求婚されたと同時に始まるデスゲーム
新連載スタート。
ヤンデレ具合いがどこまで書けるか分かりませんが、頑張ります。
ヤンデレ度★★★★★
愛の女神レシーナ様の生誕の日、私の運命は、それは大きく、百八十度変わったの。
事の発端は、私の不注意なんだけど……そのせいで、亜人族から求婚されたの。
私に求婚してきたのは、二十代前半の白い軍服を着た白銀狼の男性。
これが、せめて十年後なら、問題にならなかったと思う。私も戸惑いはするけど、素直に将来を考えたよ。だけど、私今六歳。まだ、ギリ幼児だよ。
そんな幼児を速攻、白銀狼さんは監禁しようとしてくる。亜人族の間では、どうか知らないけど、人族でそれをしたら即アウト!! 立派な犯罪だからね!! それも、危ない方の。
この日から、無理矢理私を番認定した、白銀狼獣人の病んだ溺愛を一心に受けることになったの。
それは同時に、一つ選択を間違えれば、即監禁コース突入という、デスゲームの始まりでもあった。
死なないのにデスゲームっておかしいと思う? 私はそうは思わない。
人族が獣人に真っ向から勝負を挑んだら、ほぼ確実に負ける。能力値が段違いだからね。ましてや、私まだ幼児。だったら、もう受け入れるしかないよね。番を解消なんて出来ないんだから。
だったらせめて、自分がいる場所を護りたいと思うのは、別におかしくはないでしょ。
亜人族は番を閉じ込めたがる。
それって、監禁だよ。監禁なんて、自由と意思を奪われて死んでるのと一緒。小さな閉鎖された世界で、番だけ見て暮らすなんて、まさに地獄よ。
だから、デスゲーム。
このゲームに、完全勝利は難しいかもしれない。でもね、監禁コースは絶対嫌なの!! だからそれ一点に絞り込んで、絶対、回避方法を見付けてみせる。
そう誓ったのは、皮肉にも、誘拐され、監禁されたあとだった。初っ端から詰んでるよね、私……
そもそも、この世界は、主に竜人や獣人、エルフやドワーフなどの亜人族と人族が共存して暮らしているの。
私が暮らしている、ゼシール王国もそう。
とはいっても、居住区はそれぞれ別だけどね。
亜人族は身体的も魔力も、悔しいけど、人族より優秀だから、王国に仕えている人が多いの。だからか、王都でも上手側、つまり、王城に近い場所に居住区を構えてるわ。
反対に、人族は下手側。王都の門を中心に居住区を構えてる。
確かに、人族は能力的な面は亜人族に劣るかもしれないけど、手先の器用さと事務処理の面では亜人族を超えてるわ。なので、文官として活躍している人が多くいるの。貴族籍を持つ方もいるしね。そういった人たちは、亜人族と人族の境界にある中央区に居を構えてる。
中央区は、亜人族と人族が共に生活している場所なの。
私の両親が営む食堂もここにあるわ。結構、好評なんだよ。よく、獣人の騎士様や兵士さんたちがご飯を食べに来るわ。ピクピクと動く耳とモフモフな尻尾と一緒にね。触りたいけど、触ったらいけないの。尻尾や耳を触れるのは、身内か番だけ。それ以外の人が触ると、最悪、手を切り落とされることもある。それほど、大事な場所なの。だから、私も店を手伝う時は注意してる。
色々な文化の違いはあるけど、最低限のことさえ把握してれば、仲良しの隣人さんなんだよね。騎士様たちは景気よくお金落としてくれるし。
そんな平和な中央区も、一日だけ様子がガラリと変わる日があるの。
それが、愛の女神レシーナ様の生誕の日。
亜人族が公に番を求めることができる唯一の日なの。
この日だけは、王都全体がお祭り騒ぎですっごく賑やかだよ。地方からも沢山の人が押し寄せて来るからね。でもね、中央区だけは戦場になるの。
番を求める亜人族。
そして、番になりたい亜人族と人族。
