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ヤンデレ狼の英雄様に、無理矢理番にされました〜それでは、デスゲームを始めましょうか〜  作者: 井藤 美樹


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21/71

カイナル様の闇

ヤンデレ度★★★★★


「…………カイナル様、今日もお仕事お疲れ様でした……それで……お願いが」


 恐る恐る、お願いする。それに、この体制何!? さっきお風呂に入ったのに、もう汗だくだよ。


(こ、怖い。美形が無表情になったら、迫力あり過ぎて怖いよ〜)


「俺はシアの願いを、これまで何度も叶えてきた」


 お昼寝事件と同じように無表情のまま、今度は感情のこもらない目で私を見据えながら淡々と告げてきた。


 身体はピクリとも動かない。それでもカイナル様は、私の僅かな身体の動きで、逃げようとしたことを察した。逃げたら駄目だって分かってはいたけど、真正面から来られたら本能がどうしても勝ってしまう。生存本能のせいで、無意識に逃げようと動いたの。


「どうして、逃げようとした?」


 目に光がない。


(あ……やっぱり、また地雷を踏んだ。鉄格子と手錠が脳裏に浮かぶよ。もしくは、鎖かな。間違いなく、デスゲームの駒、一気に進めたわ)


「……本能です」


 もうこうなったら、素直に答えるしかない。


「シアは俺が怖いのか? 何故怖がる。俺は今までシアに尽くしてきた。シアの夢を応援してきたつもりだ。なのに、何故シアは俺を恐れるんだ。教えてくれないか、何故恐れるんだ? 俺の何が悪い? なぁ、教えてくれないか? 俺はどうしたらいい。何をすればいい。俺の何が足りない」


 噛まずに続く、言葉のラッシュ。


「そ、その目です!!」


 耐え切れずに、私は叫ぶ。


「そうか……この目が嫌なのか。なら、いらないな」


(えっ……!?)


 カイナル様はそう呟くと、私の上から身体を起こし、指で自分の目を突き(えぐ)ろうとした。


「止めて下さい!!」


 さっきまで、身体が金縛りのように動かなかったのが、嘘のように動いた。必死で、カイナル様の腕にしがみつく。


「何故、止める。この目が怖いのだろう? なら、シアの怖いものを排除しなくてはいけない」


 さも、当然のようにカイナル様は告げた。


(なんで、そうなるのよ!!)


 私はしがみついたまま叫んだ。


「な、なんで、簡単に自分の身体を傷付けようとしてるんですか!?」


「番が望んだ事を叶えるのは、当然のことだろう」


「私はそんなこと望んでない!!」


 この屋敷に来て、一番大きな声だったと思う。


「しかし、この目が……」


 小さい声で、カイナル様は尚も考え直さない。否定の否定に、戸惑っていた。その気持ちが、痛い程伝わって来る。


(……この人は、嫌になる程私に対して、純粋で一途過ぎる)


 目と鼻の奥が熱くなる。気抜いたら、泣きそう。泣いたら、絶対また勘違いする。だから、我慢しないと。


「私が怖かったのは、カイナル様の目そのものじゃなくて、いっちゃってる目が怖かったんです!! いいですか!! もう、自分で自分の身体を傷付けようとしないで下さい」


 我慢していたのに、興奮したら泣けてきた。感情が爆発したら泣くんだね。知らなかったよ。


 私が声を上げて泣き出すと、カイナル様があたふたしだした。もう、あの光を失った目はしていない。声にも感情が表れている。ほんと、よかった……


 怖いと思った――


 カイナル様はいとも簡単に、何も迷わずに、私の台詞のせいで自分の未来を壊そうとした。閉ざそうとした。人族には到底理解出来ない行為。それが出来るのが、亜人族なんだろう。


 震える程恐ろしい。


「もうしない。だから、泣かないでくれ。頼むから、泣き止んでくれ」


 恐る恐る私に触れてこようとする、カイナル様。さっきまでの彼とは違う。


 私ってつくづく大馬鹿者だよ。こんなに、カイナル様の闇に触れても、彼を突き放すことができない。見限る事もできない。番だからという理由にしていたけど、もう無理ね。私はカイナル様を受け入れている。


「……だったら、私を抱き締めて下さい」


 そうお願いすると、カイナル様は躊躇(ためら)いながらも、私を抱き締めてくれた。壊れ物を扱うようにそっと。


「これでいいか?」


 頭上から、カイナル様の温かい優しい声がする。


 私は、カイナル様の胸の中で思いっ切り泣いた。その間も、カイナル様は私を抱き締めてくれた。おかしいよね、カイナル様が怖いのに、彼の胸の温かさが、次第に私を安心させる。


 やっと落ち着いた私は、カイナル様の胸に手を添え押した。カイナル様の腕が離れる。(うつむ)いたまま、私は思いの丈を吐露(とろ)した。


「……もう、自分の身体を自分で傷付けようとしないで下さい。そんな事をされたら、私は自分が許せなくて、貴方の傍にいられなくなります。こうして、カイナル様の背中に腕を回せなくなってしまいます。お願いだから……もう、自分を傷付けようとしないで」


「分かった……シア、済まない。怖がらせたな」


 再度、私を抱き締めたカイナル様は、沈んだ声で私に謝る。


「もう、いいです」


 しんみりとした空気がやんわりと和んで、これで終わったかなって安心したけど違った。


「生徒会を手伝うのはいい。だが、放課後は絶対に駄目だ。シアには明るいうちに帰って来てほしい。もし、シアが放課後まで生徒会を手伝ったら、性格上抜け出せないだろ」 


 仰る通りです。


 皆が仕事している中、一人抜け出すことは出来ないと思う。なら、始めから、放課後は手伝えないって言っていた方がいいよね。無用なトラブルを避けれるから。


「……分かりました。放課後は手伝えないって断りますね」


「分かってくれて嬉しい。心配なんだ、シアはとても可愛くて綺麗だから」


(いや、綺麗なのはカイナル様だよね。私のような平々凡々で生意気な小娘を好きになる物好きいないわ)


「そう思うのは、カイナル様だけですよ」


「そんな事ない!! シアはとても可愛くて綺麗だ。いつも目で追って、見詰めてしまう。目が離せないんだ」


「それは、番だからです」


 その台詞に納得出来ないカイナル様は、まだ、ブツブツ言っている。


「あと……ゲルツ・ダクリスには近付くな」


 褒めたのがいけなかったみたい。完全にターゲットにされてる。ごめんなさい、生徒会長。


「出来るだけ、近付かないようにしますね」


「出来るだけは駄目だ」


 相手は生徒会長なのにね。彼から仕事を振られるのに、難しいこと言ってきた。それも、強い口調で。


 ほんと、私の番は、とても病んでいて面倒だと思う。だけど、それがカイナル様なんだよね。

 



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