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桜の日の約束  作者: 綾 楓桜華
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第五章 夢

前回のあらすじ:前回の小説を読むことを推奨します。

目を覚ました時、すでに十二時を過ぎていた。お母さんもお父さんも仕事なので、自分でお昼ご飯を作って食べることにした。

「まぁ、作るっていっても、カップラーメンなんだけどな。」

家に蓄えられているカップラーメンに甘えるために、ポットでお湯を沸かす。中三になったが、まともな物は何一つ作れないからだ。

「今度、簡単に作れる卵料理教えてもらおうかな。」

自分で調べて挑戦してみる、という考えは全くない。もし失敗して火事にでもなったら大変だからだ。自分だけで判断するというのは、あまりにも危険すぎる。一つの過ちが、災厄となって返ってくる。

あの時もそうだ。咲のときも、自分で判断した結果取り返しのつかないことになった。誰か、たった一人にでも相談していたら、今は違う未来になっていたかもしれない。ちゃんと誰かを頼っていたら、きっと…

ポンッと、軽い音が響き渡る。

お湯が沸けた音。立ち上る湯気がおさまる。と同時に、僕の思考も止まる。ハッと我に返った。お湯をカップに注ぎ、蓋をして、それを三分間眺める。蓋を開け、箸を持ち、麺を掬い上げ、口に入れて。そこで一言。

「粉末スープ入れ忘れた。」


味のしないカップラーメンを食べ終えた後、僕は再び寝ることにした。他にやることがないからだ。携帯やゲームを使おうと思えば使えるが、それは少しだけリスクがある。バレたら取り上げられる可能性があるのだ。僕の部屋には防犯カメラが設置されてある。もともとは僕がちゃんと寝れているか見るための物だったが、お父さんがそれを使って普段の行動までたまに見張るようになったのだ。だから、今日は大人しく寝る。

「寝ると思い出すんだよな。」

たまに、咲が夢に出てくる。その度に、起きた後に苦痛を味わう。

でも、これはきっと僕への罰なのだ。咲はきっと、これ以上に苦しんだはずだ。

僕のせいで。

もしも、僕が出会いさえしなければ。

ここから先の考えは、眠りに落ちると同時に記憶から零れ落ちた。

これ以上考えたらきっと。

僕は、壊れる。


空が、赤かった。

深紅の煙のようなものに覆われていた。

僕は今走っている。咲と舞と、あと二人の友達と一緒に。

突然の異常に、学校の生徒達は慌てている。存在しない安全な場所へと非難するため、走り回っている。

その混乱に巻き込まれ、僕と咲は舞達とはぐれてしまった。必死に追いかけるが、人混みに呑まれ追いつけない。

音楽室、美術室、体育館、空き教室。どこを探しても舞達は見つからなかった。

ふと、舞ならきっとあの場所にいるんじゃないかと思い、僕と咲は急いであの場所に向かった。

屋上に、舞達がいる気がする。

階段を一気に駆け上がり、勢いよく屋上の扉を開けた。

少し探したところに、人の気配があった。

だが、そこにいたのは。

舞達の死体であった。

「そんな…。」

思わず、咲の方を見てしまった。彼女はただ茫然とその光景を眺めている。状況を理解しようと、必死なのだろう。

「舞! 舞! まい!」

何かを繋ぎとめるように、必死に彼女の名前を呼ぶ。彼女のところまで駆けより、また必死に呼びかける。

それが、決して意味をなさないことは知っていた。

そして。


そして僕は、目を覚ました。

空は暗かった。もう夜になってしまったのだろう。

夢を見ていたことに気付くのに、長い時間がかかった。息は荒く、喉も少し痛かった。一階に降りて、水を飲む。時計を見ると、三時過ぎくらいだった。だいぶ長い時間寝ていたらしい。

あの夢は、一体何だったんだろうか。

「僕は、あの状況でも、咲と一緒が良かったんだな。」

まだ僕は、彼女のことが好きらしい。

そんな気持ちは早く消さないといけない。また、傷付けてしまわないように。

「絶対に、救うんだ。」

そう呟いた僕は、無意識に右手を強く握っていた。


生活のサイクルに異変が生じたことで、僕の体は少しの気怠さを感じていた。それに、あの夢のことも気になって仕方がなかった。

明晰夢、というやつだろうか。あの夢のことを、今でも鮮明に覚えている。珍しいことだから、何か特別な意味があるんじゃないかとついつい思ってしまう。

「この世界がアニメかなんかだったら、近々何か起こるんだろうけど。」

特別なことなんて、そんな簡単に起きない。一瞬の想像さえもしない。

だって、現実世界に期待することなんて、あまりにも虚しいことだから。


読んでいただきありがとうございました。

好評であれば、僕がとても喜びます。

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