そうだな」


 カイナル様の表情も曇っている。


「悲しい人たちでしたね。それで、ラメール侯爵様は?」


「伯爵に降格だけで済んだ。妻子を止める事が出来なかったからな。とはいえ、自身も重傷の身だ。かなり情状酌量されているな」


 厄介者を押し付けた手前、国王陛下も強くは言えないよね。というか、言う権利ないわ。


「…………目が覚めたら、苦しみが待っていますね」


 夫人の事を愛していたかは分からないけど、家族に、それも自分の娘に殺され掛けたのだから、侯爵様、いや伯爵様の気持ちを想像すると、胸が痛むよ。


(胸の痛みに気付いてくれたの……)


 カイナル様の大きな手が、私の片頬を優しく包み込む。


「シアは優しいな。その優しさは尊い。だけど、伯爵にはその優しさは無用だ。あそこまで、夫人と娘が病むまでに、兆候が何もなかったとは考えられない。手をこまねいていた責任があると、俺は思う」


 カイナル様の言う通りだ。


「……そうですね。でも、伯爵様が止めたとしても、あの二人はいずれ同じ事をしたと思います」


 間近で見ていた私には分かる。遠回りかそうでないか、それだけの差だって事が。


 狂気をはらんだ愛――


 狂愛の行き着く先は破滅しかない。それも、他者を巻き込んでの破滅。


(ほんと、傍迷惑な話よね)


 でも……ある意味、そこまで一人の人を愛し抜くのは凄い事だと、正直思ったりもした。


「確かにな」


「それで、カイナル様、あの女が言っていた留学先の親友が誰か分かりましたか?」


 おの女に要らぬ知識を、それも出鱈目な話を、さも真実のように話した奴が誰か知りたかった。隣国だから罪には問えないけど、その名前だけはしっかりと胸に刻み込んでおくわ。


(社交の場で会う可能性あるしね)


「ああ、分かった。コーマン王国第二王女ユベラーヌ・コーマンだ」


「……ユベラーヌ・コーマン」


 私は繰り返し呟いた。



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