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第3話 蠢動

美琴のクラスメイトのすずは、陽キャたちから陰湿ないじめを受けていた。

それを告白するすずの周り異質な出来事が発生する―—

美琴は、水見の巫女として向き合うのか。

物語は序章に向かって動き出す。

「美琴、もお帰れる。」

奈津が帰り際声をかけてきた、

「うん、もう帰るよ。カラオケいく。」

お勤めにはまだ間があるし、今日は少し羽目を外したい気分だ。

「じゃぁ、他だれか誘おうか。」

2人でそんな話をしながら歩いていると、踊り場で一人の子に、ぶつかりそうになった。

「あ、ごめん。大丈夫。」

同じクラスのすずだ。

いつも読書をしていて、おとなしく、控えめな子というイメージだ。

グループワークなどで一緒になった際は、書記などを進んでしてくれていつも助かっている。

「あ、そうだ、すずもいかない。」

ほんとに思い付きで何となく誘ってしまった。

いつも遊んでいるというわけでもなく、

「まじめなすずなのに来るかな。」

と一瞬思ってしまった。

しかし、なんとなく気になったのだ。

「ねえ、行こうよ。」

「面白いね、たまにはいいじゃん。」

奈津も乗り気だ。

その後は嫌がるすずを半ば強引に連れていくことにした。

「カラオ2時間、ワンドリンクで。」

カラオケ店に入ると、奈津はノリノリだ。

最近はやりのアップテンポの曲をノリノリで歌いだす。

私も負けじと人気アイドルのダンスナンバーを振り付きで歌った。

「次、すずの番だよ。」

恥ずかしがるすずに無理やり選曲させ手拍子をする。

最近はやりのPOPソングだ。

無難な選曲だ。

決して上手とは言えないが、一生懸命歌っている。

奈津なんかはノリノリで盛り上げている。

それに、ますます赤面しながらすずが歌っている。

「意外と歌えるじゃん。いい感じだったよ。」

奈津がそう言ってすずに次の曲を促している。

「そういえば、涼香ちゃんたちとも来るの。」

何気に、思いついたことを訪ねただけだ。

なんの悪気もない、他愛もない世間話。

そんなはずだった。

しかし、打ち解けていたすずの表情が一変した。

「いかないよ。」

「え、なんで仲良さそうにしてるじゃん。」

涼香というのは同じクラスの派手目な陽キャ女子の中心的な存在の子だ。

なぜだか、昼休みや教室の移動など事あるごとにすずを呼んでいつも一緒にいる。

それ以外は本を読んでいることが多いすずだから余計仲良さそうに見える。

「そんなことないって言ってるじゃん。」

急に、取り乱したようにすずがさけんだ。

「なんかごめん。いこと言った私。」

急いですずに取り繕おうとしたその時。

頭の中で何かが、ぐわんっと揺れた気がした。

一瞬目の前が揺れたと思うと信じられないことがおきた。

急に動揺して泣き出したすずの目の前にスクリーンのように薄い水面が現れたのだ。

それと同時に周りの音がくぐもって聞こえまるで水の中の様な感覚に陥った。

奈津は、すずの横で慰めている。

2人とも気付いている様子はない。

2、3度、目をしばたかせてすずを見てみる。

やっぱり、水の薄い膜の様なものがすずの前で揺れている。

そうしているうちに、すずが落ち着いてきた。

それと呼応するように水の膜が徐々に薄くなり、最後は泡のように消えてしまった。

しばらく、あっけにとられてしまった。

「聞いている、美琴もなんか言って。」

奈津の声で我に返った。

どうも、しばらくの間茫然としていたようだ。

おそらく、急に泣き出したすずにびっくりしたようにとられただろう。

慌てて、すずに話しかける。

「ごめん、なんか気に障ったこと言っちゃったみたいで。」

「私たちでよかったら、話聞かせて。」

取り繕うと同時に、

「何かが起こっている。このまま返すわけにはいかない。」

そう、美琴の中の何かが告げていた。

その後もなだめるようにすずに話しかけ続けると、ようやく重い口を開くようにすずが話し出した。

