第1話 Labyrinth
小谷一花と出会い
何かが変わっていくのを感じた主人公、神崎悠太。
どうにか彼女に近づきたい思いを募らせていく悠太は
その思いのまま行動する。
果たして、悠太は一花へ近づく事は出来るのか。
そして、悠太が感じたあの感情とはなんなのか。
愛ね、暗いね、君の隣
第1話 Labyrinth
「初めまして!一花です!よろしくね、悠太くん!」
悠太は“彼女”に落ちた。
この時彼はきっと確実に落ちたのだろう。
それも彼にとって何年ぶりかの、いや、初めてのことだったかもしれない。それはあまりにも暖かく眩しく、冷えた心が溶かされていくような笑顔だった。
あ、これは、やばいーー。
何だこの子。なんなんだ。眩しいってか、可愛すぎる。
てか、何だこの感情は。懐かしいような、でもどこか胸が締め付けられるような。これはーー。
そこまで考えて、悠太は考えるのをやめた。
というより辞めざるおえなかった。
「悠太くん?ゆーうーたーくーん!!萌香と一花にお酒奢って!」
萌香は悠太に2人分のお酒を頼んできた。
正直この時彼は全く頭が回っていなかったのだろう。
「あ、うん。BARカウンター行こうか」
いつもより明らかに滞った口調。
いつもの様に発することの出来ない言葉。
悠太はこの異様な状態に心底謎の嫌気がさしていた。
なんなんだよ。全く。調子狂うな、この子。
そうして、悠太は一旦ふたりと離れ、一人《CUBE》の壁にもたれかかりながらお酒を片手に考え事を始めた。
どうする?あの子狙うか?いや、リスクがありすぎる。
そもそも今日であったのはたまたまだけど別に普段から
《CUBE》に来る子なのか?どうなんだ。分からない。
萌香ちゃんの友達なのは確かだ。じゃあ連絡先だけ交換するか?いや、それもリスキーなのか?いや、どうする……。。
悠太が1人考えていると目の前に気付けば一花が居た。
「やっほい、悠太くんって《CUBE》よく来るの??」
何気ない笑顔、きっとそれは誰に向けられたものでもなく、彼女本来の普通の笑顔なのだろう。
悠太にはそれは眩しかった。とても、眩しかったのだ。
「あー、うん。基本よくいるよ、それ以外することないし、暇だしね。」
何気ない返事だが、その声はどこか強ばり、どこか、単調的だった。
「あ、そーなんだ?じゃあ、悠太くん、遊び人なんだね?」
クスッと聞こえてきそうなほど緩やかな笑みと共に核心を突かれたような言葉に悠太はしどろもどろになってしまった。
「そ、そ、そんなことないよ!!」
明らかに変な詰まりに一花は笑っていた。
悠太は自分がいつも通りに出来ていないことに気づいていたがなぜだかなにも変えれなかった。
「そっか、そっか、そういうことにしとこうか」
一花は微笑みながらそう言っていたが、悠太にとってそれは心を暖めるには十分すぎるものだった。
この子、なんなんだよ。俺、どうした?いつもと違う。
なんか、むず痒いな。この感覚。
でもなんか懐かしいようなーー。
悠太が、自身の中に篭もるその感情を理解するのは
まだ先のようだった。
「一花ちゃん、連絡先交換しない?」
気づけば口がそう動いていた。
本当に何も意識せず、気づけばそう動いていたのだ。
今までの悠太とは明らかに違う
それまでとは、かけ離れた行動だった。
「え?うん!いいよ!これ、QR!」
差し出された携帯に自分の携帯を合わせる。
そうして悠太と一花は連絡先を交換した。
「ありがとう、また連絡するね」
悠太は冷えた心が溶けていくような。
そんな自分にはよく分からない淡い感情を抱いていた。
