第二章 石井舞
前回のあらすじ:前回の小説読んでね!
家に帰ってから、今日の事を親に話しはしなかった。心配をかけたくなかったというより、色々言われるのが面倒だったからだ。僕の親は、少し過保護なところがある。こういう事があったのが知られると、面倒な事になるのは間違いなかった。
幸い、知られることなく昨日は終わり、平穏な今日が始まった。
僕は朝から、今日石井舞は学校に来るのだろうか、どういう風に接してくるのか、はたまた接してこないのか等ということばかりひたすら考えていた。考えても仕方ないことであり、これらの疑問は全て学校に行けば分かることだと気付くのに随分と時間がかかった。
学校に着き、石井舞の席を見る、が、彼女はまだ来ていなかった。やはり昨日が珍しかっただけで、今日はいつも通り来ないのだろう。
「にしても、そう考えると凄いタイミングで来たよな…。」
と言って、すぐ後悔した。また独り言を言ってしまったことに気付いた。僕は昔から、心の中で思ったことがそのまま口に出てしまう。気を付けようとしているのだが、なかなかできない。その独り言のせいで、今までたくさんの人とトラブルになっている。今回の独り言も隣の席の人に聞かれたらしく、怪訝そうな顔を向けられた。
朝礼が終わっても、彼女は来なかった。やはり今日も休みなのだろうが、先生は何も言っていなかった。まぁ、いちいち言っていたら切りがないのも事実だ。察しろ、というやつなのだろう。
昼休みになり、僕は屋上をうろうろしていた。昼食を食べるためもあるが、理由は別にある。
「…ここにいたら、会える気がしてたんだ。石井舞。」
「あら、貴方は昨日の…えっと、名前、なんだったかしら。」
「…綾楓桜華だ。一応クラスメイトなんだけどな。」
「申し訳ないけど、まだほとんどの人の名前を覚えてないのよね。冬野さんと舩森さんくらいよ、名前を覚えてるのは。」
冬野と舩森は、彼女の友達だ。彼女が不登校になる前は、よくあの三人で遊んでいた気がする。
「にしても、貴方もフルネームで呼ぶのね。私の事。」
「他になんて呼べば良いんだよ…。」
「う~ん、彼女達みたいに、舞ちゃん、とか?」
「呼べるわけあるか! てかこんな話どうでも良いだろ!」
「ふふ、そうね。〝会える気がしてここに来た〟って言ってたけど、何か聞きたいことでもあるの?」
「そうだ。昨日の事だが…誰にどこまで話した?」
「私は誰にも何も話してないわよ。クラスの人達の間で噂になってたの?」
「いや、そういうわけじゃない。ただ、誰かに知られるのは面倒だから、このまま誰にも言わないでくれ。」
「分かったわ。もともと誰にも言うつもりはなかったから、安心して頂戴。」
「ありがとう。」
一通り会話を終えた僕らは解散し、それぞれ昼食をとった。そして、午後の授業、部活を終え、家に帰った。だがその間、彼女の姿を見ることはなかった。
余談だが、僕は彼女のことを『舞』と呼ぶことにした。流石に『舞ちゃん』とは呼べないだろう。
あれから何日かが経過した。舞に何回か会ったがそれはいつも屋上で、クラスで見かけることは全くなかった。先生も、朝礼にも終礼にも何も話さない。舞のことは、僕の中では大きな興味となっていたが、クラスの中ではちょっとした話題の一つにもなっていなかった。どうやら、舞は僕としかまだ会っていないらしい。冬野や舩森に舞を見かけたかどうか聞いたが、会っていないようだった。なぜ屋上にご飯は食べに来るのに、教室には来ないのか。昼ご飯を食べ終わり、こんなことを考えながら一階の廊下を歩いていた時だった。僕は、一人の少女がいつもは使われてない教室に入るのを見た。
「あれは…舞? あの教室で何するんだ?」
つい、興味沸くと追求したくなってしまう。今回も、その欲望を抑えることはできなかった。
教室に入ったものの、舞は何もしなかった。ただ茫然と窓の外を眺めているだけだった。今時間は一三時十分。十三時二十分から掃除があるので、そろそろ動き出すはずだ。だが、舞はずっとあのままだった。このまま見続けていたかったが、チャイムが鳴ったので仕方なく掃除場所へ向かった。結局、その後舞の姿を見ることはなかった。
学校と部活が終わり、僕は保健室へ来ていた。と言っても、体調が悪いわけではない。保健師の先生である山中先生と話すためだ。山中先生は色々な生徒と関わりがあるで、もしかしたら舞のことも何か知っているかと思い、聞きに行ったのだ。
「うーん、先生は石井さんのこと知ってるには知ってるけど…。」
「ほんとですか⁉ もし良ければ教えてくれませんか?」
「それは無理ね…。一応、本人のプライバシーに関わることだから。」
「何か事情があるんですね。」
「まぁ、大雑把に言うとそうよ。でも、あんまり深く調べない方が良いですよ?」
