暴動鎮圧部隊隊長、イヴァーク
午前五時、起床した私はすぐさま業務連絡を端末で確認し、今日の予定を立てる。 テロリスト共の活動も最近は活発になって来ており、大規模な戦いに備える必要もあるだろう。
幸い、私の部隊には優秀な人材が多くいる。 テロリストをも打ち破ることが出来るだろう。 朝食をとりながら思った。
今日の仕事は新人指導だ。 今年でもう50年になるが、新人教育には慣れない。 テロリストとの戦いで命を落とす新人を見るのが、辛い。
[イヴァーク様へ一通、メールが届いております。] 端末から機械音声が聞こえた。 メールの内容は、昨夜の警察署襲撃事件の犯人について詳しく書かれたものだった。
坂井 弥太郎 52歳 職業:探偵
前科:強盗殺人 窃盗 公務執行妨害
犯行時刻に、フルフェイスヘルメットを被りコートを着て歩いていたという目撃証言あり。
相変わらず物騒な街だな、ここは、メールを送って来たやつは暇人なのだろう。 しかし、情報は確認してみる必要がありそうだ。 新人指導の後に、情報課にでも行ってみるか。
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暴徒鎮圧部隊には、様々なスキルが要求される。 ワープ対策、ミサイル無効化、レーザー反射、正確な射撃、無尽蔵の体力。 それらを新人に叩き込み、優秀な隊員にすることが私の仕事だ。
「イヴァークさん、宜しくお願い致します! 今日付で着任しました! メアリー•ガレットと申します!」
女性隊員はいつぶりだ? 元気があってよろしいが、訓練にはついて来れるだろうか。
「スウェーレシティ、暴動鎮圧部隊隊長のイヴァークだ。 今日からメアリー、君の指導を任されている」
「はい! どんなメニューでさえこなして見せますよ!!!」
「本当に元気だな、だがその調子がどこまで続くかな? まずは基礎体力の確認から行くぞ。 10kmトラックを100周走ってもらう、どんなメニューでさえこなせるのだろう?」
彼女には厳しいかもしれんが、暴動鎮圧部隊にはこのぐらいの体力が必要だ。 思い知ってもらおう。
ランニングが始まった。 メアリーは小さな体躯ながら、綺麗なフォームでトラックを駆ける。 周りの隊員が驚くのが目に入った。 私も信じがられない。
100周するのにそう長い時間はかからなかった。 メアリーは得意げな顔をして此方に走ってくる。 汗ひとつ流した様子は無い、恐ろしい新人が入って来たようだ。