「うん!じゃあ、私萌香達のとこ戻るから〜」
そう言って去っていく一花の後ろ姿を
悠太はただ眺めていた。
悠太の中の慌ただしい感情の流れが緩やかになってきた時。
彼はまた、1人。考え事を始めた。
あの子に抱く俺のこの感情を俺は本来知ってる。
でも、それが何だか本当に思い出せない。
この感覚は懐かしいと思える。つまり、それはきっと。
そうか。この感情はあれか。わかった。
これは恋だ。
俺はその日、小谷 一花に一目惚れをした。
現代のアートはとても自由な方向性になってきています。
それは自由の主張の象徴とも言える事なのですがーー。
はぁ、まじでクソつまらん授業ばっかりだ。
「よっ!悠太、おつかれ!」
こいつは大学の友達、野川 紅哉。
ラーメン屋でアルバイトしている。謎に仲がいい友達だ。
「おつかれ〜。お前、授業中なのに声デケェよ。」
こいつとは、大学に入った時から腐れ縁のような関係で
たまにラーメン屋に顔を出して
悠太がタダでラーメンを食べたりしている。
「今日俺バイトやけどバ先くる??」
紅哉が悠太に問いかけるが、
悠太は昨日の一件から上の空だった。
「おーーい???悠太?どうした??」
あまりにも意識がこちらに向いていないと思ったのか。
紅哉は悠太に再び問いかけた。
「あー、いや、紅哉に質問なんだけど、恋ってどこからが恋??」
少しの間、空白の時間が流れ、悠太が隣の紅哉を見ると
紅哉は嫌悪感ダダ漏れの顔をしていた。
「えぇ。えぇ??きっっっっも。えぇ。きもぉ。お前。」
「いや、言い過ぎだろ。それは。」
紅哉は悠太とは違う【遊び人】だ。
いわゆる、“そういう関係”のひとが何人もいる。
そういう意味でもふたりは波長が合い、仲が良かった。
「いやいやいや、お前が恋とか発するなよ。きめぇよ。大体、どうしたんだよ急に。5年付き合ってた彼女と別れてから恋とかそういうの、もうしなくなっただろ。」
悠太は大学2年の2月まで、彼女がいた。
付き合った期間はとても長く5年にも及ぶ。
その頃の悠太は一切女遊びもせず
男友達との予定もつくらないほど一途で
普通な健全な男だった。
「いやぁ、実は俺《CUBE》で出会った子に一目惚れしたっぽい。それも昨日。」
また、少しの間。空白の時間が流れた。
隣の紅哉はやはり、嫌悪感ダダ漏れの顔をしていた。
「なんだよ。」
悠太は少しイラつきながら紅哉に問いかけた。
「うん。なんつうか。きもい。そして、悪いことは言わないから《CUBE》で知り合った女に本気で恋なんかやめとけ。」
紅哉の言っていることは正しいのかもしれない。
《CUBE》のようないわゆるnight clubに来る人の何割が
真面目に恋人を探しているだろう。
きっと憶測だが、それは限りなく、0に近いと思う。
それでも、悠太の中の感情は訴えかけていた。
心から好きだと。
「そんなの、俺だってわかってるんだけどなぁ。なんて言うか。その子のこと頭から離れないんだよ。なんでか分からないけど。」
悠太は直感的に言葉を発していた。
その言葉に嘘偽りはきっとない。
「じゃあ、聞くけど、一目惚れって“どこ”に惚れたんだよ。」
紅哉は不思議そうに悠太に尋ねた。
「んー。どこって言うか。んー、全部?」
尋ねられ、率直に感じたことを悠太はそのまま伝えた。
「はぁ?全部??なんだその曖昧なのは。そんなのは恋じゃねぇよバーカ。」
紅哉は、少し笑いながら悠太の言葉を一蹴した。
んー。“どこ”が好きかぁ。
その問いに悩みながら悠太は昨日のことを思い出す。
初めまして!小谷一花です!よろしくねーー。
あ。分かった。あれだ。