「え、凄く気になるんですけど…。」
「そういう好奇心は、いつか誰かを傷付けますよ。」
「そ、それは…。分かりました。」
流石に、もう誰かを傷付けるのは御免だ。
「それから綾さん。早く帰りなさい。もう下校時間過ぎてますよ?」
「あ…それはまずい! また城田先生に怒られる!」
城田先生というのは、校門の鍵閉め等をやっている先生なのだが、とにかく厳しい。前にも一回、こっぴどく叱られたばかりだ。
「先生ありがとうございます。失礼しました。」
そう言って、保健室を後にした。靴を履き替え、全速力で門まで駆け抜ける。自分の懐中時計を確認すると、時刻は十八時二十九分だった。下校時刻は十八時三十分なので、なんとか間に…
「綾さん、これで何度目ですか。次遅くなったら問答無用で閉じ込めますよ?」
合うわけがなかった。
「す、すみません…。話をしてたんですが、つい…。」
よくよく考えたら、山中先生は下校時刻を過ぎていると言っていた。つまり、僕の時計はずれていて、あの全力ダッシュは無意味だったということだ。
「あーあ、無駄に疲れた…。」
そうして、また独り言を呟く。この癖は当分直りそうにないな、とそんなことを考えながら、家に帰るのだった。
学校から家まで、歩いて三十分かかる。そのため、道中色々なことが起こる。野良猫になぜか懐かれ家の近くまで着いて来られたり、小学校の頃の友達に偶然遭遇したり、通りかかった人に挨拶したら、靴紐が解けていると指摘されたり
「最後の絶対いらなかっただろ…。」
と、自分の考えてることにわざわざ突っ込みを入れたり、等々。でも、今日起きたことは、そんな小さなレベルのことではなかった。
帰り道、コンビニの前に屯している二人を見つけた。冬野と舩森、舞の親友だったはずだ。会話を盗み聞きするつもりはなかったが、もともと耳が良いため、二人の会話が聞こえてしまった。
「てか、舞いつも学校来てないけど、さぼり?」
「いや、なんか病んでるっぽいよ?」
「えぇ、それ私達にうつらない? 大丈夫?」
「いや、うつんねえよ、普通。」
「うわぁ! びっくりした…。」
おっと、また声に出ていたらしい。
「てか、あんた誰よ。」
「綾楓桜華だよ。クラスメイトの名前くらい覚えとけ」
「いや、いつも舞に絡まれてるせいで他の人に構ってる暇ねぇんだよ。」
「ほんとよ。まじ迷惑。」
「…お前ら、舞と仲良いんじゃないのか?」
「なわけねぇだろ。あんな昔虐められてたようなやつと仲良くしてたら、いつこっちに被害が及ぶか分かったもんじゃないわ。」
「てか、あんたさっき〝舞〟って呼んでたけど、もしかしたら彼氏かなんかなの?
「はは! それだったらまじウケるんだけど!」
「お前ら話すと止まんねえな…。じゃあな。」
僕はそのまま話しこんでいる二人を放って家に帰った。
舞が虐められてたというのは、僕にとって衝撃の事実だった。あの子はきっと、なんだかんだ優しい子だと僕は思っている。だからこそ、僕の自殺を止めたんだろうし。なら、なぜ舞は虐められた…?
「…調べる価値はありそうだな。」
知りたいという欲望を抑えることはできない。そう思い、また一言呟くのだった。
僕の通っている中学校には、主に二つの小学校から生徒が集まる。一つは咲が通っていた東宮小学校。そしてもう一つが舞の通っていた河潮小学校だ。そういうわけで、河潮小出身の人に適当に話しかけ、舞の事を探ることにした。
「なぁ千戸瀬、お前確か舞と同じ小学校だったよな?」
千戸瀬は僕が最初に話しかけた人物だった。初めの内は普通に話す仲だったが、今ではあまり関わることはない。
「いや、違うけど…?」
あれ、違ったか。非常に幸先が悪い。
「あ、あいつは河潮出身だぞ。」
そう言って、千戸瀬は岡野を指さした。
「そっか、ありがとう。」
その言葉を言ったときにはもう千戸瀬はいなかった。
「なかなか嫌われてるもんだねぇ…。」
まぁ、僕も好きではないから良いのだが。
「なぁ岡野、お前舞と同じ小学校だったよな?」
「え、違うけど。」
「嘘つけ、千戸瀬から聞いたんだぞ?」
「じゃあ聞くなよ。ったく…。」
なんで僕がキレられてんの?
「それで、何の用?」
「舞は小学校の時、なんで虐められてたんだ?」
「なるほど、それを聞きたかったのか。いいよ、いくらでも話してやるよ。」
よし、情報源ゲット。
「ここじゃなんだし、屋上にでも行って話そうか。」
「了解。」
そうして、二人で屋上へと向かうのだった。
読んでいただきありがとうございました。
好評であれば、僕がとても喜びます。
ちょっと今回、いつもの倍以上文字書いてるんですけど、長すぎですかね、、?
僕の作文能力にもよりますが、感想とか見て(そもそも読む感想が来ればの話だけど)色々変えていきますね。