表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤンデレ狼の英雄様に、無理矢理番にされました〜それでは、デスゲームを始めましょうか〜  作者: 井藤 美樹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/71

引っ越しました


 帰りの馬車では襲われなかった。


 噂を聞いて、数時間後に決行は、さすがに無理があったようね。となると、後二日。計四回。


(撒いた餌に喰らいついてくれるかな。出来れば、喰らいついて欲しいけど)


 そんな事を考えながらエントランスに入ると、出迎えてくれたのは執事長と数人の侍女だけだった。今日は早番だと聞いていたから、カイナル様は屋敷にいるはず。変更になったとは聞いていない。やっぱり感はあった。


(そっか……完全に怒らせたようね。それとも、飽きられたのかな。だとしても、私から絶対に謝らないし、折れないから)


 ここに連れられて来て七年目になるけど、その中で一番の大喧嘩。始めての喧嘩がこんなに(こじ)れるなんて。私も変に意固地になっているのは分かってはいるけど、素直になれない。


 昨晩は、それでも……勇気を出して、少しだけ素直に自分の気持ちを吐露したけど、大撃沈。まぁでも、カイナル様の本音を聞けて良かった。


 私を護りたいと想ってくれる気持は嬉しいよ。大事な人に大事にされてるって、幸せだよ。でも、それを維持するために籠の鳥になれって言われるのは、受け入れられない、どうしても。それは間違っていると思うから。


 エントランスにカイナル様がいないという事は、考えを変える気がないって事だよね。今までどんなに忙しくても、疲れていても、必ず迎えに来てくれた。


 そして、笑って出迎えてくれて抱っこしてくれた。


 頭では理解していても、多少の希望はあったの。だから、出迎えてくれた執事長に訊いた。


「今日、カイナル様は急に仕事が入ったのかしら?」


「いいえ、屋敷にて実務におわれております」


 執事長は答える。おわれているは、執事長の優しさね。


「そう、ありがとう」


 私はそう答えると、自分の足で歩いて部屋に向かう。途中、窓から外の景色に目をやる。


(なんか……色褪せて見うるわね。そうか……カイナル様がいないだけで、こうも見え方が変わるのね)


「大丈夫ですか? ユリシア様」


 急に立ち止まった私を心配して、リアが尋ねる。私は無理して、小さく微笑むとリアに告げた。


「大丈夫よ。リアに頼みたいことがあるのですが……義両親側の客間を一つ用意してくれないかしら。出来れば、私の部屋にある日用品も一緒に移して欲しいの」


「えっ!? 引っ越すのですか!?」


 リアの驚いた声が廊下に響く。


「ええ、暫く距離をおいた方が、お互いのためにいいと思うから」


「今回の件が片付いたら、自室に戻りますよね?」


 そう訊かれて、私は小さく首を横に振った。


「確かに、あの妄想女の件が引き金だけど、根本的な問題は別にあるの。それが解決しない限り戻らないわ」


 沈んだ顔で力なく答えたら、リアはそれ以上何も言わずに「畏まりました」と答え、私から離れた。一人残された私は、部屋には戻らず図書室に向かった。読みたい魔法書があったのだけど、今は、カイナル様から離れたかった。図書室は執務室から一番離れた場所にあるから。


(嫌いな訳じゃないのに、ほんと……色々難しいよね)


 ふと、思う。部屋を変えるって、軽率な事をしたかもしれない。でも、一人で考える時間が欲しかった。


 噂好きな侍女たちには、もってこいの話のネタになるわね。新人の侍女の中には、私の事を(うと)ましく思っている人もいるからね。彼女たちに隙を作ったかも。でもいいや、そんな考えを抱く侍女は直ぐにいなくなるから。そんな事を考えていたら、人の気配がした。


「ユリシア様、用意が整いました」


 引っ越し作業が終わったリアが、私を呼びに来てくれた。


「ありがとう」


 私は広げていた本を本棚にしまい、リアの後ろを付いて歩く。


 客室に向かう途中、向かいの廊下からカイナル様の執務室がチラッと見えた。歩調が自然と遅くなる。


(大きな背中。仕事、大変そうね)


「ユリシア様、後であのバ、いえ、カイナル様をのしておきます」


 リアの心遣いに笑みが溢れた。


「ありがとう。でも、それを実行したら、リアが辞めさせられるからやらないでね。リアには、ずっとこの屋敷で働いていて欲しいから」


 そう答えると、リアが嬉しそうに微笑んだ。カイナル様と一緒で、灰色の尻尾が左右に揺れていた。


「畏まりました。カイナル様には手を出しません」


「ありがとう、リア」


 そんな事を話していると、客室に到着した。リアがドアを開けると、完璧なまでに、私の部屋が再現されていた。さすが、リア。武術にも長けていて、侍女の仕事も完璧なんて、超ハイスペックだわ。


 但し、カイナル様が私に贈ったプレゼントの品々は、服と数点のアクセサリー以外は元の部屋に置いたままのようね。持って来るように言おうか悩んだけど止めた。一応、盗まれないように、リアにはそれとなく示唆(しさ)しておいたわ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