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全国民の前で婚約破棄をした第一王子、学友に裏切られ人生終了

作者: 灯火夢

 今日は私、貴族であるシーチ・ルチカの婚約者である第一王子アルク・ニードが王宮の庭園で全国民の前でスピーチをする日だ。

 何の話をするのかは聞いていないが私にも同席してほしいと言われた。それと一緒に何故か昔の学友である同じく貴族のルシア・バーバラもいた。


 「アルク様、今日は全国民を集めて何のスピーチをするのですか? しかも私も同席だなんて」

 「まー見ていろ、これはお前にとっても重要な話なんだ」

 「……分かりました」

 

 一体何の話をするのだろう。私にとっても重要な話ってことはもしかしたら正式的に結婚を発表するのかも……


 そんなことを考えているうちにスピーチが始まった。


 「皆の者、よく集まってくれた。今日は皆に報告があってこの場を作った」


 全国民の前でこんなにも堂々としていられるのはさすが第一王子って感じがする。


 「端的に言おう、私、アルク・ニードの婚約者であるシーチ・ルチカとの婚約を破棄する!」

 「え!?!?!?!?!?」


 突然の事だったため声が出てしまったが、国民達もざわついている。

 それもそうだ。第一王子の結婚は国の一大イベント、それが破棄になったと聞いたら誰もが驚く。

 そんな中でもやはり私が一番ショックを受けていた。


 「ちょ! 待ってくださいアルク様! 私そんな話一度も聞いておりません!」

 「少し黙っていろシーチ! 衛兵、少しシーチを黙らせておけ」

 

 アルク様から今までに取られた事のないような態度で軽くあしらわれ、スピーチが続いた。


 「私も最初はシーチ・ルチカとの婚約に不満は無かった。第一王子の婚約者としての最低限の身分はあり、王女として相応しい雰囲気をかもし出していた。だがシーチ・ルチカは奥手な性格な故、社交界の場ではろくな会話の一つもできず、私にすら自己主張の一つもしてこない」


 確かに私は社交界の場では喋らず、出席だけしていた。でもそれはアルク様に、お前は喋らず私の婚約者として立っていればいい、と言われたのでそうしただけであって、自分からそうしたわけではない。

 自己主張に関しても私は普段からしているが、王族はこれでいい、の一点張りで話を聞いてくれなかった。


 「そんな事では今後王族の威厳にかかわると思い、私はシーチ・ルチカに変わる新しい婚約者を探した」


 なんとなく話が読めてきた。


 「紹介しよう、今日からシーチ・ルチカに変わって新たに私の婚約者となるルシア・バーバラだ!」


 最初は国民達も混乱していたが、新たな第一王子の婚約者の発表に少し戸惑いながらも祝福の声が上がっていた。


 名前を呼ばれたところでルシア・バーバラが前に出てスピーチを始めた。


 「皆様お初にお目にかかります、この度この国の第一王子であるアルク・ニード様との婚約を新たに結ばさせていただいたルシア・バーバラです。今後ともよろしくお願いいたします」


 それだけ言うとルシア・バーバラは役目を終え下がっていった。


 新たな婚約者の誕生に国民達から歓喜の声が上がった。まるで私との婚約なんて最初から存在しなかったような……


 「ルシアはこの通りこれから女王になる自覚もあり、国民の前で堂々と話せる威厳もある! それと違って今までシーチ・ルチカが国民の前に立ったことがあっただろうか」


 それは今までに何度も国民の前で一度くらい挨拶をしようと提案したが断られてきたことだ。


 「国民達よ、これからルシア・バーバラをよろしく頼む!」


 アルク様の言葉によってさらに歓声が高まった。


 「今日のスピーチはこれで終了だ。国民達よ、今日は私のために時間を作ってくれて感謝する」



 「そんな……」


 私にはまったく発言させてもらえず、そのままスピーチが終わった。


 「シーチ、お前の役目は今日で終わりだ。わかったらもう二度と近づいてくるな!」


 そう言われ、頭が真っ白になりその場に立ち尽くしながら絶望しているとある一人の男がアルク様のもとにやって来た。


 「ようアルク! もうスピーチも終わったし話しかけてもいいよな?」

 「なんだイグニス、スピーチは終わったが今は忙しい。今から王宮に戻ってやらなければいけないことがたくさんある。用があるならまた今度にしてくれ!」


 どうやら来たのは学生の頃からアルク様と仲の良かったイグニス・バイザスだった。私もよくアルク様と一緒にいたので顔見知り程度ではある。

 でも今このタイミングで用があるだなんて一体どんなようなのだろうか?


 「ちぇっ、なんだよ、せっかく今日も一緒に淫魔の店に行こうって誘おうと思ってたのに!」

 「……え゛!?!?!?」


 思わず変な声が出てしまった。それより今なんて言った?

