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ヤンデレ狼の英雄様に、無理矢理番にされました〜それでは、デスゲームを始めましょうか〜  作者: 井藤 美樹


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監禁場所に到着しました


 私とリアが閉じ込められたのは、太陽の光が僅かに入る半地下の半牢屋みたいな所だった。


(閉じ込められて、三時間は経ったわね)


 そろそろ、お尻が痛くなってきた。石床の上に、ずっと座ってるからしょうがないけど。もうすぐ初夏なのに、身体が冷えそう。我慢我慢。窓には鉄格子が()まっていて、見えるのは地面。入口が木製のドアだから、半牢屋って感じ。


(罪人を投獄するってよりも、お仕置き部屋に近い気がするわ。どちらにせよ、人を閉じ込めるために作られたものでしょうけど)


 胸糞悪いのは我慢して、俯いて自分の両腕を掴んでいれば、少しは必死で恐怖に耐えている健気な少女に見えるかな。それとなく私の肩に手を回し、寄り添うリア。分かってるじゃない。


 そんな事を考えていたら、階段の上から見張りの男を呼ぶ声がした。どうやら、「上がってこい」って言ってるようね。返事をする声がした。


「騒ぐんじゃねーぞ!!」


 ドアを半分程開けると、見張りの男は私たちを見下ろし吐き捨てる。乱暴にドアを閉めると、階段を上がって行く。ドアの向こう側に人の気配はしない。見張りはいないみたいね。


 私は軽く息を吐き出してから、口を開いた。


「悪党の決まり文句ですね。それよりも、恋人にプレゼントした屋敷に、牢屋ってあるものなの?」


 悪党が人族だったから、小声で話しても大丈夫でしょ。ついでに、腕を伸ばして軽く伸びをする。


「浮気した恋人を折檻するための部屋です。普通の家庭にはありませんので、ご安心を。ゴルディー公爵家にあるのは、罪人用です。……先代ラメール侯爵が異常者であり、性への認識が破綻していたことの証拠になります」

 

 耳元で、相変わらずリアはぶっ込んできた。


「……あるのね、牢屋。まぁそれはいいとして、何人も自分は愛人や恋人を作っておいて、恋人を折檻するなんて勝手すぎませんか。身勝手過ぎるでしょ」


(女性の敵だわ)


「先代ラメール侯爵は異常者ですから、男性と話をした時点で浮気だと認定されたみたいです」


「……嘘でしょ。じゃあ、例えば、生活用品や食料品を買いに行って、男性の店番や係員と挨拶したり、話をしたら浮気ってことですか……束縛系の極みですね。怖すぎです」


(あのカイナル様でも、ここまで酷くないよ〜ましてや、番じゃないのに)


 あまりの異常さに、鳥肌が立ったよ。


「ましてや、一度関係を持つと、別れたとしても、恋人認定されていたと聞いてます」


(迷惑な!!)


「…………カイナル様って、まだマシな方だったのですね。それにしても、ラメール侯爵はよく売る気になりましたね。醜聞の塊でしょ、こういった屋敷は」


 余程お金に困っていたとはいえ、醜聞を晒すには勇気がいったでしょうね。


「特殊な趣味嗜好を持たれる方には、それなりに需要があると思います。現に売れていますので」


「でしょうね。想像したくはないけど……それよりも、妄想お花畑親子が来るのは、やっぱり真夜中かな? 私なら、昼に来ますね」


「どうして、昼だと思ったのですか?」


 意外にも、真剣な表情でリアが尋ねる。


「下手側とはいえ、ここは王都です。昼間に馬車が行き交うのは目立ちませんが、陽が暮れると、中央区から下手側の移動は目立つと思って」


 そう答えると、リアの目がとても輝いた。


(そんな反応されるような事言ってないけど)


 夜に馬車を使う人族は少ないの。使うのは、大商会のようなお金持ちぐらいね。そもそも、大半の人族は馬車を持ってないよ。乗り合い馬車も夜は営業しないし。そんな中で、夜、馬車が通れば人の記憶に残るよ。


「さすが、カイナル様の番様です。アレは良い番を持てたのですね」


 そう答えたリアの表情は、自愛に満ちた優しいものだった。大袈裟よね。


(アレって、カイナル様の事だよね)


 たまに、リアはカイナル様の事をぞんざいに扱う時がある。なのに、お咎めも注意も受けてはいない。それに、今の表情、もしかして二人は旧知の仲なの?


「リアって――」


 尋ねようと口を開いた時だった。騒がしい声と複数人の足音が聞こえてきた。


「来たようです」


 リアの台詞に頷く。


「悪知恵だけは働くようですね」


 そう答えた後、階段を下りる靴音かした。ドアを開け入って来たのは、ゴロツキたちとラメール侯爵令嬢様だった。


(はい。これで、誘拐及び監禁罪確定)


 何故か、勝利を確信している妄想お花畑女は、醜い笑みを浮かべながら声高らかに言い放った。


「罪人には牢屋がお似合いね。平民風情が黒魔法を使って、私から運命の番であるカイナル様を奪った罪は重いわよ!!」


(マジで、セリーシアお母様が流した噂信じてるの!? 妄想もここまで来ると、もう治療しても治らないわね)


「はぁ!? 黒魔法!? 何言ってるの!? とうとう、完全にお花畑に侵食されたみたいですね、ここが。お可哀想に」


 私は自分の頭に指をトントン当てながら言ってやった。もう、恐怖に怯えている少女はいない。


 ゴロツキたちは少し驚き不信感を抱いているけど、もう遅いわ。ゴルディー公爵家の馬車を襲撃したのよ。大陸最強の英雄様の番を誘拐したの。引き返せないのは、奴らもよく分かっている。


「黒魔法じゃなかったら、あの凛々しくて、逞しくて、格好良くて、美しいカイナル様が、平凡な平民風情を選ぶ筈ないでしょ!! でも、その黒魔法はもうすぐ解けるわ。もう、その準備は出来ているの。お母様が色々手を尽くしてくれたから。お前のそのすました顔も、もうすぐ苦痛に歪むでしょうね。楽しみで仕方ないわ」


(さっきの台詞、訂正するわ。馬鹿だわ、この女。完全に自分に酔ってる)


 少し(あお)ったけど、こんなにすんなり自供を貰えるなんて、ちょっと拍子抜けしたわ。母親も率先して動いてるようだし。別会場を設けてくれているなんて、これは最後まで、この茶番に付き合ってあげなきゃいけないよね。


「人族や亜人族が使えない黒魔法を、どう解くつもりなのかしら? 頭大丈夫?」


 冷笑しながら、更に煽ってやった。


「せいぜい、粋がってなさい!! 今晩で、全てが終わるんだから!!」


 そう吐き捨てると、あの女は息荒く牢屋から出て行った。


 その後、ゴロツキの一人がリアを人質にして、私に猿轡(さるぐつわ)を投げてよこした。自分でしろってことね。猿轡をすると、ゴロツキが私の腕を乱暴に掴み立たせようとしたが、仲間からの叱責で手を止める。ゴロツキはリアを一旦離し、彼女に私の手首を拘束するよう命じた。ゴロツキたちに挟まれるように、私とリアは階段を上り裏口から外に出る。


 そして、荷馬車に乗るように命じた。私が乗乗ったのを確認してから、猿轡をしたリアも乱暴に乗せられた。姿勢を低くするように命じられそうすると、私たちの上に大量の(わら)を被せてきた。


(偽装工作か……王都の外に出るつもりね。何かしらの儀式をするつもりなら、王都内では不都合だわ)


 


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