「あ、分かったわ。“どこ”が好きか。」
悠太は昨日のことを思い出して自分の心に決定的に、直接的に、“触れられた瞬間”を思い出した。
「なんや。言うてみい。」
なんだよそのコテコテの関西弁。
そう思いながらも悠太は答えた。
「“笑顔”。なんて言うか、破壊力?高め??というか、無邪気?純粋?癒し??笑顔と言うより微笑み??」
何故か全て疑問詞になりながら悠太は紅哉に伝えた。
「うん、ごめん、なんかやっぱキモイ。めっちゃキモイ。」
紅哉は嫌悪感がどんどん強くなっているようだった。
しかし、二人の関係はそんな緩いものでは無い。
「まぁ、でも、お前が珍しくそんな真剣に恋って思えんなら、ガチなんじゃねぇの。知らねぇけど俺は。でも、遊ばれんなよ。お前が遊ばれんのはなんか居心地わりぃわ。」
紅哉の嫌悪感ダダ漏れの中にも感じる冷静な客観視を悠太は心に留めていた。
「まぁ、そうだよな。とりあえず、連絡先は交換したし、適当に連絡してみるわ。あとラーメン食いに行くわ今日。」
「結局来んのかよ、りょうかい」
2人は授業中ほとんど会話しながらその時間を過ごした。
『昨日ありがとな〜!また来る時教えて〜!』
大学が終わり、悠太は気がつけば一花に連絡していた。
『こちらこそ!お酒ご馳走様ですー!』
一花からの返信で悠太は何故か自分の心が踊るのを感じた。
『いえいえー!全然大丈夫よ!今日も行くのー?笑』
悠太はどうしても、一花に会いたくて仕方がなかった。
『行かんよ!笑 今日はバイトー』
『行かんのや!笑 毎日行ってんのかと思ったわ!笑笑
なんのバイトしてんのー??』
『居酒屋だよ!笑 毎日じゃないよさすがに爆笑』
『おぉー!いいね!笑 さすがに違うか笑笑』
その日、会話はそこで途切れてしまった。
あー、一花ちゃんから連絡来ねぇーー。くっそーー。
悠太は、1度会話が止まった相手に自分から連絡するようなタイプでは無い。だが、この時は追い連絡をするか迷っていた。
どうする??追い連絡入れるか??くっそ、迷う。でも、ほぼ初対面でガツガツ行くのはキモイか??どーすんだよー
おれー。
悠太が悩んでいた時、紅哉の言葉を思い出した。
まぁ、でも、お前が珍しくそんな真剣に恋って思えんなら、ガチなんじゃねぇのーー。
おい俺。ガチなのに悩んでどうする。バカか。
悠太は意を決して、追い連絡を入れた。
『今日、《CUBE》くるー??』
『いかなーい、今日もバイトなのー』
『そっかー、ざんねーん。』
悠太は一花に合計3度連絡したが、一花が《CUBE》に来ることは無かった。
その頃にはもう悠太は一花の事をそこまで深く考えなくなっていた。
恋なんてのは間違いだった。
あの時のあれは、ただの感情の昂りだ。
悠太の心を溶かした熱は冷めかけていた。
それからしばらく悠太は《CUBE》に行かなかった。
ー1週間後ー
『悠太、お疲れ、今日《CUBE》行くからお前も来いよ〜』
『健吾さん。お疲れ様です。了解です、また《CUBE》で』
健吾とは。
悠太が《CUBE》で出会い、可愛がって貰っている先輩だ。
悠太はそんな先輩や可愛がっている後輩からの遊びの誘いを断ることは無かった。
街の喧騒。
このエリアはいつもカオスだな。やっぱり。
悠太はこの日。
健吾に誘われて《CUBE》へ約1週間ぶりに訪れた。
「健吾さん!お久しぶりです!今日は呼んでもらってありがとうございます!」
悠太は《CUBE》に先に入っていた健吾と合流に挨拶した。
「おぉ、悠太、久しぶり、おつかれー、とりあえずテキーラいっとくか!」