事の発端は、進級して間もないころ、涼香が課題のノートを忘れて困っていたところに、声をかけたことがきっかけらしい。

その日、涼香は課題のノートを忘れたのに授業直前で気付いたらしい。

いつものように自分の席で本を読んでいたすずは、何気なくその様子に気づいた。

いつものすずなら話しかけなかったかもしれないが、進級してすぐ、クラスになじみたいという気持ちもあり、陽キャの涼香に思い切って話しかけた。

「あの良かったら、要点だけでも今のうちに写す。」

世界史の授業の富田は、陰険で課題などにうるさいことは知られていた。

涼香としても進級そうそうの授業で焦っているところにかなり助かったことだろう。

「ありがとう、かしてもらっていいかな。」

こうして、陽キャの涼香とおとなしめのすずが会話をするようになる。

はじめは、授業の分からないところや、レポートについての相談だけだった。

しかし、だんだん休み時間なども誘われるようになり一緒にいることが多くなる。

はじめは、すずもうれしかったらしい。

しかし、しばらくすると関係がこじれていった。

もともと、だれとでも明るく話し周りも派手目の子ばかりのグループで、すずは徐々に浮いてくるようになる。はじめは何かあると涼香がフォローをいれていたらしいのだが、それも時間が過ぎてくると、

「この子なんなの、ちょっと勉強ができるからって、私たちがいないとまともに学校で過ごせないじゃん。」

ほかの陽キャメンバーからそういう声が聞こえるようになってきた。

「ま良いじゃん、すずはすずで私たちに尽くしてくれるし、ね。」

そうフォローする涼香に感謝していたとのこと。

「私だって、いっぱいお話したいし、みんなと一緒にいたいけど、足引っ張てるの分かるから。

そう、ぽつぽつと話す、すずの眼には涙があふれたままだ。

決定的な事件が起きたのはつい最近の事らしい。

ある日、放課後図書室で自習をしていたすずの元に一人の男子生徒が話しかけてきた。

「君、2組の渡瀬さんだろ。涼香に勉強教えてるんだって。」

話しかけてきたのは5組の相田 亮 一部の女子の間ですごい人気のある男子生徒だということは、そういう事に疎いすずにもすぐわかった。

どうも、涼香との話の中で聞いたらしく勉強を教えてほしいとのことだった。

あまりに一生懸命に頼んでくる相田に、すずは根負けして放課後、図書室で勉強を教えることになった。

勉強を教えることは何も問題なかった。男子生徒とあまりしゃべったことが無かったすずは、初めは戸惑ったが、人懐っこい相田の性格もあって1週間ほどすると冗談も言い合うような関係になったとのことだ。

しかし、これが悪かった、相田は一部の女子、特に陽キャ女子の間では非常に人気で涼香も前々から狙っており、積極的に話しかけていたのだった。

2人の関係は一部の女子の間ですぐに噂になり、その噂は直ぐに涼香の耳に届いた。

「あんた、どういうつもり。いい度胸してるじゃない。」

ある日の放課後、呼び出されたすずはそう言って涼香を筆頭に、陽キャ女子たちから詰め寄られたとのことだ。

「そんなの、言いがかりじゃない。だったら付き合い辞めればいいでしょ。」

思わず、そう、すずに詰め寄ってしまった。

「私を無視すると、相田君の印象が悪くなるかもしれないから。」

なるほど、仲のいいふりを続けたまま、陰ですずはいじめらていたのだ。

それにしてもさっきのは何だったのだろう。

すずの感情の高鳴りと共に噴出したように感じた。

「このままにはしておけない。」

「私が何とかしなければ。きっと悪いことが起こる。」

奈津やすず本人にも何も見えていないようだった。

そもそも何も感じていないだろう。

しかし、感じられるようになった時、取り返しがつかなくなる。

そう確信めいた思いが美琴の中からこみあげてきた。

それと一緒に、詔を上げる時のあの感覚が体の中心から膨れ上がってくるのも感じた。

「やっぱり私が何とかする。」

そう決心して、すずの頭を優しく抱きしめた。


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