地雷は意図せぬ所に隠れてました
ヤンデレ度★★★★★
(……何か、変な事言ったかな)
たぶん、知らないうちに言ったのね。圧が強過ぎる……口にはしない代わりに、全身で苛立ちを訴えてきてる。
だって、今日のグリグリは強くて長い。
もう二時間はされ続けてるよ。いつもは三十分ぐらい、長くて一時間弱なのに。
基本、こういう時って、逆らわず、ジッと嵐が過ぎるのを待つの。まぁ逃げたくても、お腹に腕を回してガッシリと抱え込まれてるから、無理。身体はビクとも動かない。拘束されてる感じがする。
拘束だとしたら、身体を捩ったりすると、逃げるつもりだと思われて、確実にデスゲームの駒を進めることになるわ。下手したら、一気にゴール手前まで進めるかもしれない。せめて、何がいけなかったのか知りたい。対処も何も出来ないよ。
「………………お昼寝」
ポツリとカイナル様が耳元で呟く。
(やっと、ヒントが出たよ〜)
ここは、ちゃんと掘り下げないといけない。
「お昼寝が、どうかしましたか?」
平然を装って尋ねた。
「……俺はまだ、シアと昼寝をしたことがない。なのに、シアは王女殿下と一緒に昼寝しようとするなんて……シアは俺だけのものなのに、俺がしたことがないことを、俺以外としようとしないでくれ。もししたら、どんな手を使っても排除する。シアの大事な友達でもだ。俺の初めてはシアのもので、シアの初めては全部俺のものだ。そもそも昼寝など、無防備な姿を晒そうとするなんて、絶対に許さない。考えるのも、口にするのも許さない」
冷や汗と動悸が止まらない。
淡々と、抑揚もなく耳元で言われ続けたら、恐怖で身体が強張るよ。
(私、選択間違えた? まさか、デスゲームの駒を進めてしまったの!?)
スノア王女殿下が、何故、あんなに必死で否定したのか、真っ青になって震えたのか、その理由がよくわかったよ。
私は震えながらも、腹に回された腕に手を添える。カイナル様って、私に触れられるのが好きで安心するから。私にできるのは、誠意をもって謝り倒す。
「……ごめんなさい、カイナル様。なんとなく言った言葉で、貴方を傷付けてしまって。本当に、ごめんなさい」
「そうだ。俺は傷付いた。俺はシアしかみていないのに、シアは俺以外に平気で目を向ける……シアの瞳に映るのは俺だけでいいのに、何故、他を見る。見る必要ないのに。俺しかいなければ、俺しか見ないか……」
(うん……病んでるね)
日常生活をおくる限り、カイナル様の願いを叶えることは不可能だよ。私とカイナル様しかいない世界にならない限りね。もしくは、その環境を作れば可能かも。絶対に嫌だけど。
(そもそも、なんで、そんな心配するの?)
はっきりと言葉にしないといけないの。一緒に生活して伝わらなかったのかな。私は毎日、カイナル様の所に帰って来てるのに。なら、言葉にするまで。
「……このピアスを受け取ると決めた時から、私はカイナル様のものですよ。流されてるように感じたかもしれませんが、私なりに腹を決めたんです。そうでなければ、もっと愚図っていましたよ……仲の良い友人はいますが、私の帰る場所はカイナル様の所です」
(信じてくれませんか)
声にしないで、願う。
「信じていいのか?」
泣きそうな声で、カイナル様が尋ねる。
「信じてもらわないと困ります」
「だったら、今ここで、俺に愛してると言ってくれないか」
(えっ、今、カイナル様、なんて言ったの? 私が、カイナル様に――無理!! 無理!!)
「はぁ!? そんな事言えるわけないでしょ!!」
焦って、思わず大きな声を上げてしまった。
カイナル様から幾度となく、その……告白されていたし、「愛してる」とも言われた。
でも……私からは、一度もその言葉を口にしたことはないし、近い言葉も告げたこともない。いつも、受け身だった。与えられてばっかりだった。
家族愛や友人に抱くような愛情ではなく、恋愛として人を愛する気持ちが、いまいち分からないせいもあるけど、それでも、それなりに態度で精一杯伝えてきたつもりだった。でも……カイナル様には、足りなかったみたい。
「どうして?」
「どうしても!! 恥ずかしくて言えるわけないでしょ」
恥ずかしいからのくだりは、小さい声でボソボソと投げやりに言ったけど、当然カイナル様には聞こえてるわけで……
「恥ずかしいのか?」
(再確認してきたよ〜あれ?)
尋ねる声は、とても穏やかで優しかった。監禁コース回避出来たことにホッとする場面なのに、私は小さく頷くしか出来なかった。代わりに、全身の血が顔に集まってる。絶対、今私の顔も耳も首も真っ赤になってるよ。
軽くテンパってる私を、今度は拘束ではなく包み込むように、ギュッとカイナル様は抱き締めた。全然苦しくない。抱き締められていることに変わりはないのに、私の全部がほんわかと暖まる。
(大事にしてくれてる気持ちが体温からも伝わって来るのって、幸せだよね)
「……まるで猫のようだな、シアは。いいか、あまり危険な真似をするな。だが、我慢する必要はない。したいようにすればいい。俺の弁当をゆっくり味わうためにな」
少し間があいたあと、カイナル様はやや低い声で注意してきた。許可が出て一安心。止めても聞かないって分かってるかね。それに、自分のために私が動くことを知ったから、尚更止めれないよね。
「分かりました、カイナル様。気を付けます」
気を付けながら、確実に、そして徹底的に潰します。