健吾はかなりの酒豪だ。それでいて羽振りもいい。
悠太は健吾に呼ばれた時大抵、お酒をご馳走になっている。
「いつも、ありがとうございます!任せてくださいよ!いっちゃいましょう!!」
悠太もかなり飲める方ではあるが自分であまり強く飲まない方だった。
健吾と《CUBE》にいる時は悠太も沢山飲むようにしている
悠太と健吾がBARカウンターへ行き、ある程度お酒を飲んでいた時。2人組の女性が、声をかけてきた。
「お兄さーん、私たちにもお酒奢って欲しいなぁ?」
使い慣れた上目遣い。胸元の開いた服。耳に残る高い声。
悠太はこういう女性をよく知っている。
あ〜これは、典型的なタイプだな。
これは《CUBE》によくいる量産型。奢られ女子。
つーか、右の子かわいいな。わんちゃんーーー。
「おい、悠太、どーするよ。」
悠太が2人組を冷静に見極めていると
健吾が横で耳打ちしてきた。
「健吾さんに任せますよ、2:2で分かれるなら右の子は僕にください、持って帰ります」
即座に耳打ちをし返すと健吾は軽く頷いた。
「2人だけで何話してんの〜、お酒奢ってくれるの??」
左側の子はやけに積極的だった。
こいつ、なんでそんなに積極的なんだよ、鏡みてこい。
悠太はいつも通りクズ言動を脳内処理していると
健吾が会話を進めた。
「あー、ごめんごめん、2人とも奢るよ、左の子は俺と来てよ、右の子はこいつと並んだって!」
軽く肩を押された悠太は
右の子の至近距離まで押し出された。
「おっと、ごめん、行こ?着いてきてくれる?」
「うん、ありがとう〜」
悠太はその右の子の手を優しく引いて健吾がいる所とは別のBARカウンターへ向かった。
悠太と右の子はBARカウンターで並んでいた時
会話をしていた。
「初めまして、おれは悠太っていいます、軽く悠太とか呼んでね」
右の子に軽く視線を送りながら、悠太は自己紹介をした。
「あ、うん、悠太くんね、りょーかーい、私、陽菜乃〜よろしくね〜。」
陽菜乃は一切こちらを見ずに返答した
全く気持ちが入ってない返事に悠太は少しイラついた。
なんだこの女、酒奢ってくれたら誰でもいいんじゃねぇか。
腹立つな。落とすか。
悠太はそっと陽菜乃の腰に手を回し、自分の方へ引き寄せた
「ねぇ、さすがに素っ気なくないかな?あんまりからかわれると傷つくよ??」
悠太は陽菜乃を見つめて伝えた。
「えー、ごめんごめん、許してよ〜。私、悠太くん知ってるもん。よく女の子持ち帰ってるでしょ〜」
あ、まずい。これ顔バレしてるやつだ。
悠太は自覚はないが《CUBE》内でそれなりに有名である。
それはそうだろう。ほぼ毎日出入りしていたのだから。
「なーんだ。顔バレしてんのか、じゃあ、なーんも隠さなくていいじゃん。逆に気楽かも」
そう言いながら悠太は陽菜乃の顔に自分の顔を近づけたが
陽菜乃は自身の唇を両人差し指で×を作り塞いだ。
「だーめ。悠太くん、私の中では有名人なんだから、そんな簡単にキスなんかさせないよ?」
不敵な笑みを浮かべながらそう伝える陽菜乃はウザかった。
なんだコイツ。めんどくせぇ、だる。きっしょ。めんどくさ
「じゃあ、なにもしないよ、とりあえず、連絡先交換しようよ。」
「それは全然いいよー。」
その後2人はBARカウンターでお酒を頼み、フロアで音楽を楽しみながら、互いの友達へ合流した。
「どーだったのよ、【沼男】さんの方は」
健吾と合流した後、悠太は健吾に陽菜乃との事を聞かれた。
「なんですか、その変な2つ名。どーもこーもないですよ。顔バレしてて、連絡先だけ交換して少し話してただけです」
悠太はありのままを健吾に伝えた。
