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ヤンデレ狼の英雄様に、無理矢理番にされました〜それでは、デスゲームを始めましょうか〜  作者: 井藤 美樹


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19/71

攻略本が欲しいです


「……どう考えても、納得できないわ」


 今日も、朝からスノア王女殿下は毛並みが良くて、可愛くて元気です。厄介事がなくなって、教室でゆっくり話せるの久し振り。


(内容は、平和的じゃないけど)


「そうですか……停学一週間って、私的には重いと思いますが」


「降格になっていないでしょ!!」


 スノア王女殿下が朝から憤慨しているのは、自己中男が停学一週間で済んだ事。クラスはそのまま。謹慎の二日を入れると、十日後に学園に戻って来る。


 因みに、自己中男の手駒だった生徒会役員の中で、私を無理矢理連れて行こうとした役員は停学十日。他の役員は生徒会長を含め、厳重注意となった。私も、軽く担任から注意されただけで済んだよ。手と口を出して来たのは向こうからだからね。あくまで私は、正当防衛。目撃者は大勢いたから証言は十分に取れたよ。


 あれから、自己中男の人気がどうなっているかは知らないけど、私的には、仮面が外せただけでいいかな。


「直接、副会長は何もしてませんから。ちょっと口喧嘩をしただけ。肩を掴もうとはしましたが、伯爵令嬢たちのように暴力を奮おうとはしていません。降格にはなりませんよ」


「でも!!」


 スノア王女殿下の言いたいことは理解出来る。自己中男が、私に殺意に近い悪意を向け、手を伸ばしてきたことに怒っているの。


「人の胸の内は裁けません。思うのは自由。行動が全てです」


(自分で言っててなんだけど、重いよね)


 カイナル様に出会う事なく、あのまま食堂でお手伝いをしていたら、私はそんな事は口にはしなかった。この六年間必死で勉強して、いつの間にか、私の中から平民らしさが抜けて行ってる気がする。少し寂しいけど、しょうがない事。それが、正しいんだから。


「確かにそうだけど……」


 まだ不服そうだけど、なんとかスノア王女殿下は納得してくれた。


 スノア王女殿下自身、頭では理解していると思う。だけど、感情が付いて来ないんだね。スノア王女殿下には悪いけど、私は嬉しいかな。本気で心配して怒ってくれたから。


 私の中から平民らしさは、これからも抜けていくけど、代わりに補充されるものもあるんだね。それを、スノア王女殿下とアジル殿下が教えてくれた。


「本当に、私は良い友人が持てて嬉しいです。それで……アジル殿下に何かあったのですか? 最近、とても忙しいそうなので」


 スノア王女殿下のデレ顔が、アジル殿下の名前を出した途端に消えた。


(あれ? また喧嘩でもしたのかな?)


 双子で仲が良すぎるのか、その分、喧嘩も多いんだよね。直ぐに仲直りしてるけど。


「アジルは、もう少ししたら来るわ」


(なんか、奥歯にものが挟まったかのような言い方ね)


「喧嘩ではないとしたら、何か、用事でもあったのですか?」


「…………生徒会室よ」


 超不機嫌な声で、スノア王女殿下は答える。


「えっ!? また、勧誘されたの!?」


 吃驚して、素が出ちゃった。


「自発的に行ったのよ。役員の大半があの件以降、生徒会室に来なくなって、仕事は生徒会長と数人の役員で回してるらしいわ。人がいいアジルは、黙ってられなくなったみたいで……」


(目に見えるわ〜仕事放棄ね……まぁそうなるわ)


 だってあいつらは、そもそも生徒会にいた理由が違うから。生徒会役員になったのも、憧れの副会長の(そば)にいるため。彼のいない生徒会など、どうでもいい。魅力を感じない、ただそれだけ。私にはあの自己中男の魅力が、未だに全く理解出来ないけどね。アジル殿下の魅力は理解出来るのに。


「それが、アジル殿下の良い所だと思います。そうでしょ、スノア王女殿下」


 そう言ったら、またスノア王女殿下は少しデレた。僅かに、表情が変わる程度だから、気付いているのは私とアジル殿下だけ。癒やされる。


「……少し甘いと思いますが、アジルらしいわ」


 ほんとに、仲が良いよね。だから、提案してみた。


「なら、昼休み、アジル殿下の分の軽食を購買で買ってから、私たちも生徒会室に行きませんか?」


「えっ!?」


(そんなに、驚くようなことを言ったかな?)


「役員になるつもりはありませんが、新たな役員が決まるまで、中継ぎをするくらいはしてもいいと思います。どこまで出来るかは、分かりませんが」


「生徒会、毛嫌いしてたでしょ!?」


(なんか、勘違いしてるみたい)


「生徒会、そのものを嫌ってはいませんよ。面倒くさいとは思っていましたが。私が嫌だったのは、その体質です。元凶がいなくなったので、手伝う分は全然構いません」


 にっこりと微笑みながら答えると、スノア王女殿下はなんとも言えない表情になった。


(あ……もしかして、やり過ぎたのを思い出したの?)


 私的には、やり過ぎたって全然思わないんだけど、貴族の御令嬢や御子息たちには、若干、嫌……かなり、刺激が強かったみたいで引かれたわ。真っ青で震えている生徒もいたし。精神面弱いよね。


「……ユリシアが手伝うなら、私も手伝ってあげるわ」


 ちゅっと素直じゃない所も可愛いな。ほんとは、アジル殿下の事を心配して手伝いたかったんだよね。


「ありがとうございます、スノア王女殿下」


「但し、放課後は一時間だけよ」


「スノア王女殿下、用事でもあるのですか? なら、私だけでも」


 そう気を利かせて言ったら、怒られた。


「私じゃなくて、ユリシアが!! ユリシア、お願いだから、少しは自覚を持って。貴女には、カイナル様という番がいるでしょう。私と一緒にお昼寝しようと平気で言うし、少しはその言動と行動を考えなさい」


 カイナル様も、お昼寝って言葉にやけに敏感に反応してたし、すっごく怒られた。デスゲームのゴール一歩前まで駒を進めちゃったよ。


(でもなんで、放課後は一時間しか駄目なの? よく分かんないけど、これ、選択間違ったら駄目なやつじゃない?)


 頭の中で警報が鳴り響いてる。間違いなくそうだ。ほんと、亜人族ってよく分からない。何処かに、攻略本ないかな。あったら、大金払っても即買いするのに。


 ないのなら、カイナル様の普段の行動を思い返せば、回避するコツが見付かるかも。


 普段のカイナル様って――

 

 


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