 それを聞いた国民国民達もざわついている。


 「へ!?!?!?」


 アルク様も何を言われたのか理解できず、キョトンとしていた。


 「だーかーら、今日もいつもみたいに淫魔の店に行こうと思って誘いに来たんだよ! いつも一緒に行ってるだろ?」

 

 この人はたまにアルク様相手でも冗談を言う。第一王子に対しても物怖じせずにそういう事を言えるところがアルク様に気に入られ友人になったんだろう。

 でも今言うべきことではないのはわかる。きっとアルク様も起こっているだろう。


 「な゛! 何を言っているイグニス……いつもの冗談にしても今言うべきことではないだろう! お、お前、今の発言ただではすまんぞ!」


 アルク様は口ではそのようなことを言っているが明らかに動揺している。


 「おいおい急にどうしたんだよ、いつもだったらもっとノリノリだろ?」


 国民達がさらにざわついてきた。


 「そ、そんなわけないだろ! おいやめろ! 皆の者、こんな嘘に騙されるな!」


 明らかに動揺しているアルク様にさらに国民達がざわついた。


 「ア、アルク様、嘘ですよね? 今のはその者の嘘ですよね?」


 ルシアが少し震えた声でアルク様に聞いた。


 「当たり前だろ! 私のような高貴な身分の者がそのような所に行くはずがないだろう! もしそれ本当だったとするのならば証拠を出して見せろイグニスよ! それができないのだとしたらお前は今すぐこの場で打ち首にしてやる!」

 「そうだよなーアルク、お前は毎回自分の身分を気にしてわざわざ庶民の服装に着替えて店に行ってたもんな」

 「や、やめろ! そんなことあるわけないだろ!、いいから早く証拠を出してみろと言っているんだ!

早くしないと本当にお前を打ち首にしてしまうぞ!」


 カオスな状態が続き、国民含め私たち全員パニックになっていた。


 「そんなに急かすなら今から淫魔の店に確認取りに行くか? お前、毎回庶民の服を着て変装していたつもりかもしれないが、淫魔のお姉さんたちには正体バレバレだったぞ」


 イグニスはけらけら笑いながら話を続けた。


 「なんなら最初に店でやらされた性病検査の尿でも持ってきてもらうか? お前の遺伝子と合致するかここで確認してもらおうぜ」


 「おいやめろ! それ以上は本当に許さんぞ!」


 「お前、最初の頃は毎回淫魔のお姉さんにシーチちゃんに姿を変えてもらってヤッてたのに、途中から飽きたとか言って今度はルシアちゃんの姿でヤリだして、さすがにあの時は少し引いたぜ」


 「アルク……様……?」


 今にも泣きだしそうな表情でルシアがアルクに問いかけた。


 「ち、違うぞルシア! この男の言うことに騙されるな!」


 アルク様、いやアルクは焦ったようにルシアに近づき手を出した。


 「いや……近づいてこないでください!」


 ルシアはアルクの手を払い、ゴミを見るような目で睨んだ。実際ルシアだけではなく国民全員がアルクの事をゴミを見るような目で見ていた。

 これには相当ショックを受けたのかアルクは膝から崩れ落ちた。


 「アルク、お前が淫魔の店でどう遊んでようが全然気にしていなかったが、なんなら遊び相手が遊び相手が増えて良かったくらいだったけど、今回のはやりすぎだ。国民を騙し、ルシアちゃんを騙し、何より一番はシーチちゃんを傷つけた。」

 「………………」


 アルクは何も答えられないでいた。


 「俺はお前と一緒にいるシーチちゃんよく見てたが、よく頑張ってたじゃないか。お前、そんなシーチちゃんをこんな風に悲しませて許されると思ったか? 」

 「俺は……俺は……」


 アルクはイグニスに正論を叩きつけられ、地面にうずくまり泣き始めてしまった。


 「これ以上は言わなくてもわかるな? ……衛兵! 取り敢えずアルクを宮殿まで連れていってやってくれ」




 イグニスに言われ、衛兵はセミの抜け殻のようになったアルクを連れて行った。

  

 「大丈夫かいシーチちゃん」

 「どうして……どうして私を救ってくれたの?」


 私は近づいてきたシーチにそう質問した。


 「ん? そんなのシーチちゃんが可哀そうだと思ったからに決まってるじゃん」

 「そんな理由だけで? あなた、もしかしたら今頃打ち首になっていたのかも知れないのよ?」

 

 そうだ。ただ一人の女の子を助けるためだとしてもリスクが大きすぎた。


 「そんなの助けない理由にはならないよ。俺、アルクといるときシーチちゃんの事よく見ていたんだ。」

 「え?」


 よくアルクと一緒にいるのは後ろで見ていたけれども、私のことも見ていてくれたなんて気づかなかった。


 「シーチちゃんはいつもアルクのために良くしてくれてたでしょ? そんなの少し見ていればすぐわかるよ」

 「でも、それだけの理由で私のことを救ってくれたの?」

 「それだけの理由? 女の子を助けるのにそれ以上の理由はいらないでしょ! 俺は貴族の身分でありながら女遊びが大好きなクズだけど、女の子が傷つくことが何より嫌なんだ。理由なんてそれだけでいい」


 今日までこの人の事は少しチャラいアルクの友達程度にしか思っていなかったけど、実際今こう言われて、自分の今までの努力を理解してくれる人がいたことがそ一番嬉しい。


 「本当にありがとう、なんてお礼を言ったらいいか……」

 「お礼なんていいよ、それよりアルクの奴この後どうなるんだろうな」

 

 意外に謙虚で優しいところが今の私の心に染みる。


 「まず間違いなくもう王宮にはいられないでしょうね」

 「そうだろうだ、それにしてもアルクの奴、国民の前で自分の夜遊びの趣味ばらされて、目の前で二人も婚約者をなくして人生散々だな!」

 「そうね、これが因果応報ってやつね!」

 

 二人はまるで、今日何事もなかったかのような晴れやかな顔で笑っていた


 


 

 


 






 


 

 




 





 

 


 


 



 


 

 

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[気になる点] 王子のその後が無いけど? [一言] 王子のその後はどうなったのか? 其れが無いので凄く中途半端に感じる。 あくまでも王宮にいられないのは二人の予想であって此れだと実際はどうなったの…
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