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ヤンデレ狼の英雄様に、無理矢理番にされました〜それでは、デスゲームを始めましょうか〜  作者: 井藤 美樹


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貴女たちの居場所はもうここにはない


 私が部屋から飛び出して義両親の所に逃げた事で、この計画はカイナル様抜きで始まった。


 といっても、カイナル様は全部把握している筈だけどね。ピアスは付けたままだし、魔法具も装備したままだからね、ツーツーでしょ。


 あの時、少しでも私の気持ちを理解してくれる素振りを見せてくれたなら、追い掛けてくれたなら、この計画にカイナル様も加わってもらおうって考えていた。一緒に戦いたかった。


「……爆発したら、溝が深まった」


 つい、気付かないうちに、そんな独り言を呟いていた。


 確かに、亜人族と人族の間には明確な違いがある。でも、言葉にすれば、本気で向き合えば伝わると思っていたの。実際は無理だった……考えてみれば、価値観が違う者同士だもの、カイナル様の反応はある意味正解だったかもしれない。


 だとしても、相容れたいって思うのは、私の我が儘なのかな。


(あ〜〜もう、苛々する!! モヤモヤするわ。私ってこんなに女々しかったかな)


 そんな事を考えながら馬車に揺られていると、向かいに座っていた侍女がクスッと笑う。


「さっきから、百面相していますよ、ユリシア様」


 彼女は、カイザルお父様が私に付けてくれた侍女のリアさん。騎士ではなくて、普通に侍女の仕事をしてくれている。何度か義両親の傍に一緒にいる所を見たことがあった。


 なんでも、この清楚系狼美女が、コルディー公爵家で働いている騎士よりも強いなんて驚きだよ。聞いた時は、目を丸くしたからね。でも、納得。コルディー公爵家はバリバリの武闘派だからね。私も、護身術ぐらいは身に付けたし。


「えっ!? そんなに表情に出ていましたか、気を付けていたのに。教えてくれてありがとうございます、リア」


 思わず、頬に手を添え隠そうとした。


「侍女として、この発言は出しゃばったものだと思いますが、喧嘩することは良い事だと。それだけ、ユリシア様が真摯に考え思った事をぶつけた。私は、とても良い事だと思います。そもそも、本気で相手の事を考えていなければ、喧嘩などしません。疲れますから」


(そうだよね)


 私の考えを後押ししてくれる人がいるのは嬉しい。嬉しいけど、私の気持はあまり晴れない。


「ありがとう、リア」


 一方通行は、やっぱり悲しくなるし辛い。カイナル様もそうかもしれない。


「ユリシア様は、正々堂々としていればいいのです。そして、あのバ、いえ、カイナル様を(あご)でこき使えばいいのです」


(バ? もしかして、馬鹿って言おうとした!? 顎でこき使う? えっ、それ、侍女の貴女が言っていい言葉じゃないよね?)


 本来、仮主である私が叱責しなければならない所だけど、その言い方が壺にはまってしまって笑ってしまった。


「だったら、そのやり方を教えてくれますか?」


 私がそうリアにお願いすると、彼女はとっても良い笑顔で、「はい。お任せ下さい」と言ってくれた。


(本当に、ゴルディー公爵家の皆は優しいな)


 リアのおかげで少し気分が浮上した頃、学園に馬車が到着した。私はリアから鞄を受け取り、教室に向かった。


 私は気付かなかったけど、私たちを物陰から監視している人がいたみたい。学園内だから、学園関係者か生徒でしょうね。リアは気付かない振りをして放置し、屋敷に戻った。


 セリーシアお母様がお茶会で話す内容が、ラメール侯爵家に伝わるのは今日の午後。動くなら、今日の夕方、帰りの馬車からになるわね。


 うまく釣れればよし、釣れなくても、これまでの暴言は録画済み。それを私たちゴルディー公爵家が握っている以上、ラメール侯爵家に勝ち目は始めからないの。いくら、国王陛下の妹でもね。約束の日の返答次第よっては、国王陛下に見せた映像も含めて、更に過激なものを、国内、国外問わす公表すると決めているから。

 

 重ねるのは、醜聞だけ――


 その醜聞だけでは味気ないから、罪状を付け加えてあげる。その二つをもって、徹底的にお花畑妄想女たちを潰してあげるわ。この国にいるのが恥ずかしいくらいにね。


 ぜシール王国に、貴女たちの居場所はもうないの。憎々しく思っている私が、その事を直接教えてあげるわ。親切でしょ。



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