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前から思っていましたよ


「ユリシア嬢はいるだろうか?」


 例の件があってから、生徒会長が昼休みと放課後に、何度も何度も一年の教室にやって来る。


 生徒会長が用事があってこれない日は、他の生徒会役員が私を呼びに来る。皆他学年、それも生徒会長がやって来るから、目立つ目立つ。憶測もあいまって、やっと下火になってきたのに、また変な噂が立ち始めた。心底迷惑。極力関わりたくない。


 何度も対面して、きっぱりと断ったんだよ。もう、生徒会室に行くつもりもないし、勿論、入るつもりもないってね。なのに、しつこくてしつこくて、ほんとうんざり。下手な言い訳ばかり主張して、私の話なんて聞いてない。始めから、聞く気なんてないのよ。今は少し回数が減ったからまだマシな方。今日も昼休みに、()りずにやって来た。


 生徒会長が、そこまでする気持ちも分からなくもないの。


 だって、私だけでなく、アジル殿下もスノア王女殿下も生徒会に入らなかったからね。私と同様に、あの独りよがりの自己中男に怒りが湧いて、あの後直ぐに帰ったんだって。


 つまり今年は、編入試験トップ三全員が生徒会に入らなかったことになる。


 それだけでも異常事態なのに、そのうち二人が王族ときた。王族全員、生徒会役員になってると聞いたしね。慣習を重んじる生徒会としては、なんとしても役員になってもらわないと、今学期の生徒会の沽券に関わるよね。後々、黒歴史として語られるんじゃないかな。


 なので、私は兎も角、なんとしても、アジル殿下とスノア王女殿下だけは、生徒会に入ってもらわないと困る。それはそれで、失礼な話だよ。


 アジル殿下もスノア王女殿下も、それを踏まえた上で断っているの。何度もね。その心情を汲み取ろうとしないんだから、駄目に決まってる。


(根本から食い違ってるんだよね)


 だって、生徒会長が頭を下げたのに、当の本人は一切姿を見せないんだから。そもそもさぁ……謝罪の言葉って、代行するものなの? 私の中で、その考えは全くなかったわ。訊いてはないけど、アジル殿下もスノア王女殿下も同じ所で引っ掛かってると思う。


 それだけならまだしも、何度も来れば、謝罪は建前で、別の意図が嫌でも見えてくる。それが尚更、駄目だって気付かないのかな? ここまで来ると、いっそう清々しいわ。


 どんな方法を使っても、私から「許す」という言葉さえ取れれば、両殿下が生徒会に入ってくれると信じてるのも凄い。生徒会長でさえ、根本的な問題と失言を理解していない。


 お花畑の頭っていうか……平民舐めてる? 


 貴族だから、少しばかり無理強いしても、数で押せば許されると確信しているのが見え見え。違ったとしても、そう思わせるような行動を取り続けてるんだから、そう思われても仕方ないよね。


「ほんと、何が、生徒会室で謝罪したいよ。ないわ〜」


 昼休み開始のチャイムとともに教室から脱出した私は、校舎の陰でひっそりと毒吐く。


「今日も来てたわよ」


 そう教えてくれながら、スノア王女殿下は教室に忘れてしまった私のお弁当を手渡してくれた。


(わざわざ持って来てくれたんだ、優しいな)


「ありがとうございます!! 助かりました。逃げ出すのを優先したら忘れてしまって、取りに戻れないし、困っていました」


 カイナル様が用意してくれた手作り弁当。食べなかったら、色々追求されるか、体調が悪いと勘違いされて、お医者様を呼ばれてしまう。サンドイッチに変えてほしいってお願いしただけで、一悶着あったんだよね。(なだ)めるの、本当に苦労したんだから。


「いつまで、続けるつもりかしら?」


 憤慨した様子で、スノア王女殿下は言う。


「そんなの決まってますよ。アジル殿下とスノア王女殿下が生徒会入りするまで続きます」


 行儀が悪いけど、時間がないので、サンドイッチを頬張りながら答える。


「入ってと言わないのですね」


 スノア王女殿下の意図が分からなくて、私は首を傾げる。


「何故、言わなければならないのですか? スノア王女殿下自身が決めた事を、私がどうこう言えませんよ。それに、私の立場を思って入ろうと決めたのなら、私は生徒会室に乗り込んででも止めますよ。だって、大事な友人が、自分のせいで犠牲になって嬉しいと思いますか?」


「……私が友人?」


(そんなに吃驚すること言ったかな? さすがに、不敬罪って言わないよね)


「違いますか? 私は前からそう思っていました」


「そう……」


(嫌だとは思ってなさそう、よかった)


「生徒会の件に戻りますが、遅かれ早かれ、私は出て行ったと思います。正直、あの考えと態度には付いてはいけません。始めから、私を馬鹿にしていましたから。だから、スノア王女殿下は気にしないで下さい。アジル殿下にも、伝えてくれると助かります」


 正直な気持ちを口にすると、何故か、スノア王女殿下がデレた。


(あっ、可愛い!!)


 ホワイトライオンの耳がピクピクしてる。触りたいな〜でも触ったら、確実に色んな意味で人生が終わる。危ない危ない。鉄格子と鎖が一瞬見えたわ。

 


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