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それはある朝突然に  作者: 偽野海月
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さてようやくの、ふたりの出会い。

≪ 呼吸をとめていたはずなのに、ソレは起き上がった。


  そして、隣にいた人間に  がぶり、と噛み付いた。


  隣にいた人間は首を噛みちぎられた。




           血があたりに飛び散った。止まらない止まらない止まらない。


           赤く染まった身体をびくりびくりと痙攣させ、やがて、動かなくなった。


           ソレは、動かなくなったモノを貪った。




  ようやく、周囲に悲鳴が広がった。さざ波のように広く広く遠くまで。


  しかし、もう逃げられない。


  死んでいるはずなのに、動くソレらは、隣にいる人間に、喰いついた。≫











 ●●●Side.Y●●●







 今日はハロウィンだったのか?


 ハロウィンという行事は日本にココまで浸透していたのか・・・。


 






 朝っぱらからサラリーマンが血糊付けて出勤するほどリベラルな国になっていたとは思わなかった。

 会社で仮装パーティでもあるのだろうが、そんなのは終業後にでも準備すればいいのに。

 でもとりあえずひとつ言うと、手を前に伸ばして「あ"あ"ぁ~アア」とか通行人(オレ)にまで呻いてみせるのはいくらなんでも演技過剰だ。

 



 うまく仮装できたのを自慢したいのかもしれないが、朝からそれに付き合えるほどテンションが高くない。

 悪いけれどここはスルーの方向で。




 なのにそのゾンビな企業戦士は調子にのったのか興がのったのか二日酔いでよろめいたのかオレにしがみついてきた。

 今朝は朝から良く襲われる日だ・・・しかも男に襲われても嬉しくもなんともない。

 しかもふざけて噛み付こうとしてきた。

 とりあえず思わず本気で殴ってしまったら、たぶんオモチャなんだろうけど簡単に鼻がもげた。

 さらにうんざりした気分になりながら、崩れ落ちたサラリーマンを後にする。






 とりあえず、講義はもう始まっている時間なのだ。


 酔っ払いでお調子者のサラリーマンにかまっている時間はない。






 リアリティ追求するのはかまわないが、なんかグロいし女受けもしない。

 アレじゃ、モテないだろうな。









★ ★ ★ ★ ★





 






 うちの大学は良く言えば由緒がある、正直に言えばボロイ。

 築ウン十年の貫禄はあった。

 染みと罅だらけのいかにも戦前から建っています的な学舎には味わいがあったし、仏教大学でもないのにキャンパスのど真ん中に寺のような講堂と、誰のかよくわからない墓があるところになんとも言えない趣を感じた。


 しかし、ここまで荒廃した雰囲気はなかったような気がする。


 講義が始まっている時間帯とはいえ、いつもはそれなりに賑わいを見せるキャンパスに人気がない。

 しかもなんだか薄汚れている。窓ガラスは割れてるし、広場にはボロ切れやらペンキの跡やらが散乱している。暴動でもあったのだろうか。それにしちゃ、警察もいないし。






 とりあえず、教室に顔を出して休講かどうかだけ確かめよう。





 そう考えてとりあえず講義があるはずの教室に向かう。

 階段の真下に行き倒れっぽい学生が、なぜか背中に足あとをつけて転がっていた。

 ちょうど・・・階段を駆け上がろうとした誰かが、片足に瞬間的に全体重をかけて踏みつけました、みたいな足あとだ。

 まぁ、よっぽど急いでいたか、破滅的なほど鈍いのでなければ気付かないで踏みつけることはないだろうし。

 おそらく痴話喧嘩か何かだろう。足あとの大きさからみて、相手は女だろうし。

 痴話喧嘩にはかかわらないに限る、ここもスルーさせてもらおう。








 学生を避けて、階段を上る。









 階段を登り切ったところで、ちょっとスゴイものを見てしまった。









 遠心力をうまく利用し、パイプ椅子のパイプの_____しかもLの字になっている部分で気持ちよく誰かの頭部を殴り飛ばしている女。








 プロレスのように椅子の平たい部分でなく、力が集中しやすい面積の狭い部分でためらいなく相手の弱点を狙った。

 横薙ぎに近い無理のないフォーム。

 殴った後もバランスを崩すことなく力を綺麗に受け流しているところに熟練の技を感じる。





 朝から匠の技を目にすることができるとは・・・。





 感心しながら観察を続けると、くるりと振り返った女と目があった。


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