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ヤンデレ狼の英雄様に、無理矢理番にされました〜それでは、デスゲームを始めましょうか〜  作者: 井藤 美樹


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さぁ、早く来なさいよ


 馬車は予想していた通り学園には向かわず、反対の方向へと走らせていた。速度はいつもより出ていて乱暴だった。素人の御者ね。


(人通りが少なくてよかったわ。それにしても、馬車ごと誘拐するなんて、大胆な犯行ね)


「……御者さんは大丈夫でしょうか?」


 誘拐犯に聞かれる心配はないと思うけど、警戒して自然と小声で尋ねた。


「大丈夫です。一応、彼は御者をしておりますが、元は暗部ですし、それなりの訓練受けておりますから平気です。無理矢理、引きずり降ろされただけですよ。血の匂いはしませんし、今もこの馬車に張り付いてます」


 優しい笑顔で、リアはぶっ込んできたよ。


(元暗部!? 張り付いてる!?)


 暗部って、主に情報収集と暗殺に特化した人たちの事だよね。コルディー公爵家、飼ってたんだ……そうだよね、飼ってるよね。だからか、あまり顔を合わそうとしてくれなかったのは。名前も訊けてなかったし。全てに片が付いたら訊いてみようかな。


「……怪我がないならよかった。それで、リア、私たち何処に運ばれているか分かりますか?」


「おそらく、この方向ですと……昔、ラメール侯爵家が所有していた屋敷の可能性が高いでしょう」


「えっ!? 王都内に?」


 思わず、大きな声が出そうになったよ。王都に屋敷があるのに、また別の屋敷ね……別荘なら、観光地や景色の綺麗な場所に(もう)けるでしょ。


(もしかして、訳あり?)


 顔に出ていたのか、リアは小さく頷くと教えてくれた。


「先代ラメール侯爵が、かなりの女好きで愛人を住まわせていたとか」


(あ〜やっぱり、訳ありか。ありがちな話ね)


 ありがちな話だけど、違和感を感じた。


「……先代のラメール侯爵は人族だったの?」


 亜人族なら、番関係でなくても夫婦関係になれば、そうそう浮気はしないと聞いた事がある。事実、浮気したりして離婚するのは人族の方が圧倒的に多い。


「いえ、亜人族です。運命の番に巡り会うことができなくて、生涯、番を持たなかったそうです。持たなくても、あちこちに種を撒いていたとか……兎獣人とはいえ、褒められたものではありません」


 顔を歪めなからリアは言った。


(兎って、一年中発情できるって聞いたことあるけど、別に兎獣人関係ないでしょ。ただたんに、下半身が緩かっただけじゃない)


「それ、兎獣人にとっては大迷惑ですね。風評被害もいいところでは? まぁでも、見えてきましたね。どうして、ラメール侯爵家がお花畑を引き取ったのか」


 複数いる恋人や愛人に屋敷をプレゼントしたり、生活費を捻出していたら、そりゃあ、財政難になるよね。それも飢饉とかじゃないから、誰にも相談出来ないし、援助も受けられない。そうなると、足りない分は金貸しに借りる事になる。


「そういった屋敷の大半は、先代の死後、殆どが売却されました。それでも、買値より売値は下がりますからね。それに、居座り続ける恋人や庶子にもそれなりの金銭を渡し、立ち退いてもらう必要もあります。湯水のように出て行ったでしょう。借金もあるとか」


(それ、完全に詰んでない。負の連鎖にどっぷり()まってるわ)


 借金の額も相当よね。なら、利子もそれなりの額になってる筈。そんな時に、王族の厄介者の降嫁話。仮にも侯爵だから、降嫁先としては問題ない。王家側はなんとしてもまとめたかったでしょうね。


 反対に侯爵家側も、足元を見られたとはいえ、背に腹は代えられないから、かなり問題があっても受け入れるしかない。


 利害関係の一致。


「王族、怖っ」


 思わず、素が出ちゃったよ。


「確かに王族は怖いですけど、貴族も似たような事をしてますから、一概(いちがい)には」


 亜人族の貴族よりも人族の貴族の方が、この手の話は多い。亜人族は血の繋がり、家族を群れと考えるからね。そう考えると、ラメール侯爵夫人は相当重症なお花畑になるよね。運命の番に逃げられるぐらいなんだから。


「平民の間でも、似た話は聞いたことはありますが……」


 駄目息子を寄付と一緒に、神殿に放り込んだって話をお客さんから聞いた事がある。


「貴族社会は、常に騙し合いばかりしていますから。特に、お茶会や社交シーズンは」

 

「そういう話を聞くと、出たくなくなりますね。苦手だから」


 心底、そう思うよ。


「ならば、カイナル様にお願いしたらどうでしょうか? 必要な社交しか出席しないと」


(カイナル様か……)


「……そうですね。仲直り出来たらお願いしてみます。まだまだ先の話ですけど」


「それが宜しいかと。ユリシア様、馬車の速度が落ちました。そろそろのようです」


 後半、リアの顔から笑みが消えた。口調も厳しいものに。私も表情を引き締める。


 言い終えて間もなく、馬車が停まった。乱暴にドアが開いた。


 おそらく、妄想お花畑親子に雇われたのだろう。ゴロツキが私とリアを見て、下品で嫌な笑みを浮かべた。身を寄せ合って話していたから、私とリアが恐怖で怯えていると、濁った目には映ったようね。全く違うけど。


 だって、私を傷付ける事は不可能。よって、殺す事も出来ない。


 リアはゴルディー公爵家の騎士よりも強いし、元暗部の御者さんも控えている。


 それに私は、ゴルディー公爵家の皆に護られているの。恐怖を感じる要素なんて皆無よ。


 拉致に成功したと報せを受けたら、あの妄想お花畑親子は嬉々としてここにやって来るでしょうね。まぁそれまでは、怯えた少女を演じてあげるわ。


(さぁ、早く来なさいよ。妄想お花畑さんたち)




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