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ヤンデレ狼の英雄様に、無理矢理番にされました〜それでは、デスゲームを始めましょうか〜  作者: 井藤 美樹


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13/71

特別な呼び名

ヤンデレ度★★★☆☆


「今日は、派手に啖呵(たんか)を切ったみたいだな」


 一緒に夕食を食べた後、まったりと休んでいたら、当たり前のように隣に座ったカイナル様に切り出された。


(話してないんだけどね……)


 あの三年生、悪意アリアリだったものね。魔法具が作動したみたい。これは映像の方も記録されてるわね。伯爵令嬢の件で分かってはいたけど、悪意が絡んだら、全てが筒抜けになるのね。会話もマジで全部聞かれてる。監視の目が付いてても驚かないわ。


「……私も子供ですからね、それゃあ、勝手な思い込みされたら怒りますよ。だからといって、何もしないで下さいね」


 一応、釘を刺しておく。


 監視云々(うんぬん)は、考えるの止めとこう。確実に、自分にダメージがくるわ。ここはスルーして、カイナル様との会話に重点をおくのが正解ね。


「ユリシアが怒るのも無理はないな。分かっている、手は出さない。大事な番の願いだから我慢する」


(ほんとかな。でも、ここは信じるしかないよね)


 まったりとくつろいでいるのに、カイナル様は有無を言わせずに抱き上げ、自分の膝に乗せた。そして、恒例の匂いのチェック。もうお風呂に入ってるのに、獣人には通用しないみたい。


 うん、これもいつもの事。もう慣れたわ。私が夢を語った日から、毎日チェックされている。匂いで安心してるようね。


 前に一度、恥ずかしいから止めてってお願いしたら、子犬のような目をしてきたよ。耳も横に倒して、尻尾も揺れないの。ほんと、ズルいよね。それを見たら、強く言えなくなる。簡単に(ほださ)れる私もチョロいけど、動物好きだからしょうがないよね。 


「……スノア王女殿下の匂いがする」


 不機嫌な声が頭上からした。


「そりゃあ、しますよ。私を護って、気にかけてくれてるんだから」


「それでも、距離が近過ぎると思うが」


「カイナル様は、私から、数少ない友人を奪うつもりですか?」


「そのつもりはない。だが……」


(全然、納得してないわね、カイナル様)


「そもそも、スノア王女殿下は女性ですよ。何故、そこまで嫌がるんですか?」


(これがアジル殿下なら、まだ話は分かるけど)


「……ユリシア、獣人はそういうものだ。いや違うな、正確に言うと、俺はその傾向が特に強い」


(なるほど)

 

 狼獣人だからかな。狼って、常に、自分の群れの中から番を出さないって聞くし……だとしたら、カイナル様は、私が学園に通うせいで寂しい想いをしているのかも。口にはしないけど、心理的負担になっているかもしれない。それが溜まり続けると――


(ガス抜きしないといけないわね)


 ここで「信用して下さい」って言っても、本能や習性の部分が強く出ているカイナル様には通じない。どうしようかな……カイナル様と私だけの特別な物があれば、安心するのかな? 少しは不安が消えるのかな?


「カイナル様は、私が学園に通うようになって寂しいですか?」


 うだうだと考えてドツボに()まるなら、ど直球で訊いてやる。


「正直に言えば、寂しいよ。でも……それよりも、ユリシアの楽しそうな顔を間近で見るのが好きなんだ」


 超イケメンの寂しそうな微笑み。私以外なら赤面ものだけど、私には響かないし感動もしない。


 とても良い台詞を言ってるけど、実際、魔法具をフル活動させて見てるよね。悪意に反応するものとは別に。言わなくても、簡単に想像出来るよ。


 カイナル様の闇っぽい所って、態度やちょっとした台詞にちょくちょく出てるんだよね。わざと言っているのか、それとも無意識なのか、確かめるのが怖いよ。


 それはさておき、我慢はしている事に間違いないよね。その我慢が、塵も積もって爆発した大変だよ。下手すれば、監禁コースご案内。夢を諦めなくてはならなくなる。なら、回避するしかないよね。


「そうですか……寂しいんですね。私のために我慢しているカイナル様だけに、特別なものをあげましょう」


 これが喜ばれるかは分からないけど、特別感だけはある。


「特別なもの?」


(きょとんとしているカイナル様って珍しいな)


「そうです。これから、カイナル様は私の事をシアって呼んで下さいね。実はこの呼び方、誰もしていないんです。ユリシアとかユーリと呼ばれることはあっても、シアって呼ばれたことはありません。これは、カイナル様だけの特別な――」


 言い終わらないうちに、カイナル様は私を抱っこし、そのまま寝室にゴー。ベットに下ろし寝かし付けた。寝かし付けると、黙って寝室から出て行く。


(な、何!? どういう事!?)


 混乱と困惑の中、上半身を起こすと、床に赤い斑点が扉に向かって続いていた。それをあっという間に掃除する侍女。証拠隠滅したみたいだけど、バッチリと見てるからね。


「…………とりあえず、成功したのかな?」


 その夜から、私はシアとカイナル様から呼ばれるようになった。

 


 

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