すると、健吾は少し驚いた表情をしていた。
「へぇ?あの悠太が顔バレくらいで落とせないとはね?あの子そんなに難易度高いのか〜。」
健吾は陽菜乃に関心しているように言った。
「別にそんなんじゃないですよー!ただ、めんどくさかっただけです、というか、そう言う健吾さんの方は??」
悠太はこれ以上話すこともなかった為
健吾の方へ話を振った。
「俺は、連絡先交換して、腰に手を回してくっついて何回もキスしてました、最高でした。あざすぅ。」
なぜだか、悠太は健吾にマウント発言された。
「全然いいですよ、健吾さんがいい感じなら僕は満足です。」
少し笑いながら、悠太は健吾にそう伝えた。
もちろん思ったことは心からの本心だった。
その日2人は、最後、互いの知り合った女性に挨拶をし
また明日会う約束を決め解散した。
なーんか、久々の《CUBE》楽しかったなぁ。
やっぱり好きだなぁ、ここの雰囲気。ここの空気感が。
でも、なんか。なんだろ。この足りない空白感は。
悠太はそれがなんなのか次の日、知る事になる。
ー後日ー
『悠太!多少キメてこいよ!おれは雪菜ちゃんに会うためにバッチバチで行くぜぇ!!』
家を出る少し前、健吾から来ていた連絡に悠太は笑いながらも合わせることにした。
そうして少しお洒落をして《CUBE》へ向かうのだった。
《CUBE》へ入る前に健吾と悠太は昨日のふたりと合流した
「雪菜ちゃーん!陽菜乃ちゃーん!やっほーい!」
明らかに高すぎる健吾のテンションに
昨日の2人は引いていた。
「や、やっほー。健吾くん、昨日はご馳走様!」
健吾さんが2人でいた雪菜という女性の方は引きながらも完璧な受け答えをかましていた。
あの子、もはや、プロじゃん。
悠太はそう感じながら、陽菜乃へ話しかける。
「よっ、昨日ぶり、今日も攻めますか」
全く面白くもなんともない冗談をかましたと我ながら思う。悠太だったが陽菜乃は案外ツボっていた。
「攻めるって何、私、今から何されるの〜」
4人は合流後、他愛ない会話をしながら
《CUBE》へ入るのだった。
《CUBE》へ入場した悠太達は昨日のように2人ずつではなく4人で一緒にお酒を飲んでいた。
「それでさ〜昨日、健吾くんがさぁ〜!」
「ちょ、待って待って!!雪菜ちゃんそれ以上は!!」
健吾と雪菜の夫婦漫才の真似事を見ていた
悠太と陽菜乃は笑っていた。
「このふたりお似合いだよね。なんか、羨ましいな。」
健吾と雪菜が2人で会話をし始めてから陽菜乃は独り言のように呟いた。
ふーん。そんなこと言うんだ。陽菜乃ちゃん。
悠太は陽菜乃の意外な一面を見た気がした。
「そうだね。案外、相性良さそうだし。というか、陽菜乃ちゃん、そんなこと言うんだね。」
悠太はあえて思ったことをそのまま陽菜乃へ伝えた。
「なんかそれ、ひどくない?!私の事なんだと思ってるんだー。私だって真面目に恋くらいしたいわ!」
陽菜乃は悠太の肩を軽く小突きながらツッコミを入れた。
そうしてそのまま陽菜乃が、口を開く。
「って言うか、気になったんだけど。」
「ん?なにが??」
悠太は今から何を聞かれてもいいように
万全の体制を心で整えた。
「悠太くんみたいな。【遊び人】って本気で恋するの?てか、どこからが恋なの??」
なぜだか、その言葉は悠太に重く。突き刺さった。
どこから、か。どこからなんだろう。
て言うか、恋なんてくだらないだろ。時間の無駄。
実際俺は5年間無駄にしてるし。あんなの何がいいんだ。
悠太は少し頭を悩ませて陽菜乃へ答えた。
「ん〜。どこからなんだろうね。俺もよくわかんないや。」
