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63. 番外編 覆面作者の憂鬱

誤字脱字報告、ありがとうございます。

感謝しております。


61.の番外編の続?になります。


 最近、一部のお嬢様達が騒がしい。

 招かれるお茶会や、社交の場で度々囁かれるキーワードがあるのだ。それは・・・


「騎士」「宰相」「秘密」「塔」「愛」


 以前は心当たりのあるお嬢様は、赤面するか無表情になるかがほとんどだったのに、最近はちょっと様子が変わってきた。



 メルト王国の社交界には、当然ながら目立つ()()()を持っている人もいる。まずは一番有名なのは、≪社交界の三色の薔薇≫ と呼ばれていた現王妃様とスタンフォード公爵夫人、グランデルク伯爵夫人。第一王女様のアルテイシア様は ≪社交界の花≫ 、そして最もお若くて、ぴったりの()()()を持っているのが、≪妖精姫≫ と呼ばれたグランデルク伯爵令嬢のリリ・アンナ様。もっとも、最近スタンフォード公爵家の()()()となってしまったけれど。


 男性については王国の最優良物件の一人であった、宮廷近衛騎士団のシリウス・スタンフォード様が、先にお話ししたリリ・アンナ様と電撃結婚されたことで、王国に激震が走った。これには驚いた。




「まさか、結婚するなんて思わなかったわ・・・」




 王国の最優良物件とは、アレッド王太子殿下、次期宰相候補のクラウス・グランデルク様、そしてシリウス様の事だった。三人とも同い年の22歳。見眼麗しく、家柄、身分、能力共に言うこと無しの皆さま。まあ、お人柄までは詳しくは判らないが。


「どうしましょうか。騎士様が結婚してしまうとは。さすがに現実とのギャップが・・・」


 人間離れした美貌の誉れ高い、超有名人のシリウス様とリリ・アンナ様ではイメージが強固過ぎる。さて、これからどう進めていけばいいのか・・・



 ペンを持つ手が進まない。どうしたものかと思案するが、テーブルに置かれた短い手紙に表情が曇る。手紙には、期日が書かれているのみ。今日から数えてあと5日しかない。



「ああぁぁ・・・ゆ・う・う・つ。見なきゃよかったわ」


 そう呟くと、銀色の細いペンをインク壺にぶっ差した。









「で、 ≪愛と美しき者を愛でる会≫ としては、今後もこの宮廷近衛騎士と宰相を()()()()()()()()()()()()()()


 今日は、タンザール侯爵家で行われている件の定例お茶会だ。アリシアはテーブルを囲む少女達に改めて質問した。


「残念ながら、「愛を語るシリーズ」(仮)のモデルと思われる騎士様がご結婚されてしまいましたわ」


「ええ。聞いてびっくりしましたわ。まさか、シリウス様がね?」


「メルジー様!いけませんわ。お名前を言っては!」


「そ、そうでした。テルシーヌ様、ご注意ありがとうございます」


「私は、構わないとおもっていますのよ?プリシラ様は如何かしら?」


「私も同感ですわ。()()、いいえ!()()()()()ですもの。それにまだ宰相様はお一人ですし。お二人の美しさには変わりはありませんもの」


「プリシラ様、それは真理ね。私もそう思っていますわ。それでは、 ≪愛と美しき者を愛でる会≫ は引き続き変わらずお()()()()()しましょう!!」



「ところで、この前テルシーヌ様がおっしゃっていた、お姉さま世代に探りを入れると言うのはどうなりましたの?」


「そのことでしたら」


 キラリと眼鏡の縁が光った。テルシーヌは三人を見廻して言った。


「実は、あることに気が付いたのですわ。「愛を語るシリーズ」便宜上私達がそう呼んで、心の糧として大事にしているこのご本たちですが、執筆された時期を再確認したところあることに気が付きました」


 テルシーヌの言うことには、1巻の「宮廷近衛騎士と宰相は秘密の塔で愛を語る」は、4年前に執筆され直ぐに刊行された。しかし、2巻が刊行されたのは2年前、3巻は昨年刊行された。1巻と2巻のこの間隔が怪しいというのだ。


「どこが変なの?別にそう言うこともあるでしょう?」


 メルジー嬢がおっとりと言う。


「実は、この手の雑誌に詳しいお姉さまに伺いましたら、人気が出たキャラなら大体すぐに続編を出すのですって。そうしないと読者はすぐに他に移ってしまうし、読者確保の意味も込めて年2回くらいは関連情報を出すのですって」


「でも、出ていなかった・・・」


「アリシア様、その通りなのです。2年間全く情報が出て来なかったのには、作者側に何かあったのではないかと思うのが普通ではないでしょうか?」


 プリシア嬢とメルジー嬢がゴクッと喉を鳴らした。


「な、何があったのでしょう?」


「空白の2年間に情報が出せなかったのは、もしかして騎士様と宰相様の当時の現状を知らなかったから?とか、言い方を変えればお二人の情報を知ることが出来なかった。とか?」



「テルシーヌ様、それはもしかして・・・」


「そうです。超有名人のお二人の事であれば、社交界に出ていれば知りたくなくても耳に入ってきます。作者は社交界に出入りしていなかった。つまり、当時国内に()()()()()可能性がある。とか?」









「お嬢様、お客様がいらっしゃいました」


「お通しして」


 今日は、4人の少女が遊びに来ると言う。良く母に会いに来る、若い侯爵から是非にと言われて了解したのだ。

 年下の可愛らしい少女たちは嫌いではない。いや、好物だ。きっと色んな伝手(つて)を使って考えた結果、ここに行きつけたのだろうと思うと、たまらなく愛おしくなってしまう。





(さてと、彼女たちはどこまで考えられたかしら?)



 その手の先には、普通の本より少し大きくて薄い本がある。墨色に金色の文字の表題。




 振り返ると扉が開いて、明るく賑やかな声で挨拶をされた。


「カレンお姉さま!初めてお目に掛かりますわ!!」





 カレン・ミラノはにっこりと微笑んで、少女達を迎え入れる。









 そっとショールを被せられた本の表題は・・・





『辺境伯と宰相は、秘密の桟敷(さじき)で愛を語る』


そうです。社交界の情報通、ミラノ侯爵夫人の

娘、カレン嬢が覆面作者でした。

彼女は外国に留学していました。

帰って来てから2、3巻を書いたのです。


そして、新たなシリーズには、オーキッドさんが

登場となったようです。王妃のお茶会で

彼女は軍服姿の彼を見ていましたからね。


ということで、お楽しみ頂けましたら

幸いです。

ありがとうございます。

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