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黒の皇后  作者: 小松しま
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 まだ床上安静の希望を動かす訳にも行かず、厳重に拘束を受けるスウェイワナが、ストレッチャーで彼の部屋へ運び込まれた。

 室内に同席するのは、叶夫妻と黒川医師、華王医師、そして市原医師の他、看護師が一名のみだ。

「……陛下……」

 予め兄夫婦から、自分の帰還に関する一幕を知らされていた希望なので、「同行の外国人」に心当たりはあったものの、いざ彼と顔を合わせれば、驚きを隠せない。

「ここはそなたの故郷なのか? 一体、この者たちは何なのだ! 何故、余にこのような無礼を働くっ!」

 スウェイワナは、わめき立てる。

 誰の耳にも、その訴えは意味を持って届くことはなかった。

 希望以外には……。

「陛下こそ、……どうして、ここへ……?」

 呆然と、彼は問いに問いを返してしまう。

「ちょっ? ノゾちゃん?」

「この人の言葉がわかるのかっ?」

 希望を守るように控えている兄夫婦が驚きに瞬いた。残る面々も同様である。

「……あ、はい……」

「一体、この者たちは、何を申しておるっ?」

 スウェイワナは、無駄な抵抗で身じろぎをして叫んだ。

「……陛下……」

 希望は気を取り直して、「一応の夫」を呼ぶ。

「ここにいらっしゃる白い服装の方たちは、僕たちの治療を行って下さったお医者さまです。そして、こちらは僕の家族」

 目だけで兄夫婦を示して、希望は紹介した。

「……な、に……?」

 スウェイワナは、身体から力を抜く。

「ここに、あなたに害する人はいません。乱暴をしないと約束してください。お願いします」

 この地でも尚、ローディアナ神の恩恵があるのか、希望は言葉に不自由を覚えなかった。

 しかし、「かんなぎ」でないスウェイワナに同様の配慮を受けることは叶わないらしい。

「……お願いします」

 希望は更に繰り返した。

 スウェイワナは、応じて、確約した。

「希望くん……。彼は一体何者なのかね? どうして……君たちは、意思の疎通が出来るのだろう?」

黒川医師の質問は当然だろう。

 彼らの前で、二人はそれぞれ異なる言葉を口にしているのに、互い、理解の上に会話が成り立っているとしか思えないのだ。

「わかる範囲で構わない。説明をしてもらえるだろうか?」

 親戚の小父さんのような間柄である主治医の問いだ。

 希望は頷いて……荒唐無稽な身の上話しをはじめたのだった。



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