武器や魔法は使わないけど、参加者たちにとっては将来が掛かってるからね……そりゃあもう、バチバチものだよ。
まさに、死者が出ない戦場だね。
どうして私が知っているかって、参加はしてないけど、店内の大掃除をしているからだよ。私の妹以外、お父さんもお母さんもお兄ちゃんもお姉ちゃんも手伝えない。間違って、選ばれてしまう可能性があるからね。
だから、妻帯者や婚約者、恋人がいる人族は、始めからこの儀式には参加しないの。中央区から避難して、祭りを楽しんでる。
それが大半なんだけどね……中には、この儀式の日以外に番を見付けて、この儀式に参加するよう導く強者もいるって話を聞いたことがある。私には少し理解し難い世界だよ、怖いよね……
それくらい、亜人族にとって、番という存在は憧れで唯一無二なんだと思う。友達の中にも、憧れている子いるし。
その憧れを否定する気はないけど、例え優雅な生活がおくれたとしても、私は好き好んで、そんな世界に飛び込もうとは思わないけどね。貧乏なら働けばいいだけだし。人間、手に取れる物って限られてると思うしね。大人になっても、たぶん考えは変わらないと思う。
床をモップで水拭きしていると、ドア越しに騒がしい声が聞こえてきた。手を止め、ドアを見る。
(あ〜また、泣いてる)
激しい怒声と泣き声。今日だけは、中央区は至る所でこの状態。
(喧嘩でもしてるのかな? ドア壊さないでよ。あっ、静かになった)
これで、安心して掃除が再開できるわ。でも、安心したらいけなかったんだよね。
再開して間もなくだった。ドアをノックする音が聞こえたの。ドンドンじゃなくて、コンコンだったから、反射的にドアを開けてしまった。開けた後で、大後悔。
(あ〜やっちゃった!!)
家族皆から、絶対ドアを開けるなって言われてたわ。
ドアの入口に、白銀の耳とモフモフ尻尾の騎士服を着た獣人さんが、片膝を地面に付いて私を潤んだ目で見ていた。その手には、女神レシーナ様を象徴する白百合。それを受け取ったら最後、番を承諾したことになる。
「あ……やっと出会えた、私の運命の番。さぁ、私の屋敷へ一緒に帰ろう」
恍惚な表情でプロポーズする騎士様。
人間、許容範囲以上のことが起きたら冷静になるんだね。それが、幸いしたよ。
「お断りします。その花もいりません」
きっぱりと断ると、私はドアを勢いよく閉めた。勿論、鍵も閉めたよ。ついでに、換気していた窓も全部閉めた。ここで、ようやく一息吐く私。
この時の私は、これで済んだと思ってた。
「何故だ!?」
そう泣き叫びながら、騎士様はドアを激しく叩く。木製のドアがミシミシと悲鳴を上げている。私の心臓にも悪いよ。私はドア越しに力一杯叫んだ。
「私はまだ六歳です!! 子供です!! そもそも、結婚なんて無理です!! 諦めて、帰って下さい!!」
(普通に犯罪でしょ。私、まだ六歳だよ)
「ならば、せめて婚約でも!!」
(しつこい!!)
「絶対に嫌です!! 今すぐ、帰って下さい!!」
(断固拒否。この歳で、未来を決められるなんて絶対嫌!! 私にも、夢があるんだから)
そんな攻防が何分か続いて、ふと、表が静かになったの。
(大人しく帰ったかな?)
そんなことを思いながらドアを開けたのが、間違いだったの。ううん、違うわ。今日、大掃除に来たのが間違いだったの。
恐る恐るドアを開けた先に、白い壁がそびえ立つ。ビクビクしながら顔を上げると、無表情の騎士様が私を見下ろしていた。
無言のまま、騎士様の手が私に伸びる――
私が覚えているのは、そこまでだった。
そして始まるの、監禁生活が。
私が選択を間違えたから。でも、まだ回避できる可能性はどこかにあるはずよ!! せめて、監禁されない生活を手に入れてみせる!!