結局、頭の中に答えは出てこなかった。
「さすが、遊び人〜」
陽菜乃がまた軽く突っ込んだ時。
悠太がたまたま見ていたフロアの奥に
身に覚えのある人影が見えた気がした。
「ん?一花ちゃん……?」
その人影はつい最近、自らの心を溶かすような温かみをくれた“彼女”の後ろ姿だった。
「ん?悠太くん、どうしたの?」
陽菜乃の声はもう悠太に聞こえていなかった。
「ごめん、陽菜乃ちゃん。またあとで。」
「え?ちょっと!」
気づけば、悠太はその見えかけた人影に向かって
一直線に歩いていた。そうして、その後ろへ着いた時。
ずっと言いたかった言葉を素直に思わず口にしていた。
「一花ちゃん。会いたかった。」
その声を聞き振り向いた女性は。
見間違いなどではなく“彼女”だった。
というか、見間違えるはずがないだろう。
自分の心を。閉ざしていた心を。冷えきっていた心を。
溶かしかけ、扉を叩いた“彼女”を。
「悠太くん…?久しぶりだね!やっほい!」
相変わらず破壊力抜群な笑顔だな、クソが。
俺はやっぱりこの子に恋をしている。
まるで迷宮のような恋を。
小谷 一花が。そこにいた。
第1話 Labyrinth 完。
初めましての方は初めまして!
お久しぶりの方はお久しぶりです!
治崎 龍也です!
第0章からお届けが遅くなり申し訳ございません!!笑
遅れましたが第1話執筆いたしました!
いかがでしたでしょうか。少し長くなってしまいましたが。
基本のお話はこのくらいの長さで進めていきますので!
何卒よろしくお願いします!
それでは、第1話振り返っていきましょう!
⚠️ここからは該当話のネタバレが含まれます。⚠️
いやぁ、ほんとになんか、ムズムズしませんでした??
私は書いてる時からずっとムズムズしてました。笑
なんかねぇ、悠太も悠太だし、一花も一花だし、なんというかねぇ?笑
そんなこんなではありますが、第1話は0章の回想から入ります
今回、悠太は自分の気持ちを自覚し、それなりにアタックしていましたが、見事に全部かわされましたね、もうかわされすぎてなんか、ほんとに可哀想ですよほんとに。笑
一花にはきっと一花なりの
考えがあることを願っておきましょう。笑
今回から登場したキャラ【野川 紅哉】ですが、今後も頻繁に登場していきますので暖かい目で見守りくださると幸いです。
(健吾はあんまり出てこないかも…笑)
紅哉と悠太は本当に親友の間柄です。
お互い口には出してませんが
お互いそう思ってるはずです(多分。)笑
私、思うんですけど、恋ってのめり込めば、のめり込むほど
迷宮みたいじゃないですか?
ほんとダンジョンですよダンジョン。笑
それで第1話のタイトルはLabyrinthにしました。
(なんか、もうタイトル考えるだけで頭抱える……)
悠太は迷宮攻略できるんですかねー。(他人事)
つーか、【遊び人】のくせに真面目に恋してんじゃねぇよ!って思う方多いと思いますが、これからの彼の変化に期待してもらえればと思います。
メインヒロインの登場がかなり少なくなった1話でしたが
2話、3話と熱い展開待ってますのでお楽しみください!
あ、補足にはなりますがこの作品を
キネティックノベル大賞12へ応募することにしました。
この作品への私のこだわりと思いはホンモノなので。
全力でぶつけてみたいと思います!
それではこの作品が少しでも多くの方に
ご愛読されることを願って後書きとさせていただきます!
ちざき りゅうやでした!!!
※沢山の評価、コメントお待ちしております。
※どんどんバズらせてくださいお願いします!